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画像認識検収で荷受け作業を50%短縮し作業者負荷を軽減した自動検品事例

目次
はじめに:製造業現場の“アナログ”課題とは
製造業の現場では、昭和時代からほとんど手法が変わっていない作業が数多く残っています。
その象徴的な一つが、入荷部材の検品、通称”検収”作業です。
伝票を片手に目視や手作業で品目・数量を照合し、場合によっては手書きで記録するというフローが、今なお多くの工場で根強く残っています。
このアナログな検収作業は煩雑かつ時間がかかる割に、ヒューマンエラーを完全には防ぐことができません。
人員不足や作業者の高齢化が進む中で、現場の負担はますます重くなっています。
本記事では、画像認識技術による自動検品の導入により、荷受け作業工数を50%削減し、作業者負担を大きく軽減した先進事例を紹介します。
現状の課題、画像認識導入時の工夫と落とし穴、実際の導入効果、そして今後のサプライチェーン全体の最適化のヒントまで、現場のプロとしての視点から深く掘り下げていきます。
従来の検品作業の流れとその課題
検収フローの全体像
多くの製造業現場では、次の流れで入荷品の検品(検収)が行われています。
1. 納品業者から届いたパレットや段ボール箱を保管エリアに搬入
2. 検品伝票と実物の品名・数量チェック(現物と紙伝票との突き合わせ)
3. 品質確認(大きなキズ・箱潰れ・異常有無など目視確認)
4. 必要に応じて現品票への手書き記入
5. システムへの手入力登録
”人”による目視確認と”紙”を中心としたやりとりが多くを占め、思いのほか多くの手間と時間がかかります。
典型的な課題
日本の多くの工場では「正確性・確実性」を重視するがゆえに、ダブルチェックや多重な記録も珍しくありません。
しかしその一方で、次のような課題が頻発します。
– 現物・伝票不一致による受入ミスや入力ミス
– 作業者ごとの熟練度差によるばらつき発生
– 検品手順がマニュアル化しきれず、属人化
– 作業者の高齢化・人員不足による負荷増加
– 作業の正確さ要求による作業スピード低下
現場目線では「現物を見て人が作業する方が確実だ」という安心感があるものの、属人化や効率面では大きな成長余地を残していました。
画像認識検収による自動化、その本質
最新テクノロジー×現場力の掛け合わせ
画像認識(AIカメラ)による検品自動化は、単にテクノロジーを導入するだけの話ではありません。
現場の人が「これは使える」と納得し、活用し続けられることが重要です。
例えば、バーコードやQRコードを活用した自動読み取りだけでは、箱詰めパターンが多様だったり、ラベル位置・状態にばらつきがあると、従来の端末ではエラー頻発となります。
AI搭載カメラによる画像認識技術であれば、箱の外観やラベル、個々の製品形状も含め、複数の特徴点から自動照合が可能となります。
そのため、現場の“人”が行っていた「目で見て分かる」作業を大幅に代替できるようになりました。
自動検品導入の全体像
画像認識による検収自動化の基本的な流れは以下の通りです。
1. 検収エリアに入荷品を搬入
2. AIカメラで品物の画像を自動的に撮影
3. 画像データから品種・数量・ラベル情報等を自動識別
4. 作業者はシステム表示の確認だけ実施(必要に応じて再撮影や現物確認)
5. 検品結果と仕入伝票データを即時突合・システムに自動記録
驚くほどシンプルな作業で、従来の”人による手作業”を半自動化・全自動化できます。
技術だけでは成り立たない、導入現場の肝
テクノロジーの“導入効果”は、意外にも現場の細やかな工夫に左右されます。
たとえば…
– 「箱の積み方や向き」を一定ルールに合わせて入荷業者に依頼した
– 混載パレットでも“箱のラベル”と“中身サンプル画像”のセットを事前登録
– “難解ラベル”や“特殊形状”は、事前に画像データベースをアップデート
– “明るさ・カメラ位置・背景色”などの撮影環境を標準化
こういった現場での柔軟な改良が、自動化プロジェクトの成否を左右します。
導入事例:画像認識検収で荷受け作業を50%短縮
プロジェクトの全体構想
私の経験した事例では、自動車部品メーカーの入荷検収エリアにAI画像認識システムを導入しました。
主な目的は二つ、
1. 入荷検品作業の工数・工数者負荷の大幅削減
