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税関査察対応で記録のトレーサビリティを証明する監査手順

目次
はじめに:製造業における税関査察の現実
製造業の現場では、日々の生産活動や品質管理、生産性向上が重視されがちですが、忘れてはならない重要な業務が税関査察対応です。
特に近年は、国際取引の増加やサプライチェーンのグローバル化に伴い、税関による監査や査察の頻度が高まっています。
しかし、まだまだ昭和体質が残るアナログな業界風土の中では、記録管理やトレーサビリティ対応が後回しになることも珍しくありません。
その結果、いざ税関査察が入った際に「記録不備」「トレーサビリティが証明できない」といった理由で、指摘や是正要求を受けるケースが多発しています。
本記事では、製造業現場で働く皆さんやバイヤー志望の方、さらにサプライヤーの方にも役立つ税関査察対応の“現場目線”と“実践的ノウハウ”を軸に、記録のトレーサビリティを確実に証明するための監査手順について解説します。
なぜ今「記録のトレーサビリティ」が求められるのか?
グローバルサプライチェーン時代の要請
近年、製造業界で取り扱う部品や原材料は世界中から調達され、その取引の透明性や合理性が強く求められています。
単なるコスト削減だけでなく、「どこで・誰から・どうやって」調達したのかという調達経路の正確な証明すなわちトレーサビリティが重要視されています。
これは、脱税・マネーロンダリング・偽装品防止の観点だけでなく、紛争鉱物規制や産地証明義務など、国際規格や法令対応の観点からも無視できない事項になっています。
税関査察で問われるのは「正しい記録」と「説明責任」
税関の主な査察ポイントは、原産地証明、調達経路の透明化、適正な関税支払いの有無、そしてその全てを裏付ける「正確な記録」です。
特に部品点数が多く、生産規模が大きい製造業では、一つでも記録に不備があれば査察官から是正指導や最悪の場合はペナルティを受けてしまいます。
大手メーカーであっても、現場任せ・ベテラン担当者頼みで“記録の空白”が生じやすいアナログ体質が残っています。
これを放置せず、「記録の正当・正確性」をどのように証明し続けるかが、現代のサプライチェーンマネジメントの最大課題といえるでしょう。
基礎から見直す!税関査察対応の監査手順
1. 「紙」と「デジタル」両輪による記録体制の構築
古くから製造業現場では帳票類の紙管理が常態化していますが、これに頼りすぎると保管ミスや紛失、多拠点での情報連携の遅延につながります。
一方、急激なデジタル化(DX)だけを追い求めると、現場の実情と乖離した“現実感のない記録”になる危険性もあります。
最適なのは、「重要な原本は紙で」「日常の確認・閲覧はデジタルで」というハイブリッドな記録体制です。
例えば、納品書・検収書・取引契約書などの法的証憑は、原本の紙を厳重保管し、スキャンして社内ポータルやクラウド上で全拠点が閲覧可能な状態とします。
一方で、部品故障時の伝票や生産履歴、受入検査記録、出荷記録などは現場端末で入力して、後の検索・トレーサビリティを担保します。
2. プロセスの可視化:バイヤー目線と現場目線の融合
記録のトレーサビリティは、バイヤーがサプライヤーに対して要求するだけでは実現できません。
サプライヤー側でも「なぜ求められているのか?」「現場では何が困難なのか?」を理解した上で運用構築することが肝要です。
バイヤーサイドは「記録が正しく残っているか」「遡及して一貫性があるか」など、データの整合性を重視します。
一方で現場サイドは「現実的な入力負荷」「継続的な運用のしやすさ」「混乱を招かない仕組み」を最優先します。
両者の認識ギャップを埋める一つの方法が「流れ図(プロセスマップ)」を使った業務工程の視覚化です。
まず、調達~受入~生産~出荷~税関書類作成までの全体業務フローを整理し、どこでどの記録を誰がどう残しているかを図解します。
このプロセスマップで抜け漏れをあぶり出し、現場とバイヤーが協力して監査手順書を作成・改訂するのが理想です。
