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地方製造業の強みを行政が発信して引き寄せる全国・海外調達案件

目次
はじめに:地方製造業の新たな可能性
人口減少や労働力不足、老朽化したインフラ——現在、日本の地方製造業はさまざまな課題に直面しています。
一方で、グローバル化の波とともに、地方のものづくり現場に新しいチャンスが訪れています。
その鍵となるのが、行政による地方製造業の強みの「見える化」と、行政主導の積極発信です。
この記事では、20年以上現場に携わった経験をもとに、製造業に携わる方、バイヤー志望の方、サプライヤーとしてバイヤー目線を知りたい方に向けて、実例やトレンドを交えながら、地方製造業の強みを全国・海外調達案件に結びつける具体的な方法を解説します。
昭和の成功体験から抜け出せない現場の実態
多くの地方製造業では、今なお昭和時代に築かれた成功体験と職人気質が根強く残っています。
たとえば、紙ベースの伝票管理、暗黙知に依存したノウハウ伝達、経験則頼みの品質管理などは今も日常風景です。
こうしたアナログ文化は、時として効率化や新分野開拓の足かせとなります。
一方で、何十年も続く受注生産や、熟練の技術者が生み出す「現場力」など、他地域や海外勢が模倣しにくい高品質・高信頼のモノづくりも存在します。
この現場力こそ、行政が外部に喧伝すべき「地方製造業の強み」です。
現場力とは何か
現場力とは、目に見える設備や技術だけでなく、日々の現場改善活動(カイゼン)、一人ひとりの責任感と共感力、緻密な品質意識などが一体化した総合的なパワーです。
例えば、ある地方の精密加工工場では、小さな不良品でも現場全体で「なぜ発生したか?」を議論し、工程をたった1時間で修正・再発防止します。
こうした現場からの自律的な改善活動は、リードタイム短縮や品質安定化、コスト競争力の強化につながっています。
行政こそが“営業部長”になる時代へ
全国・海外の調達案件では、発注元となる大手メーカーや商社は「安心して任せられるサプライヤー」を探しています。
その選定プロセスで重要なのが、第三者による客観的な企業評価や、地元行政の信頼性です。
昨今、地方自治体が「地場産業の持続的発展」を掲げて、産業支援課や自治体公式ポータルによる情報発信を強化しています。
例えばある自治体では、「精密部品加工特集」や「地元モノづくりDX事例集」を多言語で紹介し、国内外バイヤーの問い合わせを誘発しています。
なぜ行政発信が効くのか?
民間サプライヤーの自社発信だけでは、どうしても「自画自賛」に映りがちです。
一方、公的機関による紹介は、中立性やエビデンスの信頼度が高いため、調達先としての信用獲得につながります。
加えて、自治体が事前に「地域の強み」や「災害時のリスク分散可能性」「地元物流インフラ」などの情報も整理しておけば、発注側の調達担当は“他拠点分散”や“サプライチェーン多様化”への布石として安心して検討できます。
バイヤーが求める「見える化」地方企業のプロフィール
現場目線ではつい「品質」「納期」「価格」といった基礎情報に終始しがちですが、全国・海外バイヤーはもっと多面的な情報を欲しています。
どのようなアピールが「刺さる」のでしょうか?
バイヤー視点でみた、強い地方企業の特徴
1. 第三者認証(ISO9001、エコアクション、SDGs達成度など)の有無
2. 主要設備・最大加工サイズ・得意ロット数
3. 独自技術(例:難削材加工、医療用精密パーツ、耐環境部品など)
4. 地域での連携体制(協力工場ネットワーク、設備相互利用)
5. 雇用・人材育成の取組(多能工化、外国人技能実習生の受け入れ実績)
6. 災害対応のBCP(事業継続計画)
7. 地元大学・高専との産学連携プロジェクト
8. 海外向け輸出実績や言語対応(英語・中国語など)
こうした情報を自治体や産業支援団体がまとめて外部発信すれば、国内外のバイヤーが比較・選定しやすくなります。
進化するデジタル調達と、地方製造業のポジショニング
2020年代以降、コロナ禍とウクライナ危機がもたらした“世界的なサプライチェーン分断リスク”を機に、調達担当者の視点は「中国や東南アジア一辺倒」から「日本国内の地方中小企業」へも向くようになりました。
加えて、主要な大手メーカーはWEB上で匿名調達案件やオープンイノベーションの公募案件を展開しています。
たとえば「ものづくりBASE」「イプロス」「NCネットワーク」などのBtoBマッチングプラットフォーム活用の他、地方自治体独自の全国・海外向け調達窓口設置例も増加中です。
こうした流れのなかで、地方製造業は“守り”から“攻め”の姿勢に切り替える必要があります。
デジタル時代に取り残されないために
具体的には、以下のような施策が有効です。
1. ホームページや会社案内を英語・中国語・韓国語など多言語化する
2. 製品・加工技術の動画解説をSNSやYouTubeで公開
3. 受注実績やプロセスの数値管理(トレーサビリティ・品質検証データ)を充実
4. WEB会議(Zoom、Teams)による見積・技術打合せの標準化
5. セキュリティ認証や個人情報保護の遵守
これらの取り組みを、行政が「モデル企業」として発信することで、地場中小企業全体の魅力向上につなげることができます。
事例紹介:行政発信がもたらした地方企業の躍進
ここで、実際に行政主導の発信とサポートにより、全国・海外案件を獲得した地方企業の事例を紹介します。
長野県・精密加工業T社のケース
T社は長野県の小規模切削加工会社でしたが、県の産業振興課が中心となって独自技術のPR動画を制作し、日本語・英語でYouTube配信。
また、県が主催する国内外バイヤーマッチングフェアへ積極的に参加を後押ししました。
結果、東京の大手医療機器メーカーからの部品量産受注、さらには欧州現地法人経由での試作案件獲得へとつながりました。
自治体が「ものづくり×グローバル化」の支援を行ったことで、T社の売上は5年間で1.7倍に増加しました。
愛知県・板金加工S社の挑戦
S社は親子二代で営む町工場ですが、愛知県の「未来ものづくり支援プロジェクト」を活用し、ドイツ・アメリカなど海外展示会にも行政スタッフ同伴で出展。
県のホームページや海外向けカタログにも紹介され、多言語問合せ窓口を設置。
海外からの引き合いが増加し、自動車部品の新規輸出先獲得に成功しました。
今こそ、行政×現場が「モノづくり大国・日本」を再生する
世界が経済安全保障を重視し、「サプライチェーンの国産回帰」「多拠点分散」がトレンドになりつつあります。
この流れを活かすには、行政が地方製造業のリアルな強み(現場力・品質・技術・人材)を、わかりやすくまとめて全国・海外発信すること。
そして現場側も、デジタルシフトと自社価値の客観的見える化を進め、時代のニーズに応えた“攻め”のマインドセットを持つ必要があります。
まとめ:バイヤー・サプライヤー・行政、三位一体の新時代へ
全国・海外調達案件の獲得には、従来の価格・納期だけでなく、「地方独自の技術力」「現場力」「安全・品質・BCP」といったキーワードの戦略的発信が不可欠です。
行政の発信力とサポートを活かした地方製造業の躍進は、バイヤーにとっても「優秀なサプライヤー発掘」「サプライチェーンの強靭化」につながります。
サプライヤーの皆様は、アナログな慣習にとどまらず、「見える化」「デジタル活用」「連携強化」にぜひ挑戦してください。
行政・現場・バイヤーが一体となって、日本のものづくりを新たな高みへ押し上げていきましょう。
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