2. 検品精度・トレーサビリティ(記録性)の強化
でした。
プロジェクト開始前に、現場作業の詳細な時系列分析を行ったところ、入荷品のラベル確認や数量照合、紙伝票との突き合わせに大半の時間が費やされていることが分かりました。
システム導入・運用フローの工夫
導入にあたり、以下の順でシステム化を進めました。
– 主要仕入先(部品メーカー)12社からの入荷パターンを全て洗い出し
– 各パターンごとの箱・ラベル・現品サンプル画像をAIに学習させる
– 一部入荷では、「箱向きの標準化」やラベル位置のルール設定を仕入先に依頼
– エリア全体に適切な照明配置・背景統一など撮影条件を最適化
– システム結果を人が簡易チェックする“ワンクッション”導入
現場の混乱を最小限に抑えるため、最初は作業者とAIの“協働”モードで運用し、AI側精度が99%を超えてから全自動運用に移行しました。
導入効果と現場のリアルな変化
画像認識検品導入前後で次のような目覚ましい成果が得られました。
– 荷受け検収作業時間:1ロットあたり平均35分から16分へ短縮(約54%削減)
– 一人あたりの作業負荷(身体的・心理的):大幅低減
– 検品精度:ヒューマンエラー(取り違え・伝票記入ミス)はゼロに
– 不良・異品対策:異品混入や外観不具合も自動判別しアラート化
– データ記録:リアルタイムで検収記録がシステム登録・履歴化される
「伝票の数を数えているだけで腰が痛くなっていたが、今は機械がやってくれるので楽になった」と現場作業者からも高評価を得ました。
また、入荷検品エリアの省人化・省力化が達成できたことで、他業務への人員再配置も実現できました。
現場導入の“本当の壁”とその乗り越え方
抵抗感と納得解を両立させるアプローチ
現場導入で最大の障壁となったのは、現場作業者の「不安」や「納得感」の欠如です。
実際にこういった声がありました。
– AIが100%正しいと思えない、最終的には自分で確認したい
– 「昔からこれでやってきた」と方法を変えることへの抵抗
– 万一ミスが起きた時、責任の所在はどうなるのか?
このため、いきなり全自動にはせず、「人とAIの協働」を経ることで、徐々にAIの精度や有用性を体感してもらいました。
また、「現場要望のフィードバック」をシステム側に即座反映する運用フローを構築し、現場の納得感を醸成しました。
バイヤー・品質保証部門への波及効果
自動化により、検品記録のトレーサビリティが充実したことで、サプライヤー管理やクレーム対応も劇的に効率化しました。
バイヤー目線では、
– 入荷状況や異常検出履歴をPCモニターで即座に可視化
– 仕入先への「エビデンス付き」フィードバック
– サプライヤー側も共通画像データをもとに改善協議ができる
など、サプライチェーン全体の品質・信頼性向上につながりました。
アナログからの脱却、画像認識検収が切り拓く未来
画像認識AIによる自動検品は、従来の「人手」や「属人化」に頼った業務構造を根本から変革するポテンシャルを持っています。
– 「現物を見て確認する」は今後、“人×AI”で複眼的に担う時代に
– 検品業務は“付加価値業務(品質改善、サプライヤー連携など)”へシフト
– 日々蓄積する現場データを活用し、現場-バイヤー-サプライヤーで進化可能
アナログ業務のままでは立ち行かなくなる“2025年問題”(人手不足・高齢化・品質トレーサ)の波を、画像認識検品は現場の力で乗り越える重要な武器となるでしょう。
さいごに:バイヤー・現場・サプライヤーの新しい関係へ
「現場は簡略化し、ヒューマンエラーを抑え、生産性を最大化する」という命題は、どの製造業にも共通する課題です。
画像認識検収の導入は、単なる“作業短縮”だけでなく、全サプライチェーンに生産性革命と新しい信頼構築の道を開きます。
バイヤーを志す方は、こうした現場の進化を「共通言語」として武器にできます。
サプライヤー側も、納得感と生産性向上を同時に実現する新しい競争力を手に入れられるでしょう。
アナログな業界文化が色濃く残る中で、こうしたデジタル変革の現場的実践例が、未来の製造現場の標準となる日も遠くはありません。
現場目線で、地に足のついた自動化。これこそが、製造業の次世代へとバトンをつなぐカギなのです。
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