- お役立ち記事
- 仕入先の保全OEEをレビューし停止損の価格転嫁を未然に防ぐ監査
仕入先の保全OEEをレビューし停止損の価格転嫁を未然に防ぐ監査

目次
はじめに:製造業が直面する「見えないリスク」とは
現代の製造業は、グローバルなサプライチェーンが張り巡らされ、多様な仕入先との連携なくしては成り立たなくなっています。
一方で、「昭和的」と言われる、アナログな体質も根深く残っている業界でもあります。
この構造の中で見落とされがちなのが、仕入先の生産ラインに潜む生産性低下や品質トラブルの“予兆”です。
特に、設備保全の弱体化によるOEE(Overall Equipment Effectiveness:設備総合効率)の悪化が、最終的に自社のサプライチェーンリスクへと波及し、いつの間にか価格転嫁要因となることも少なくありません。
このような本質的課題を、事前にサプライヤー監査を通じて見極め、停止損を未然に防ぐことが、今後のバイヤー、購買担当者に求められる「一歩先を行く現場力」だと言えるのではないでしょうか。
仕入先のOEE低下がもたらすリスクとは
OEEとは何か?実践現場における“目の付け所”
OEEとは、「可動率×性能(速度)×品質歩留まり」で算出される、設備の稼働効率を示す指標です。
この値が低下すると、「納期遅延」や「コスト増」につながり、ひいては自社の生産計画や収益構造にダイレクトな影響を及ぼします。
仕入先のOEE数値が下がる主因は、
– 頻発する設備トラブルや故障
– 段取り替え・調整に時間がかかる
– 操作ミスや属人作業
など、日々のオペレーション改善で防げるものが多いのが現実です。
しかし、「昭和世代」の現場文化ではデータ管理や見える化が遅れている企業も少なくありません。
そのため、「表向きの納期遵守」「一時的な外注投入」などで帳尻合わせをしてしまい、本質が見えない場合も多々あります。
OEE低下=コストアップ=価格転嫁の構造
仕入先で発生した停止損(稼働停止による逸失利益、工程混乱)は、本来サプライヤー側の管理責任です。
ところが、現場力が弱い購買・バイヤーの場合、
– 納入遅れや品質異常が頻発し、調達コストが知らぬ間にアップ
– 仕入先からの「原価上昇」の申し出に、合理的な反論ができない
– 長期的には信頼関係悪化やサプライチェーン分断
といったリスクへ発展します。
ときには、ルール改定や契約見直しを申し入れるにも、具体的な根拠がなく、価格転嫁を受け入れざるを得なくなるという場面も。
これこそが、「サプライヤーのOEE低下→停止損(コストアップ)→価格転嫁」という負のスパイラルです。
現場主導の監査で“未来の価格転嫁”を未然に断つ方法
購買がモノ申す!「形だけ監査」から脱却せよ
しばしば製造業で実施される仕入先への監査も、「マニュアル通り・書類通り」で終わることが多いのが現状です。
しかし、OEEや保全に焦点を当てた監査をしっかりと実施することで、その場しのぎの指摘に終わらず、将来のリスク顕在化を予防できます。
具体的には、以下をポイントとしましょう。
– 設備台帳・保全記録の内容と現場実態のズレを徹底チェック
– 稼働データのリアルタイム見える化があるか(IoT化の有無)
– 熟練作業者に依存しない標準作業が整備されているか
– 特定の劣化設備・老朽化の見逃し余地がないか
– 突発トラブルの再発防止策(なぜなぜ分析など)を徹底しているか
こうした実践的な監査は、資料や会議室の説明だけでなく、「現場現物現認」を徹底することが何より重要です。
サプライヤーの本音とバイヤーのコミュニケーション力
監査を単なる“点検”で終わらせず、仕入先の本当の悩みや問題意識を引き出せる関係性構築も大切です。
– 「現場の人間が何を困っているか、一緒に考える」
– 「現場改善に必要な支援(資材、教育、資金など)を提案する」
– 「現技協定(共同改善活動)やQCD会議体を定期的に運営する」
こうした地道な対話が、「価格転嫁やむなし」という受け身ではなく、「一緒に改善してコスト削減・品質維持を両立しましょう」という前向きなパートナーシップに転換できます。
アナログ体質から脱却して工場の“見える化”を支援せよ
昭和的経営と“隠れ残業”が生む非効率の実態
たとえば、現場でよく見かけるのが、
– 継ぎ当て修理でしのぐ「念のため保全」
– 設備停止を隠して稼働簿にだけ“平常”と書かれるケース
– トラブルが表面化しないよう、現場担当が「忖度」してしまう雰囲気
など、アナログ業界特有の「隠れた問題先送り」です。
こうした土壌を改め、「停止理由の根本分析」「損失の定量評価」「現場の声を経営に届ける」仕組みが求められます。
IoTやAI活用で“止まる理由”を徹底可視化
近年、設備データの自動収集や、AIによる故障予知システムの導入が中堅~大手企業では進んできています。
監査時には、こうした技術導入の進捗や、投資判断の現場負担についても率直に意見を交換しましょう。
サプライヤーにとっても、「導入費用」「既存作業の混乱」「人材育成」というハードルがありますが、バイヤー側から
– 設備投資支援の共同申請
– 省力化アイデアの提供
– 複数サプライヤー間のベストプラクティス横展開
など、長期的視点でパートナーシップを築くことが肝要です。
バイヤー・サプライヤー双方が成長する“監査”のあり方
停止損の「見える化」こそ、真の競争力向上
これまでの購買部門は、単に「安く買う」ことを至上命題としてきました。
しかし、供給リスクや生産混乱の回避、工程改善への関与まで踏み込むことが、グローバル調達時代で生き残る条件になっています。
停止損やOEE低下を可視化する監査体制を構築するのは、サプライヤーだけでなく自社の工程にも波及効果をもたらします。
定量的なKPI(OEEの上昇率、ダウンタイム減少率、改善後の品質指標)を双方で共有・評価し、本当の意味での「信頼できる関係」を築き上げましょう。
バイヤーが身につけるべき「現場語」力と“チーム監査力”
製造業の現場は、まだまだ「昭和」「職人気質」「口約束」の文化がしぶとく残っています。
バイヤーには、現場の“語彙”や感覚を理解しながら、
– “監査=指摘”でなく、“監査=共通目標探索”の対話姿勢
– 技術・品質・購買が一体となったクロスファンクショナル監査体制
– 改善活動の小さな成果を評価し続ける仕組み作り
が求められます。
こうした「チーム監査力」は、経験と継続で必ず身につきます。
まとめ:OEEレビュー主導による「強い調達」への進化
価格転嫁を未然に防ぐためには、サプライヤーのOEEや設備保全力のレビュー・監査を、単なる形式的な行為ではなく、「現場と経営、購買と供給者、双方の成長」につなげる実践的なものに進化させる必要があります。
– 仕入先OEEの見える化と保全監査の徹底
– アナログ業界の“現場あるある”に根差した実践監査
– サプライヤーとの共創による工程改善支援
– 停止損の広がりが価格転嫁につながる構造への現場的疑問の提示
– チーム監査力と現場語コミュニケーションの習得
これからの製造バイヤー、調達担当者には「サプライチェーンの現場に寄り添う力」と「リスクの芽を先んじて摘む眼」が一層求められます。
仕入先監査の現場主導改革こそが、業界全体を昭和から令和へとアップデートする突破口となるでしょう。
現場の皆さんが今日からできる“小さな気づき”が、強固でしなやかな「次世代のものづくり」を創る第一歩です。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)