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工作機械部品半導体装置部品自動車部品の製造販売合弁事業におけるベトナム市場のアプローチ

目次
はじめに
近年、グローバル市場における製造業の競争はますます激化しており、その中でもアジア圏、特にベトナム市場への注目が高まっています。
本記事では、工作機械部品・半導体装置部品・自動車部品の製造販売における合弁事業の視点から、ベトナム市場への実践的なアプローチについて解説します。
昭和時代からのアナログ的な商習慣が根強く残る一方で、急速なデジタル化、サプライチェーンの最適化、自動化への移行が進むベトナムの現状に、現場目線からラテラルシンキング(水平思考)をもって深掘りしていきます。
ベトナム市場の存在感と成長背景
ベトナムは、世界の製造業において“次なる中国”と呼ばれるほどの成長を遂げています。
その背景には多様な要素が複雑に絡み合っています。
人件費と優秀な労働力
従来の中国市場と比べて、ベトナムの人件費は割安でかつ、勤勉な労働力を確保しやすい特徴があります。
教育水準の向上とともに、エンジニアや技能者の層も厚みを増してきました。
政治・経済の安定性
ベトナム政府は外国資本を歓迎し、特に製造業に対する優遇策を打ち出しています。
ITインフラ整備や工業団地の拡充政策もあり、事業展開のハードルが年々下がっています。
地政学的優位性とFTAの活用
ASEAN諸国へのゲートウェイという地政学的な優位性に加え、各国との自由貿易協定(FTA)のネットワークも充実しています。
これにより、関税メリットを享受しやすく、グローバルサプライチェーン内での最適配置が可能となります。
合弁事業によるベトナムへの進出の強みと課題
現地市場へ参入する際、合弁事業(JV:Joint Venture)方式は有効な選択肢となります。
しかし、それゆえの難しさも潜んでいます。
合弁事業のメリット
– 現地パートナーのネットワークによる快速な市場進出
– 商習慣や法規制への迅速な対応
– リスク分散と資本の柔軟活用
– 現地政府からの優遇措置獲得
合弁事業の課題
– 意思決定の遅延(多国間協議によるタイムロス)
– 技術流出や知的財産保護のリスク
– 価値観や品質基準のギャップによる摩擦
特に昭和的な“暗黙の了解”文化や、日本流の品質重視姿勢がうまく噛み合わないことも多々見受けられます。
そうしたギャップをどう埋めるかが、現場責任者としての腕の見せどころです。
業界別:ベトナムで注目のアプローチポイント
分野ごとに特徴的なアプローチが求められます。
工作機械部品分野
ベトナムの工作機械市場は、中国やタイと比べるとまだ小規模ですが、今後の自動化・デジタル化の波と共に急拡大が見込まれています。
現場の声を拾うと、現地メーカーはまだまだ「流用設計」「部品調達の融通」が主流です。
日本企業が強みとする高精度部品や、きめ細やかな納期・在庫対応は、現地企業との差別化ポイントです。
一方、ベトナムパートナーには、カスタマイズ対応力・柔軟な価格対応ノウハウを伝授し、市場適応していく姿勢が重要となります。
半導体装置部品分野
半導体関連は、グローバルITサプライチェーンの一翼として急速に地位を高めています。
投資や設備の規模も大きいため、現地における品質管理(クリーンルームや先端加工技術)と、現地スタッフの技術教育が成功のカギです。
日本の現場型生産管理(3現主義:現場・現物・現実)を、ベトナム流にアレンジして根付かせる工夫が求められます。
加えて、現地エンジニアへの技術移転やマニュアルの多言語対応で、技能ギャップを解消する仕組みづくりが生きてきます。
自動車部品分野
自動車産業はベトナム政府の重要産業に位置づけられています。
現地には日系、韓国系、欧米系の多数のOEMやサプライヤーが進出しています。
安定調達・コスト対応力・品質保証体制の3本柱を、いかに現地実態とマッチさせて合弁会社の競争力とするかが非常に重要です。
また、形式ばった日本流“完璧主義”を現地仕様に落とし込みつつ、安定生産と現地スタッフのモチベーションアップという微妙なバランス感覚も問われます。
アナログとデジタルのハイブリッド戦略
昭和的商慣習を否定から入るのではなく、ベトナムの現場目線をリスペクトしつつ、最新のデジタル技術を効果的に導入する。
この“ハイブリッド戦略”が、ベトナム市場で持続価値を生み出すポイントです。
現場コミュニケーションの再構築
日本的な「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」も、上下関係の強いベトナム式組織文化では形式的になりがちです。
オープンな職場づくりや、現地スタッフによる改善提案の仕組みを加え、ボトムアップ型の運営も取り入れると、現場力の底上げにつながります。
IT活用による見える化と標準化
– 生産進捗や品質データのリアルタイム管理
– 設備保全(予知保全・IoT対応)
– 調達業務の電子化(EDI、ペーパーレス発注)
といったデジタル活用により、“あうんの呼吸”“紙で回す調達”からの脱却を目指します。
ただし、初期導入時は現場負荷が高くなるため、「一斉導入」よりパイロット運用で成功事例を小さく作り、水平展開するのが現場に根付くコツです。
バイヤー/サプライヤー視点のベトナム戦略
バイヤーを目指す方に伝えたいこと
ベトナムでは、“単なる価格交渉屋”ではなく、“現地市場・現場と一体化した価値共創型バイヤー”が成功のカギです。
「なぜ、それが必要なのか」「どうすれば現場が回るのか」という根本理由にフォーカスしたコミュニケーション力が問われます。
サプライヤーが知るべきバイヤーの考え方
バイヤーは“単価ダウン要求”だけで動いているのではありません。
– 品質リスク回避
– 納期安定化
– 短サイクル化・小ロット対応
といった現地工場運営に即した多面的視点を持っています。
ベトナムパートナーがこれに柔軟に応えられれば、信頼醸成と長期的な取引拡大につながります。
合弁事業成功のための現場発ラテラルアプローチ例
– 日本からの技術者駐在・現地スタッフ混成チームによる、現場課題のブレインストーミング会議を月1回実施
– 合弁相手企業の伝統的価値観をリスペクトしつつ、日本式工程管理手法を“見える化”・“標準化”して現場に染み込ませる
– 全員参加型5S活動を先行導入し、“日本品質”を体験させて意識改革を促進
– 失敗事例やクレームも積極的に公開し、リアルな現場経験を知識資産としてシェアする
まとめ
ベトナムは、製造業の次世代成長市場として極めて大きな可能性を秘めています。
工作機械部品・半導体装置部品・自動車部品など、高度な品質要求とコスト競争が求められる分野こそ、現場発の実践的ノウハウが活きてきます。
昭和的なアナログ商習慣と現代のデジタル技術、現地文化と日本流価値観、それらすべてを組み合わせ、ラテラル思考で“答えのない課題”に挑むべきです。
現場で働く一人一人が“今より一歩先へ”と動くことで、ベトナム市場合弁事業の未来は確実に切り拓かれていくはずです。
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