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Tシャツのシワを防ぐ防縮加工とタンブル乾燥条件の制御

目次
はじめに
Tシャツは私たちの日常に欠かせないファッションアイテムです。
しかし、洗濯や着用を繰り返す中で「シワ」や「縮み」といった問題が必ず発生します。
これは素材や加工、乾燥条件に起因する現象ですが、消費者は「買ったときの美しさをできるだけ長く保ちたい」と願うものです。
本記事では、Tシャツのシワや縮みを防ぐための防縮加工やタンブル乾燥の最適化について、製造業現場の知見と実体験を交え、業界発展のための視点も交えながら詳しく解説します。
なぜTシャツはシワになるのか
素材の特性がシワを左右する
Tシャツに主に使用される素材は、コットン(綿)、ポリエステル、またはその混紡です。
コットンは吸湿性・耐熱性に優れる反面、繊維構造が柔らかいため型崩れやすく、洗濯や乾燥過程でシワや縮みが多発します。
一方ポリエステルはシワになりにくいですが、風合いや着心地では綿に及びません。
つまり、素材選定段階から防シワ性は大きく左右されるのです。
昭和時代から続くアナログな現場の課題
日本の製造現場、とりわけ繊維・アパレル業界は「長年の経験と勘」が根強い業界です。
現場では「これまで通りの素材・工程」を踏襲しがちですが、それではシワや縮みといった問題が解消できません。
デジタルや自動化が進んでも、細かな仕様調整や検証は人の手に頼る部分があります。
この伝統と革新のせめぎ合いが、今もTシャツ作りの品質課題として続いています。
防縮加工とは何か
防縮加工の原理と手法
防縮加工とは、繊維や生地が洗浄・乾燥時に本来持つ「縮む力」を抑制し、寸法安定性やシワ防止効果を持たせる加工技術です。
代表的なのは「サンフォライズ加工」(Sanforizing)や「樹脂加工」などがあります。
サンフォライズ加工は、生地に蒸気をあてて伸縮性を解放した後、圧力ローラーでプレスする工程です。
これにより、繊維が均一に整列し、洗濯後の縮みやシワを最小限に留めます。
一方、樹脂加工は繊維表面を樹脂でコーティングすることで、摩擦や形崩れを抑えます。
どちらの手法も、素材や用途、量産性を考慮して使い分ける必要があります。
工程設計のポイント
防縮加工は「どこでどの強度で入れるか」が設計の肝です。
例えば、Tシャツ生地の段階でサンフォライズ加工を入れると、全体が均一に安定します。
ただし、過度な加工は「風合い」を損ない、ゴワつきや通気性低下を招くリスクも。
また最終縫製後にも「形態安定加工」を加えるケースもありますが、製造コストや効率とのバランスが重要です。
この工程設計こそ、現場での知見とデータ活用が活きるポイントです。
タンブル乾燥とは何か
タンブル乾燥の仕組み
タンブル乾燥は、多くの工場やクリーニング店、家庭用でも普及している「回転式乾燥機」による乾燥方式です。
ドラムの中で衣類を回転させながら熱風を送ることで、素早く均一に乾燥できます。
この時、衣類同士が適度にほぐされることで「自然な柔らかさ」と「シワの抑制」が期待できます。
しかし、条件設定を誤ると「過乾燥」や「熱ダメージ」による縮み、逆にシワの発生などが生じてしまうため、きめ細かな制御が不可欠です。
タンブル乾燥の最適条件
通常、タンブル乾燥の条件は
– ドラム回転速度
– 乾燥温度
– 乾燥時間
– 生地の投入量
などによって決まります。
Tシャツの場合、適温(60~80℃)の中温設定が一般的です。
高温では繊維がダメージを受けやすく、生地の縮みや硬化、過度なシワにつながります。
過乾燥もNGで、衣類内の「適度な水分量」を残すことが、シワを抑えるポイントです。
つまり「乾きすぎも、乾き足りなさすぎも不適切」なのです。
適量を守り、設定を守る──これは現場のオペレーター教育や、自動化技術の進化が求められる領域です。
