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ジャケットの肩のラインを支えるパッドと芯地構造の分析

目次
はじめに:ジャケットの美しさを決める「肩のライン」
ジャケットを手に取った時、多くの人が「肩のライン」に目を奪われるのではないでしょうか。
タイトすぎず、丸みを帯びた自然な曲線、あるいは直線的でシャープな印象。
この微妙なバランスをジャケットにもたらしているのが、実は「パッド」と「芯地」の構造です。
製造業の現場に長く携わった筆者として、今回は縫製現場の観点から、パッドと芯地の選定や取り付け方法、その効果、さらにはデジタル技術の進化に伴う最新のトレンドまで、現場目線で詳しく分析していきます。
ジャケットの「肩パッド」と「芯地」とは何か
肩パッドの役割
肩パッドは、ジャケットの肩部分に挟み込まれている詰め物や成形素材です。
主な目的は、
・着用者の肩ラインを美しく整えること
・身体のラインの粗を隠し、全体のシルエットにメリハリを持たせること
・着心地やフィット感を向上させること
にあります。
クラシックなブリティッシュスタイルでは厚めで直線的な肩パッドが、イタリアンスタイルでは薄くて柔らかい、ナチュラルなパッドが主流です。
日本国内でも時代や流行、体型の違いに合わせて多彩なパッド設計が採用されています。
芯地の役割と種類
芯地は、ジャケット表地の下に挟み込まれる補強用の布素材のことです。
表地の重みや負荷を分散し、型崩れを防ぐとともに、
・ハリやコシを与えシルエットの保持
・裏地や表地同士の摩耗防止
・湿気、汗、摩擦からの保護
といった役割を持っています。
芯地の主な種類として、馬毛芯、毛芯、接着芯などがあり、用途や製品価格帯に応じて使い分けます。
昭和・平成初期の国産スーツでは、「総毛芯仕立て」=高級品として位置付けられていました。
肩パッドと芯地の進化―製造現場からみた技術革新
パッド素材の変遷:天然繊維から合成繊維、フォーム材へ
古くはわたや毛を積層して手作業で成型した肩パッドでした。
その後、不織布やウレタンフォームなど新素材の普及により、軽量化・大量生産が一気に進みます。
昭和から平成にかけては、台湾・中国から安価な合成繊維パッドが輸入され、国内の縫製現場も大きな影響を受けました。
現在では、3D成形フォームや極薄パッドなど、吟味された素材と加工技術が求められています。
芯地接着の自動化と「フルアンラインド」への流れ
接着芯の量産技術革新は、ジャケットの大量生産体制を支える大きな要素となりました。
アイロンによるプレス接着から、ローラー式自動接着機の導入で歩留まりやコストが大幅に改善。
一方で、近年はカジュアル化と着心地要求の高まりから「フルアンラインド(芯地や裏地を省いた設計)」ジャケットも台頭し始めました。
その分、表地や縫製のクオリティ確保もより高度な技術が求められています。
バイヤー・サプライヤー双方が知るべき現場の「こだわり」
なぜ「肩パッドと芯地」が工場の差別化技術なのか
見た目の違いはわずかでも、パッド・芯地の選定や縫い付け手法は工場ごとの「ノウハウの塊」と言えます。
経験豊富な現場担当者は、サンプル段階でわずかな芯地変更がシルエットや型持ちに大きく影響することを熟知しています。
例えば、
・体型補正が必要なユーザー層向けは厚めパッド&硬め芯地
・軽量志向のビジネスカジュアル向けには薄手&柔らかい芯地
・衣服の産地や流通環境(湿度・温度)に対応する選定ノウハウ
など、あらゆる視点から最適設計を導きます。
サプライヤーにとっては、バイヤーや最終顧客の「着心地感覚」「耐久性要望」「コスト制約」など多様な要素を整理し、現場と粘り強く調整するコミュニケーションスキルが不可欠です。
最近の業界動向と調達購買の観点
・中国、ベトナム、バングラディシュなどグローバル工場との調達取引では、パッド・芯地の標準仕様(量産用コストパフォーマンス重視)と、特注仕様(高付加価値・小ロット高コスト)の価格差が大きい
・国際物流の遅延リスクや材料調達難に備え、国内サプライヤーとの関係維持も重視
・合成繊維系の廉価品だけでなく、「天然繊維混」「サステナブル素材」への需要増加
など、多様な選択肢から「最適調達」するバイヤーの力量が、工場競争力を左右しています。
アナログ業界だからこそ光る「職人技」への着目
手作業だからこそ実現できる繊細な仕上げ
いくら自動化が進んだとはいえ、微妙な肩先の丸み・張り出し感・ショルダードロップに応じた「個体ごとの調整」は、未だに熟練工の手仕事に支えられています。
工場の現場では、仮縫い・最終プレス工程で見た目の微調整や、不測のトラブル(表地のヨレ、パッドのズレ)に即時対応することで、「高級感」「プロの仕事感」が生まれます。
まさにラテラルシンキング=既存の枠組みを越え、現場独自の工夫で新たなバリューを創出している瞬間です。
DX・デジタル技術による新しい提案の現状
3D CAD設計やバーチャルフィッティング技術の普及によって、ピンポイントでユーザー体型に合わせたパッド厚みや芯地パターンを設計できるようになりました。
AI・IoT連携により、縫製/プレス機器が製品ごとの最適条件を自動で調整することで、「省人化」と「プレミアム仕立ての再現性」を両立するプロジェクトが日本国内外の工場で実験されています。
現場で情報(データ)と技術(匠の知見)が融合しつつあり、今後はより多様な体型・ニーズに合ったジャケット生産が当たり前の時代になっていくと考えます。
バイヤー・サプライヤー・現場作業者に求められる新しい視点
バイヤーは、パッドや芯地に着目することで、単なる「コスト競争」から、付加価値設計による差別化へと大きく舵を切れます。
「機能性パッド」や「新素材芯地」を活用した新コンセプト商品、「サステナブル調達」を最前線でリードすることも可能です。
サプライヤー側も、
・ユーザーに伝わりやすい機能表示・体感価値
・縫製現場での加工アドバイス
・品質トラブルの現実的な再発防止
など、バイヤーと顧客双方の期待を超える提案活動が不可欠となります。
現場の技能者や生産管理者は、既存技術とデジタル変革の「橋渡し」として、
・伝統手法と最新技術のバランス
・「昭和の良い点」と「今求められる新しさ」の調和
これをサプライチェーン全体で議論し実践する力が問われています。
まとめ:肩パッドと芯地―見えないこだわりが着心地を創る
ジャケットの肩パッドと芯地は、直接消費者の目に触れない部分でありながら、その存在は着用感や外観に圧倒的な違いをもたらします。
グローバル化・カジュアル化が進む時代ですが、現場での「見えないこだわり」と技術革新の継続こそが、今後の製造業界の発展の鍵です。
バイヤーやサプライヤーの皆様、現場第一線で働く方々も、ぜひ「肩パッドと芯地構造」という一点の技術に着目し、自社の差別化や新たな提案価値へとつなげていただければと考えます。
そして、古き良き技術と現代の新しいテクノロジー、双方の知見を取り入れることで、昭和的なアナログ業界から未来志向のグローバル製造業へ、共に進化していきましょう。
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