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投稿日:2025年10月19日

歯磨き粉の粒子が沈殿しない懸濁安定剤と混合速度設計

はじめに:昭和から続く歯磨き粉製造現場のリアル

日本の製造業、特に歯磨き粉のような日用品の分野では、いまだに昭和の時代から続くアナログ的な工程管理や職人技への信頼が根強く残っています。

しかし、グローバルな品質競争が激化する中、現場力の高さと共に、最新の科学知見や合理的なプロセス設計をバランスよく取り入れることがますます重要となっています。

今回は、歯磨き粉製造の現場で最も悩ましい「粒子沈殿問題」と、それを解決するための懸濁安定剤の選定、そして混合速度の設計について、現場目線と理論の両面から深掘りしていきます。

バイヤー、サプライヤー双方が知っておきたい調達・技術の勘所も交え、昭和の延長では立ち行かなくなるポイントにもしっかりと光を当てていきます。

歯磨き粉の粒子沈殿問題とは何か

製品クレームと現場の板挟み

歯磨き粉の配合には、研磨剤や香味料、着色粒子、薬効成分など、さまざまな固体粒子が含まれています。

これらは見た目や品質に大きく影響するため、「沈殿しない、分離しない」状態の維持が非常に重要となります。

もし製品出荷後の流通や店頭、家庭でチューブ内や容器底部に粒子沈殿が発生すれば、

「分離した」「中身が変質したのでは?」

といった重大なクレームへと直結します。

こうしたクレームは品質保証部門だけでなく、調達部門、生産管理、現場作業者までもが板挟みになるため、業界全体で高い課題感を持っています。

アナログ体質と「勘」に頼りがちな現場

昭和世代のベテラン現場担当者による「今までの配合で問題なかった」「混ぜるスピードは手触りで判断」という“勘と経験”の世界は、確かに重要です。

ですが、原材料そのものが世界的な調達難やグレード変更、コスト削減圧力で僅かな変更でも性能が著しく変わる現在、この“カンタンな現場合わせ”が通用しないケースが増加しています。

そこで重要になるのが、「安定して上手くいく」科学的に裏づけられた懸濁安定剤と、その働きを最大化する混合条件の客観的な設計手法です。

懸濁安定剤の基礎知識と選定のポイント

懸濁安定剤とは?その役割

歯磨き粉における懸濁安定剤(サスペンションエージェント)は、主に香味粒子や研磨剤などの固形成分が沈殿するのを防ぐため、水フェーズ(ジェル基材)の中で粒子を“浮かせて”分散維持する役割を担います。

一般的な懸濁安定剤のカテゴリは以下の通りです。

– 天然系:カラギーナン、キサンタンガム、セルロース誘導体(CMCなど)
– 合成系:カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、PAA系高分子など
– 金属石けん系:アルミニウムマグネシウムシリケート(ベントナイト)

それぞれの特徴と、どのような場面で最適かを押さえることが重要です。

物性変化と調達リスク:アナログ業界への新しい視点

緊急調達やコストダウン推進で、従来の安定剤がサプライヤー変更や、同等グレードかつ国産から海外製へスイッチしただけでも粘度や懸濁力が大きく変化することがあります。

例えば、カラギーナンやカルボマーなどは、グレードやロットごとの粘度差が現場の勘で吸収できない範囲に拡大することもあり、調達購買部門と生産技術開発が密に情報をシェアし、現場検証結果を運用フローへ速やかに反映させる必要があります。

この点は「バイヤーはモノ買い屋じゃない、技術サポートも一体だ」という新時代のバイヤー像と直結しています。

歯磨き粉特有の注意点

歯磨き粉現場で特に課題になるシーンでは、以下の3点が挙げられます。

1. 兼用ラインでの洗浄性
粘度が高い懸濁安定剤はライン洗浄性を著しく落とす場合があり、生産性にも影響。
2. 過剰投与による品質低下
「沈殿防止」を狙って増量すると、吐出しづらい、泡立ちが悪い等の副作用となる。
3. 消費者の求める“なめらかさ”“香味粒子の分布”
安定剤を変えるとユーザーエクスペリエンスも変化するため、テストマーケが必須。

