投稿日:2025年8月25日

コネクタピン数削減で部品費と実装費に効かせる機能統合のアプローチ

はじめに――昭和アナログからの脱却、今こそ問われる機能統合の価値

製造業の現場で長らく根強く残っている「部品ごとに個別最適化し、従来通りの設計を繰り返す」昭和スタイル。
しかし、コスト競争が激化し、デジタル化やDXが叫ばれる現代、こうしたやり方ではもはや太刀打ちできません。

とりわけ基板設計や調達現場で声高に叫ばれているのが「部品点数削減」「コネクタのピン数削減」です。
これは材料費や実装コスト、さらには品質リスクという観点からも大変重要なテーマです。

本稿では、昭和の“部品ドリブン設計”から脱却し、機能統合によるコネクタピン数削減のメリットや、現場で生きる工夫、調達・バイヤー視点での捉え方なども交えて深く解説します。

コネクタピン数が増えると何が困るのか

材料費の上昇がコスト競争力を直撃

コネクタのピン数が増えるということは、それだけ高価格帯のコネクタが必要になることを意味します。
端子材料の銅、めっき、樹脂…いずれも高騰傾向にあります。さらにピン数の大型化によってコネクタ自体のサイズや複雑性も増し、サプライヤーにとっても納期や生産難易度が上がります。

実装工数・実装不良リスクの増大

実装工程においても、ピン数が増えれば増えるほどはんだ付け箇所が増加します。
これはAOI検査やリワーク工数も増すことを意味し、一つの不良で基板全体をNGにしなければならないリスクも上がります。

製造現場のレイアウト最適化が困難になる

限られた基板スペースの中に無理にコネクタを詰め込むと、隣接部品との干渉や作業性悪化、熱設計に悪影響をきたします。

機能統合によるコネクタピン削減――どのように考えるか?

本当に“機能ごとに1:1”のインターフェースが必要か見直す

従来設計では、機能や信号ごとに専用ピンを振る形が一般的でした。
しかし、デジタル通信やマルチプレクサ(多重化回路)の普及によって、複数機能を1ラインで担わせたり、共用化する波形設計が可能になっています。

ソフトウェアやICの進化を活用して機能集約を進める

かつては個別ロジックICやリレーで物理的に信号を分けていましたが、今はSoCやFPGA、マイコン一体化など、ソフトウェアで切り替えながら機能を集約できます。
これにより、従来10ピン必要だった設計が2~3ピン増で実現可能というケースが多数生まれています。

バイヤー/サプライヤー視点で見る「ピン数削減」

調達の「もうワンランク下のコネクタ選定」に直結する

ピン数が減らせる=より汎用的小型グレードのコネクタへシフト可能です。
パナソニック、ヒロセ、安川、MOLEXなど多くの主力コネクタメーカーは、ピン数別の商品設計を行っています。
一つ上のピン数になった途端、単価も最小発注ロットも跳ね上がることが多いのです。

これを抑えることで部品費は20~30%低減することも珍しくありません。

サプライヤーとの協議では「工法提案」の見せ場に

サプライヤー目線でもピン数削減は自社工法のアピールポイントです。
例えば「独自パターン設計」「集約用カスタムケーブル開発」「モジュール化提案」など、調達側に“利点がある形”での新規提案が可能となり、コンカレント開発を成功させやすくなります。

設計変更・VA/VE(バリューエンジニアリング)の強力な武器

「今期、部品費を下げろ」という経営陣からの無茶な要求。
設計変更というと嫌がられがちですが、ピン数削減は機能性能を維持しつつコストダウン&不具合率低減を実現できるため、企画部や工場現場を巻き込んだVA/VE提案の中核になり得ます。

実践的な取り組み例:現場から始める「ピン数最適化」

事例A:既存製品での通信ピン共用化によるコスト半減

ある制御装置では、アナログ信号、デジタル信号、電源ラインで合計38ピンもの特注コネクタが使われていました。
しかし通信プロトコルの見直しと信号多重化ICへの置き換えで、18ピンの標準コネクタに統合。
部品費は40%減、実装工数は30%減となり、リワーク率も大幅ダウンしました。

事例B:基板レイアウト変更&パーツ点数半減

昭和の頃から改修を繰り返してきた生産設備。
配線設計にまとめや方向性を持たせ直し、アナログ波形の切り替え信号を制御ICに一本化。
4種類のコネクタと40本近い配線を、2種類・20本へ大幅削減し、配線工数と現場トラブルも1/3に軽減しました。

「アナログ思考」から「プロセス&フロー思考」へのシフトが決め手

守りたい「現場の安心感」と攻めの「システム設計」

現場では「昔からこのコネクタ・ピン配置でやってきたから安心」という意見が根強いです。
確かに、誰が見てもすぐにわかる配線や個別のピン分けは、“人ベース”のメンテナンスや改造には利があります。

しかし、製造フロー単位でみると、設計・調達・組立・検査・現場対応、それぞれの“ムダ”がピン数過剰に隠れています。
プロセス全体で最適化し、必要十分なピン数を決めることで、全体の生産性・コスト競争力が一段上がります。

デジタル化/DXへの橋渡しとしてのピン数削減

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進段階としても、コネクタピン数の見直しは絶好のきっかけになります。
自動化ラインやIoT、遠隔制御など、これからの工場システムはますます「スマート配線」「機能集約」が求められます。
その端緒が、“機能統合によるピン数最適化”なのです。

まとめ――地道だが遅れれば負ける「コネクタピン数最適化」

コスト競争、製品信頼性、サプライチェーン不安、ものづくりDX…。
いま現場が直面しているどの課題にも、「コネクタピン数最適化=機能統合」は直結しています。

これまでの「安心だからこのまま」「今さら面倒を増やしたくない」という慣習から、一歩踏み出す必要があります。
サプライヤー、設計、現場オペレーター、そしてバイヤー――立場は違えど、“全体で考える”ことが競争力強化の第一歩なのです。

地道な工夫ですが、一歩踏み込むことで自社の生き残りを確実なものにしましょう。
そして長年培った「現場感覚」と「新技術の連携力」を武器に、昭和アナログ思考からの真の脱却を目指しましょう。

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