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ANSI Z535による安全表示のルールとは

目次
ANSI Z535による安全表示のルールとは
製造業の現場で日々働く方々や、バイヤーそしてサプライヤー関連のビジネスに従事する皆さまにとって、安全表示とは現場運営や品質管理の根幹をなすテーマです。
とりわけグローバル市場での競争が激化し、世界のサプライチェーンと直接・間接に関わることが当たり前となった現在、「安全表示の国際標準化」への理解は避けて通れません。
本記事では、アメリカの標準規格である「ANSI Z535」が定める安全表示のルールについて、現場視点と最新業界動向を交えて詳しく解説します。
ANSI Z535とは?導入の背景とグローバル化の波
ANSI Z535とは何か
「ANSI Z535」とは、アメリカ国家規格協会(ANSI)が制定した安全標識・危険表示の統一規格です。
この規格は主に工場や施設、製品のラベルやマニュアルなどに記載されるあらゆる「安全表示」の設計原則、色、デザイン、言語ルールを標準化しています。
具体的には、ANSI Z535シリーズは以下6つのドキュメントで構成されています。
– ANSI Z535.1: 色の使用基準
– ANSI Z535.2: 環境・施設向けの安全標識の設計
– ANSI Z535.3: 製品安全表示の判読性とデザインガイドライン
– ANSI Z535.4: 製品安全ラベルの規格
– ANSI Z535.5: 無線標識(エネルギーの危険など)
– ANSI Z535.6: マニュアルや指示書に対する安全情報の統一ガイド
国際規格(ISO7010やISO3864)との親和性も高く、日本を含むアジア・欧州のSCM現場でも徐々に浸透しつつあります。
なぜANSI Z535が重要なのか
昭和型のアナログ現場では、「昔から使っている慣れた標識」「社内独自の色番号」などの運用が根強く残っているのが実態です。
しかし、サプライチェーンの国際化が進み、外資系の工場や多国籍労働者との協働が増加する中、こうした「自己流の表示」はもはやリスクでしかありません。
実際、ANSI Z535を導入することで、
– 現場作業者の事故防止能力が向上する
– 事故発生時の責任所在が明確化する(訴訟リスクの低減)
– 海外顧客や監査時の信頼度が上がる
– 多様な言語や文化圏に対応した安全教育が行える
というようなメリットが得られます。
特に、サプライヤー側では「標準化への対応度」が受注のハードルとなるケースも増えており、導入は競争力強化のキーともなっています。
ANSI Z535のルール:安全表示はなぜこうするべきか
1. カラーコード:危険度に応じた標準色
ANSI Z535では、見ただけで伝わる「色分け」の標準化が徹底されています。
具体的には以下のようにルール付けされています。
– 危険(DANGER):赤
– 警告(WARNING):オレンジ
– 注意(CAUTION):黄
– 安全情報・指示(SAFETY INSTRUCTION):緑
たとえば、プレス機やボイラーなどで「DANGER 赤ラベル」が貼付されていれば、言語の壁を越えて直感的に「命の危険」を感じられるわけです。
この色分けは、複数言語化が進んだ現場や海外輸出向け製品ラベルでは極めて有効です。
2. ピクトグラム(図記号)とメッセージの融合
ANSI Z535では、図形(ピクトグラム)とテキストによる警告文の「一体表示」が標準です。
これは「文字だけ」「絵だけ」といった表示が、一部の人々(外国人、高齢者、識字困難者)にとって意図を伝えきれないリスクへの配慮から生まれています。
たとえば、感電危険を示す標識であれば、
「雷のマーク+DANGER(赤)+”High Voltage – Keep Out”」
といった具合に、誰もが一目で内容を把握できる構造になっています。
また、ISO7010の図記号とも互換性が高いため、日系工場が海外進出する際にもそのまま流用可能です。
3. メッセージの構造例(標準テンプレート)
ANSI Z535.4では安全ラベル記載文のテンプレートも定められています。
下記が推奨構造です。
1. シグナルワード(DANGER、WARNING、CAUTION、NOTICE)
2. ハザード(危険要因の明記)
3. コンスクエンス(予想される被害・健康への影響)
4. アクション(回避行動・対策の具体例)
たとえば、昇降機用の安全表示なら
「DANGER(赤) Moving Parts can crush and cut. Keep hands clear.」
といったフォーマットです。
これにより、現場作業者の「読み飛ばし」や「理解不足」防止に効果を発揮します。
実践現場での導入ステップと苦労話
現場目線でみるANSI Z535対応のポイント
私は長年、製造現場での人材育成や各種設備の安全表示見直しリーダーを経験してきました。
ANSI Z535への対応で最もネックとなるのが、既存のアナログ標識・独自基準とのすり合わせ作業です。
– 古い警告板やマグネット標識を全数洗い出し
– 「現地現物」で表示の色、文言、設置高さを確認
– 部門横断(生産・保全・調達・品質・工務)の意見調整
– 安全衛生委員会での承認取得
– 印刷会社やピクトグラム作成ボードとの継続的な打ち合わせ
– 新ルールを組込んだ教育(新入社員、派遣、外国人、パート)
という流れで進めましたが、「なぜ今さら変えるのか」「慣れた表示のほうが安心」といった現場の反発ももちろんありました。
昭和アナログ現場の落とし穴と、これから
私が痛感したのは、日本のアナログ現場特有の「横並び意識」と「一度設置したら長年据え置き」という文化です。
安全標示は「何らかの事故」をきっかけに初めて見直されがちですが、国際規格化の今、「先んじて標準化すること」こそが差別化につながります。
また、海外工場や多国籍労働者との共働体制下では、「自己流表示が通じない」ことで余計な手間や事故再発リスクも増大します。
だからこそ、グローバル基準へのアップデートは今後の成長戦略にも直結しています。
バイヤーやサプライヤー、製造業関係者が理解すべき意義
バイヤーの立場で考えるANSI Z535
購買プロフェッショナルであるバイヤーは、単に価格や納期だけでなく、取引先のリスクマネジメント体制を常に見極めています。
その上で「安全管理の国際的な水準」を示すANSI Z535準拠の取り組みは、サプライヤーの評価ポイントとして非常に有利です。
監査や工場見学時にも、
– 「安全指示がANSI準拠になっているか」
– 「不具合・事故時の説明責任が明確か」
といった観点は取引継続/新規受注の分かれ目になってきました。
サプライヤー側で意識すべきポイント
サプライヤーとしては、「我々の現場は国際水準の安全管理ができている」というアピールは商談力や信頼性の強化に直結します。
また、事故や災害時における損害賠償・訴訟リスク低減にもつながり、長期的にはコストメリットも生まれます。
納入品のラベルや添付文書にもANSI Z535準拠の安全表示を施すことで、
– エンドユーザーからの問い合わせ減少
– 販売代理店の教育負荷軽減
– 海外案件での仕様書作成効率化
など、現場力の底上げにも寄与します。
ANSI Z535対応は製造業の“未来地図”
ANSI Z535による安全表示ルールは単なる「マニュアルの改定」や「デザイン変更」ではありません。
現場を真に守り、グローバル市場で信頼されるメーカー文化を醸成するための基礎インフラです。
今後、「安全表示の国際標準化」はさらに進展し、IoTやAIとも連携したスマートファクトリー時代の「安全情報ハブ」へと発展していくでしょう。
製造業界の皆さまには、ぜひ最新トレンドと現場知見を融合しながら、「ANSI Z535」を自社のコアコンピタンスへと昇華させていただきたいと願います。
現場の声にしっかり耳を傾けつつ、脱・昭和の一歩を、安全から始めてみませんか。