懸濁安定剤の混合速度と配合設計

沈殿防止の本質は「粒子の浮遊安定」と「現場の再現性」

粒子が沈殿しないためには、懸濁安定剤によって「基剤の粘度を上げる」「三次元ネットワーク性を増やす」ことが基本原則です。

一方、鉄則なのは「物性値(粘度、ゲル強度)」だけ見てもダメだということ。

なぜなら、混合速度や手順によって同じ配合でも仕上がりが全く異なるためです。

現場が悩む「沈殿しない根拠」=「再現性」こそが、現代の歯磨き粉製造現場の新たな軸となります。

最適な混合速度の考え方

懸濁安定剤の混合には「攪拌だけしていれば良い」わけではありません。

過剰なシア(せん断力)は安定剤の分子構造を破壊し、却って粘度低下やネットワーク破壊を招きます。

逆に、低速すぎるとダマになりやすく、粒子分散のムラが発生します。

よって、

1. 低速プレミックス → 安定剤の充分な吸水
2. 中速攪拌 → 均一分散&ゲル化進行
3. 時間管理による高分子ネットワークの成長

この「速度・時間プロファイルの設計」が、現場目線のノウハウとデータドリブン(粘度測定など)の融合で実現します。

今はデジタル化が進み、リアルタイムで粘度・粒子径分布・画像撮影が容易な時代です。

AIや画像解析技術を取り入れやすくなったことも、業界として意識するべき変革点でしょう。

機器選定とラインスケールでの落とし穴

ラボスケール(小型バッチ)と量産ライン(大型タンク)では、攪拌翼形状や速度の違い、温度分布、スケールアップの影響で物性がズレるリスクがあります。

そのためバイヤーや技術営業は、単に「同等スペック」や「コストだけ」で選ぶのではなく、「実機テスト可否」「施工サポート力」「生産現場の多能工化」といった、現場と一体となった課題解決力まで見極めるべきです。

現場目線では、こうした切り替え時に手順書・SOPの現状維持に固執しない“しなやかさ”を持つことが、アナログ文化からの脱却のカギとなります。

事例に見る:現場と技術・バイヤーの連携の実践

ケース1:安定剤変更時の混合手順刷新プロジェクト

ある工場で、コストダウンを狙ってカルボマー系からキサンタンガム系へ切替えを行った際、混合手順を従来と同じにした結果

・ダマが多発
・製品の沈殿クレーム
・吐出性の悪化

等、現場で問題が頻発しました。

調達部門と技術・製造各現場が協力して「最適な懸濁安定剤の吸水シーケンス」「前後工程の温調」「ミキサーレイアウトの微修正」など、多角的に改善提案し、最終的には安定生産可能な新プロセスを確立できました。

こうした経験をドキュメント化・技術データベース化し、現場同士、バイヤー・サプライヤーで横展開する仕組みは、今後ますます重要となります。

まとめ:製造業の“これから”はチームサイエンスと現場知の融合

歯磨き粉製造は、単なる“沈殿防止”だけでなく、「消費者満足」「コスト競争力」「生産性」「現場作業性」すべてのバランスが問われる典型的な“現場志向型イノベーション”の領域です。

従来の「調達は調達だけ」「現場は現場だけ」といった縦割り思考から、部門横断での課題共有・早期仮説検証・現場データを活かした設計力が今後の方向性を決めます。

アナログ業界の枠を超え、「バイヤーが技術を理解し、サプライヤーが現場事情を掴み、現場作業者が理論にも目を向ける」時代が到来しています。

歯磨き粉製造の粒子沈殿対策ひとつをとっても、その奥に広がる“業界構造の変化”を捉え、一歩先を行く現場力を築きましょう。

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