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缶コーヒーの香りを逃さない脱気・充填・密封の自動ライン設計

目次
はじめに:缶コーヒーの香りを守るという使命
缶コーヒー市場は年々拡大を続け、消費者の「香り」への期待は高まっています。
しかし、コーヒーは酸素や湿気、外部臭によってすぐに香りを損なう繊細な飲料です。
工場の現場では、いかにしてその香りを缶詰に“閉じ込める”かが勝負になります。
昭和世代のアナログなやり方から、デジタル自動化へ——現場のリアルと最前線の知見を交え、真の自動ライン設計に必要な視点を徹底解説します。
コーヒーの香りが消えるメカニズム
香りが逃げる主な要因
コーヒーの香気成分は揮発性が高く、抽出後すぐに空気中へ拡散してしまいます。
特に缶詰充填工程では、コーヒーが外気にさらされるタイミングが多く、知らぬ間に香りが失われています。
また、酸素がコーヒー内部に残存すると酸化が進み、香りだけでなく風味そのものも劣化します。
脱気が不十分であると、この酸化が加工後も缶内部で進行し、店頭で開缶されたときに“もう香りが抜けている”という残念なことにもなりかねません。
現場でよくある「抜け」の原因
・充填前の滞留時間が長い
・脱気タイミングや機構が曖昧
・ラインスピード優先で密封操作が雑
・缶自体や蓋部材の選定ミス
20年以上の経験上、こうした「ちょっとした油断」の積み重ねが香りの劣化を招いている現実を何度も目の当たりにしてきました。
脱気・充填・密封 3大工程のポイント
脱気(Deaeration)工程
脱気は“コーヒー中および缶内の酸素”を極限まで減らす工程です。
代表的な脱気方法には“真空脱気”“窒素ブロー”“温水置換”などがあり、いずれもコスト・スピード・香り保持力のバランスをどう設計するかが問われます。
真空脱気は最も高効率ですが設備投資が高額です。
一方、窒素ブローは既存ラインに導入しやすく、かつ近年は低コストのパッケージソリューションも登場しています。
現場では、香り保持力と導入コストの”最強の落としどころ”を常にリアルに考えています。
充填(Filling)工程
香りを最大限に残すためには「充填タイミングの最短化」が肝心です。
抽出後いかにして短時間で缶へ充填できるかがポイントとなります。
現場では、充填機の直前までコーヒーを密封状態で保持し、しかもライン全体のバッファ時間を最小化するよう設計するのが理想です。
また、充填時の「泡立ち制御」も重要です。泡が多すぎると密封前に酸素が取り込まれ、香りロスに直結します。
泡低減ノズルの設計や、吐出圧力の微調整が必須となります。
密封(Seaming)工程
密封(カーミング)は、コーヒーと外界を完全に遮断する決定的な瞬間です。
ここで密封が不完全だと、いくら脱気・充填を完璧に行っても結局はNGです。
シーム部の機械設定(巻締め圧、速度、治具精度)と、都度の品質チェックを怠らないことが香り保持の王道です。
工場長時代、「密封オペレーターの目と手の感覚」に頼りきっていた時代から、「自動画像解析装置」で品質を一貫管理する時代に移行し、現場の意識改革も指導しました。
自動化ライン設計の具体ポイント
全体最適とローカル最適のバランス
ライン自動化を進めるにあたり、「脱気・充填・密封」各工程の最適化だけでは香り保持には不十分です。
現場の“工数削減”と“品質担保”の二律背反をどこで折り合うか、その思考が問われます。
各工程を全自動化しても、ベルトコンベアのエッジ部分で缶が一時滞留すれば、それだけでせっかくの脱気が無駄になってしまいます。
細やかなラインバランシングと、「つなぎ目」の手作業をいかにして排するか、こうした現場の気づきこそが真の自動化設計の源泉です。
IoT・センサー技術の導入
昨今では、「香りの逃げ」を見逃さないため各種センサーをライン随所に配する設計思想が主流となっています。
代表的なものでは
・酸素残存量センサー
・缶密封状態の画像解析装置
・製品ごとの香気成分のリアルタイムモニタリング
といった装置があります。
しかし、いきなり最先端へのフルチェンジは難しく、昭和世代の技能継承とデジタル自動化をどうハイブリッドするか、導入フローにも工夫が必要です。
工程間コミュニケーションとトレーサビリティ
特定の工程だけが優れていても、工程間でのコミュニケーション不足が香り流出の温床になるケースが多いです。
現場では「コーヒー抽出チーム」「充填ラインチーム」「シームチェックチーム」と分業されていますが、“香り保持”という目的で彼ら全員がベクトルを合わせるトレーニングを怠ってはなりません。
また、後からどこで品質ロスが発生したか特定できるよう、細やかなトレーサビリティ(工程履歴の自動記録)も必須です。
現場の「勘所」をDXに活かす
昭和的な「先輩の目」「手の感覚」も、AIやデジタルで補助できる時代です。
たとえば密封部の“耳障りな音”をマイクとAI解析で検出するなど、古き現場力を“見える化”する新たなテクノロジー導入も増えています。
サプライヤーとバイヤー、それぞれの視点から
バイヤーが重視するポイント
バイヤーは「香りの保持力」「工程安定性」「コスト」「納期順守性」という4つを重視します。
現場経験から強く感じるのは「香り維持のために追加コストがかかるなら、それが販売価格へどう影響するか」を明確に提案すると信頼されるということです。
特に最近は“SNS映え”する開缶時の香り立ちを前面に訴求する商品設計が多いため、意外なほど香り定量データの提出が求められます。
生産現場とバイヤーが早期段階からしっかりコミュニケーションを取り、双方納得のうえでライン設計を詰めることが成功への近道です。
サプライヤーの立ち位置で考えること
サプライヤーにとっては、単に「装置を売る」だけでなく、その装置で実現される“香り体験”まで見据える必要があります。
装置の性能スペックだけを並べても、現場やバイヤーの心は動きません。
むしろ現場で直面する“香り喪失の地味なメカニズム”に入り込んで、課題解決のシーンを共創する姿勢こそが生き残りの鍵です。
また、導入後のトラブルシューティングや、現場スタッフの教育までトータルに提案することで、高いリピート率と信頼につながります。
まとめ:未来の自動ライン像と現場への提言
缶コーヒーの香りを極限まで守る自動ライン設計は、単なる機械の導入勝負ではありません。
「香りは現場全体の総力戦で守るもの」という意識が不可欠です。
今後はIoTやAIの進化で、高度な香り保持ラインが一層身近になるでしょう。
ただし、昭和的“現場の工夫”や“分業の壁”を乗り越えたチーム力と一体化こそが、最終的に付加価値の高い商品を送り出す原動力となります。
バイヤー志望の方は、現場の悩みや苦労を具体的に理解し、香り保持を重視した提案ができる人材を目指してください。
サプライヤーの方は、バイヤーや現場の奥深い悩みに寄り添い、単なる装置提案を超えたソリューション型営業に舵を切ることを強くおすすめします。
昭和から連綿と続く“こだわり”と、最新鋭デジタルの粋を統合し、真に香る缶コーヒーを世界に届けていきましょう。
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