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工程能力が見えにくい加工法の不安

目次
はじめに:工程能力への不安を抱える現場のリアル
製造業の現場で「工程能力」、つまり自社もしくはサプライヤーの加工ラインが、どこまで安定して高品質な製品をつくれるかの把握は極めて重要なテーマです。
しかし、とくに工程能力が見えにくい加工法、たとえば熟練工の技量に依存する手作業系や、変数の多い新規プロセス、自動化への移行が進めにくい工程などにおいて、「実はどこまで信頼できるのか」「品質トラブルが生じるリスクはないのか」という不安を感じている方は少なくありません。
バイヤー(調達担当者)はもちろん、現場で直接ものづくりに関わる方や、サプライヤーとして受注先工場のニーズへ応えようとする方々も、同じような悩みを抱えているのが実情です。
この問題は、昭和の高度経済成長期から残る「言わずもがな」「やればわかる」的な現場感覚と、デジタル化・グローバル化が加速する現代の「見える化」への要求がぶつかりあう、まさに製造業の現場の最前線の課題なのです。
工程能力が見えにくい加工法とは?
1. 熟練工・技能伝承頼みの工程
旋盤加工、仕上げ研磨、調整・組立といった工程では、職人技ともいえる手作業が仕上がりを左右します。
長い経験と現場勘に支えられた技術は頼もしい反面、その再現性や定量的な能力の把握が非常に困難です。
休暇や引き継ぎ、ベテランの高齢化など、「人」に大きく依存するため、製品精度のバラツキや品質クレームの温床にもなりがちです。
2. 設備不具合・条件変動の多い特殊工程
熱処理、表面処理、塗装などは、素材の状態や、温度・時間・雰囲気といったプロセス変数の影響を強く受けます。
現場では「今週の炉は調子がいい」「バッチごとにムラが出る」といった現象が珍しくなく、統計的な工程能力指数(Cp、Cpk)などといった数字のみで判断するのは実際は難しい状況も未だに多く見られます。
3. 新規プロセスへのトライアル進行中
EV化や新素材活用に伴う新工程の立ち上げでは、基礎データが少なく、品質が安定するまで工程能力が安定しません。
またラインや工程の自動化においても、初期設定の段階では理想と現実のギャップが浮き彫りになり、現場が「ほんとうにこの設備、大丈夫なのか?」という一抹の不安を抱えやすくなります。
現場で頻発する「工程能力が見えにくい」ことによるリスク
品質トラブルの発生・市場クレームの増加
工程能力が見えず、「何となくできている」「たぶん大丈夫」状態で生産を続けると、予期せぬ不良品流出や納入先からのクレーム発生につながります。
特に自動車・家電など最終製品での安全性が問われる業界では、一度の品質事故が大きな損失や社会的信用の失墜を招きかねません。
納期遅延・コスト増への発展
不良再発や追加検査・選別が必要になることで、当初予定より生産リードタイムが長期化します。
結果として納期遅延や、追加コストの発生、そのしわ寄せを受けた下流工程やサプライヤーとの関係悪化にもつながることが多いです。
現場のモチベーション低下
「うまくいくかわからない」「責任転嫁や押し付け合いが横行する」といった雰囲気が現場に広がると、ベテランや若手問わずやりがいやチャレンジ精神が損なわれ、優秀な人材流出も招きかねません。
昭和的現場からの脱却〜業界動向と時流を踏まえた対応策
「属人化」を排すための標準化アプローチ
昭和の製造現場では「技術は背中で見て〇〇せよ」が当たり前でしたが、いまや製造業はサプライチェーン全体での品質一貫性が求められる時代です。
そのためには、「誰がやっても同じ(標準作業)」の徹底。
作業手順や管理ポイントを明文化し、重要工程については動画マニュアルなども活用して技能伝承の平準化を強化していくことが必須となります。
IoT/センサーによるリアルタイム可視化の加速
設備や生産ラインにセンサー・IoT機器を設置し、温度・圧力・振動といった工程データをリアルタイムで「見える化」する取り組みが進んでいます。
たとえば射出成形の金型内温度や、塗装ブースの湿度・粒子数監視など、各工程の“勘と経験”で済ませていた条件を数値化することで、バラツキ発生リスクをいち早く察知できるようになります。
これにより「問題発生後の対策」から「問題未然防止・予兆管理」へと現場は大きく進化します。
QC工程表からCPK管理とAI活用へ
従来のQC工程表、すなわち各管理点における検査項目や保証値の可視化は標準的な手法です。
さらに先進企業では統計的工程管理(SPC)・工程能力指数(Cpkなど)を測定し、異常の兆候を自動解析するAIシステムの導入も進みつつあります。
単なる「不良数カウント」から、「変動原因の究明」や「品質ロスの源流管理」まで、よりラテラルに深堀した現場改善が期待できます。
調達購買・サプライヤー管理での「見える化」強化
サプライヤー管理面でも、調達購買担当者と現場が一体となった現地監査、工程FMEA(故障モード分析)、PPAP(生産部品承認プロセス)制度など、多層的なリスク評価を行い「なぜここは工程能力が見えにくいのか」「どこに境界線があるのか」をあぶり出します。
バイヤーが工程能力を“肌で感じる”アプローチとしても、単なる書類審査ではなく、納入先の生産現場へ足を運び、実際の加工現場・組織風土・技能レベルを定性的にも評価する取り組みが重要です。
現場目線で考える、工程能力が見えにくい時の実践的アクション
1. 仮説を立てて「小さく始める」
いきなり全工程の可視化や自動化は現実的ではありません。
「この工程、この作業、この変数が怪しい」という現場スタッフの観察眼を活かし、仮説検証型でテスト・データ取得を積み上げていくことが第一歩です。
たとえば、Aラインの夜勤でだけ発生する不良発生率増加など、ピンポイントな問題を可視化し、対策を講じることで現場の成功体験を積み重ねていきましょう。
2. 他部署・サプライヤーと「共通言語」を持つ
工程能力が曖昧な場合、バイヤー・サプライヤー・製造現場とで言葉や感覚のズレが起こりがちです。
CPKやSPC、マイクロ秒単位のバラツキや、投影寸法の数値根拠など、共通指標や事例ベースでの会話を心掛け、同じ俎上に問題を乗せ改善提案を進める姿勢が大切です。
3. 機械学習やビッグデータを味方につける
今後はAIによる画像認識やビッグデータ解析による予兆検知など、従来型の「現場勘」とは異なるアプローチが武器になっていきます。
小さなサンプルでも、パターン認識や異常兆候の自動検出などが進むことで、「この工程は不安だ」という感覚を定量的な意思決定へと結びつける時代が到来します。
まとめ:不安を「現場力とデータ」で希望へ転換しよう
工程能力が見えにくい加工法に抱く不安は、製造業に関わる誰もが直面する普遍的な課題です。
昭和から令和へ、産業・現場の常識も劇的に変化していますが、“人が素材に知恵と技術を注ぎこむ”という根っこの部分は変わっていないと私は考えます。
現場力を信じつつも、「現場勘」にこもらず、データや可視化技術を積極的に取り入れる。
調達・バイヤー・サプライヤーの壁を超えて共創することで、「不安」を「希望」へと転換する現場を作り出していきましょう。
そして、この地道な積み重ねこそが、真の「日本のものづくり力」復活への道であると強く確信しています。
今後も現場のラテラルな知恵と最先端テクノロジーの融合で、ものづくりの新たな地平線を一緒に切り拓いていきましょう。
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