防縮加工とタンブル乾燥の組み合わせで「シワゼロ」を目指す
実際の現場での工夫
私が現場で行っていたポイントは、「防縮加工とタンブル乾燥の相乗効果を狙う」ことです。
まず生地段階でサンフォライズまたは樹脂加工を適度に施し、縫製ラインでは「ミスト仕上げ(軽い湿度をもたせる)」を加えます。
その後、タンブル乾燥では大量・高温一辺倒を避け、「少量・中温・短時間」のキメ細やかな制御を心掛けました。
また、工場によっては乾燥機のセンサーデータを活用し、「温度」「湿度」「生地表面温度」などリアルタイムで見える化し、AI制御を試験導入している例も増えています。
これにより、人の経験とデータの両面から、最適な条件出しが可能となっています。
製造業DXの視点で考える
先進的な工場では、製造DXやIoTを積極導入し、「生地状態」「乾燥履歴」「製品出荷までの工程データ」を一元管理する動きが出ています。
たとえば各ロットごとの乾燥条件値と、出荷後のクレーム発生率・寸法測定値をリンクさせ、不具合発生の予兆を検知することで不良流出リスクを抑えています。
こうした「データに基づいた防縮・防シワ制御」は昭和的手作業の良き部分と融合することで、現場力を底上げしています。
バイヤーとサプライヤーの攻防の現場
バイヤーが求める「見えない品質」
バイヤー(仕入れ担当)の多くは「デザイン」や「納期」だけでなく、「洗濯しても崩れない品質」を強く意識しています。
しかし実際には、シワや縮みの問題は目視や試験だけでは十分管理できません。
そこで注目したいのが「工程履歴データ」や「製品保証のエビデンス」です。
これを体系的に提示できるサプライヤーは、「信頼性の高い取引先」として評価されやすくなります。
サプライヤーの立場で考える差別化
同じTシャツを作るでも「うちはこんな工程管理をしています」「この部分で他社と違います」という「見えない価値」のアピールが差別化になります。
バイヤーに対して、単なる出来高や価格だけでなく「脱アナログ」「継続的な品質改善活動」「トレーサビリティ確保」など、現場の改善を積極発信することで、付加価値の高い提案が可能となります。
未来を見据えた防縮・防シワ技術の方向性
次世代の防縮・防シワ加工へ
近年では「繊維自体の開発(例えば形状記憶素材や、ナノコーティング樹脂の活用)」、「自動化乾燥ラインの進化」、「AIが主導する最適工程制御」なども進んでいます。
昭和的な「勘と経験」だけではなく、これからは「数字に基づいた品質管理」や「省エネ・環境性」の視点を融合していくことが、持続的成長のカギとなります。
また小ロット多品種・短納期化への対応も、工程柔軟性やデジタル管理の進化無しでは立ち行きません。
現場の知恵とテクノロジーの橋渡しを
私は、現場で培った「ちょっとした工夫」や「素材ごとの微調整ノウハウ」が、デジタル時代でも活きると考えています。
そのためには「現場の声の可視化」と「開発部門・営業部門との連携」が必要です。
例えば、プロセス改善事例や不良削減の失敗談も積極的に共有・記録することで、次の世代への技術伝承や、新たな価値創出のヒントが生まれてきます。
まとめ
Tシャツのシワを防ぐための防縮加工とタンブル乾燥条件の制御は、表面的なものだけでなく「現場の知見」「工程管理の精度」「新技術と経験の融合」がポイントです。
昭和から続くアナログ現場の知恵を活かしつつ、新時代のデジタル活用や工程可視化を進めることで、バイヤーが求める「高付加価値」「安定品質」の両立が見えてきます。
製造業の発展には、現場・開発・営業・バイヤー・サプライヤーが一体となり、互いの視点を学び合う「知識の連携」が不可欠です。
皆さまのTシャツ作りがより高品質・高付加価値につながること、そして製造業全体の持続的な成長への貢献になることを切に願います。
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