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依存先の内製化が噂になったときの不安

目次
依存先の内製化が噂になったときの不安とは
依存先、つまりサプライヤーやベンダーに対して自社の重要な部品や製品を供給してもらっている状況は、数多くの製造業企業にとって日常的なものです。
しかし、取引先、つまり自社の顧客が「内製化」を検討している、あるいはその噂が流れた時、サプライヤー側には計り知れない不安が広がります。
今回は「依存先の内製化が噂になったときの不安」というテーマについて、製造業現場の視点から深く掘り下げてみたいと思います。
なぜ依存先の内製化が噂になるのか
コストダウン圧力と競争力維持
製造業の世界では、QCD(品質・コスト・納期)向上のプレッシャーが絶えずかかっています。
顧客が自社に発注している製品や部品を内製化しようとする場合、根底にはコスト削減や技術力向上、納期短縮への期待があることがほとんどです。
「外注コストが高い」「仕様変更へのレスポンスが遅い」「品質トラブルが頻発している」など、さまざまな理由によってサプライヤー頼みから脱却したいと考え、内製化が噂されるケースが散見されます。
アナログ業界に強く根付く“安心志向”
一方、昭和から続くアナログ的な業界では「これまでのやり方を変えたくない」「人間関係・信頼関係を維持したい」という心理が根強いのも事実です。
そのため、顧客内部で「内製化するぞ!」という強い動きにならなくても「やっぱり内製化できないか?」という“検討するだけムード”が繰り返し発生します。
それでも、この“噂”が立ち始めるだけで、サプライヤーは大きな不安を抱えることになります。
現場のリアルな不安とは何か
売上減少への危機感
サプライヤー側にとって、依存先の大口顧客から「内製化を考えている」と明言される、あるいはそれを仄めかされることは、つまり売上げ減少の直接的なリスクです。
特に、全売上の多くをA社が占めている場合、「A社の案件=会社の存続」になるため、内製化の噂だけでも一気に社内がざわつきます。
技術情報の流出リスク
これまで自分たちが工夫して培ってきた技術やノウハウを、内製化を進める過程で顧客側に持って行かれてしまうことも現場の強い不安です。
最新の生産技術や品質改善の手法を顧客の要求に応えて提供していた場合、そのまま“数年間のノウハウ移転”が起きてしまう現実は悔しく、恐ろしいものです。
「系列意識」の崩壊と人間関係のダメージ
昔ながらの製造業では、系列意識や“阿吽の呼吸”による信頼関係が重要視されてきました。
しかし、内製化はその関係性そのものを根底から揺るがします。
担当者の「もう頼らなくて済みます」というそっけない言葉や態度に、裏切られたような心理的ショックを受ける現場担当者も少なくありません。
内製化リスクのなかで現場が取るべき行動とは
自社独自の価値を再定義する
まず大切なのは、内製化に対抗するのではなく、自社の存在意義や強みをあらためて見つめ直すことです。
「うちが納入する製品はなぜこの依存先に選ばれているのか?」
「他社や顧客の内製では再現できない“体験価値”は何か?」
答えを突き詰めることで、単なる価格競争ではなく、“なくてはならないパートナー”としての立場を強化できます。
工場の自動化とDXへの取り組み
アナログ的な生産から抜け出し、自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することで、コストはもちろん、品質や納期対応のスピード向上に貢献できます。
現場に根ざした“小さな自動化”から、全体最適のシステム導入まで、段階的に取り組むことが重要です。
こうした姿勢は顧客にも伝わり、「やっぱり任せてよかった」「新しい製品はこのサプライヤーにお願いしたい」という信頼につながります。
情報収集力を高め、“次の一手”を模索する
内製化の噂が流れ始めたときは、慌てて反発するよりもまず情報をしっかり集めましょう。
現場の担当者とのコミュニケーション、業界の動きや競合他社の状況把握など、“先を読む力”が勝敗を分けます。
最悪、主要な取引が減ることも想定し、新規開拓や他業界への展開、今ある技術の横展開など“次の一手”を準備しておくと安心です。
内製化の本当の課題と顧客担当者のホンネ
顧客側にとっても「内製化は簡単じゃない」
取引先が「内製化する」と言い出した場合、実は社内でも「本当にできるのか?」という懸念や反対意見が多く存在しています。
自社でラインを立ち上げ、熟練オペレーターを確保し、日々の品質管理と生産効率の課題に耐えうる体制を整えることは現実には多大なコストと労力がかかります。
そのため、“噂”だけが先行して結局は「やっぱり外注が良かった」となるケースも多くあります。
バイヤーの立場から見た「内製化検討」の真意
バイヤー、つまり購買担当者にとっても、「いつでも内製化できる!」と強気で挑むのが本意ではありません。
むしろ「既存サプライヤーにもっと成長してほしい」「コストや品質について緊張感を持ち続けてほしい」という圧力の意味も大きいのです。
ですから、サプライヤーサイドが危機感を持ちつつも積極的な提案や改善姿勢を見せることは、双方の信頼関係を強める効果があります。
現場で実践すべきラテラルシンキング
「内製化」を差別化のチャンスに変える思考
依存先の内製化が噂されると、まず守りに入りがちですが、発想を転換することが必要です。
例えば「内製化をサポートする新サービス」をつくり、立ち上げ支援や技術トレーニング、資材調達のコンサルを新事業として提案するといった攻めの一手があります。
「顧客の内製化を敵として捉えず、共存・共創する関係へ」と自社のスタンスを移行させると、これまでとは違う商機が広がる可能性があります。
他業界のベストプラクティスに学ぶ
IoTやAIなど先端技術の活用事例を他業界から取り入れたり、異業種のノウハウを自社の製造現場や営業戦略に応用したりすることも、ラテラルシンキングの一環です。
狭い業界常識に囚われず、「新しい地平線」を開拓するアクションが、将来の自社存続を力強くサポートします。
まとめ:内製化の噂に揺れない企業経営をめざして
依存先の内製化が噂されると、現場には強い不安が広がります。
しかしその根底には、自社の価値や現場力を客観的に見直し、変化へ柔軟に対応する準備ができていないことが多いのです。
今こそ、現場の力と既存の信頼ネットワークを最大限活かしつつ、新しい価値の創出と未来志向の行動が必要です。
昭和のアナログ製造業の良さも大切にしながら、次世代の“ありたい姿”を描き、一歩踏み出すことが業界の新しい潮流をつくります。
バイヤーを目指す方、現場のサプライヤーでバイヤーのホンネを知りたい方へ、新しい時代の調達・製造戦略を考える一助となれば幸いです。