3. 記録の整合性:数字・日付・担当者の明確化
税関査察で特によくある指摘内容として、「記録内容の食い違い」「日付があいまい」「誰が記録したか不明」という事項があります。
例えば、
・調達伝票の日付と納品書の日付がずれている
・電子データの入力者名が不明
・帳票に修正跡が多く誰が手直ししたか分からない
などが典型です。
これを防ぐには、各記録に「関係者名」「記録日」「訂正履歴」の三点セットを残します。
特に手書きの帳票は訂正時に「二重線・訂正印・修正理由」を必ず記載し、電子記録は入力履歴を残せるシステムを採用します。
4. サンプリング監査と「現場ヒアリング」の活用
記録の鮮度や運用状態がどうなっているか、客観的に判断する方法として“定期的なサンプリング監査”が効果的です。
具体的には、ランダムに調達記録や出荷記録をピックアップし、「調達元」「日付」「担当者」を照会します。
書類だけでなく、現場担当者にヒアリングを行い「なぜこの記録が必要か」「どうやって残したか」を確認します。
特に“昭和から抜け出せない”アナログ現場では、記録の重要性が現場に浸透していないケースが多いため、ヒアリングを通じて「現場の理解度」を把握し、記録の質向上を図ることが大切です。
未来を見据えたトレーサビリティ体制強化のポイント
紙とデジタルの橋渡し役:現場リーダー・監査担当の育成
トレーサビリティの仕組みが現場に定着するかどうかは、「両輪の理解者」が育っているかによります。
紙文化に慣れたベテラン担当者と、デジタル化を推進する若手が歩み寄り、文書管理・記録運用の両面で調整できる監査リーダーの育成が急務です。
こうしたリーダーが、現場の声を吸い上げ、現実に即した監査手順を策定することで、組織全体の底上げにつながります。
最新事例:ブロックチェーン技術の活用
近年では、調達記録や出荷記録などの真正性・改ざん防止を保証するために「ブロックチェーン」技術の活用が注目されています。
この技術を導入することで、「記録の履歴管理」「複数拠点・取引先間での共有」「リアルタイムトレース」が可能になります。
ただし、現場の運用負荷や初期投資コストの問題もあるため、重要度の高い記録(例えば原産地証明書や契約書)から段階的に導入するのが現実的です。
大手と中小メーカー、また海外サプライヤーなど立場の違いで最適解が変わるので、各社の実情にあった運用設計が望まれます。
発想の転換:「守り」から「攻め」のトレーサビリティへ
従来の記録管理は「トラブル時に備える守り」の姿勢が強くありました。
しかし現在は「記録の正確性」がブランド価値やパートナーとの取引条件に直結します。
「うちはきちんと記録・証明できます」と胸を張って言えるかどうかが差別化ポイントとなっていくでしょう。
また、こうしたトレーサビリティの取り組みは、カーボンニュートラルやSDGs(持続可能な開発目標)への対応、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営への布石にもなります。
まとめ:現場力を底上げし、未来の取引を勝ち抜こう
製造業の現場では、税関査察対応という“表には出にくい地道な業務”が、実はグローバル競争を勝ち抜くための基盤となります。
記録のトレーサビリティを徹底し、監査手順を現場目線で磨き続けることが、企業全体の信頼度アップ、そして未来の取引継続に直結します。
アナログからデジタルへの転換期にこそ、「両方の良さを活かすハイブリッド運用」「現場理解を深めた監査」「組織全体で支える記録体制」の推進がカギとなります。
バイヤー志望の方やサプライヤーの皆様も、「なぜ記録が必要なのか」「どんな証明が求められているのか」を現場感覚で理解し、パートナーシップを強化していきましょう。
現場で培った知見を活かし、“一歩先の記録管理・監査手順”を一緒につくり上げていきましょう。
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