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投稿日:2025年12月7日

工数削減のために入れた自動化が手間を増やす逆転現象

工数削減を目指した自動化導入が現場の手間を増やす「逆転現象」とは

工場の現場では、慢性的な人手不足や生産効率への期待から「自動化」が大きなテーマとなっています。
私たち製造業の現場では、20年以上に渡ってロボット化やIoT活用など、あらゆる自動化施策を何度も導入してきました。
ところが近年、「自動化を導入したはずなのに、むしろ現場の手間が増えた」「楽になるどころか、仕事が増えた」「肝心の工数が逆に膨らんだ」という逆転現象が多発しています。

こうした現状は、決して一部の特殊な現場に限った問題ではありません。
多くの日本の製造業の現場――特に昭和から続くアナログ的な伝統や文化が色濃く残る業種では、似たような課題が積みあがっています。
本記事では、その根底にある構造的な問題、現場目線でのリアルな現状、今後の現場マネージャーやバイヤーが持つべき視点について、これまでの現場経験をもとに深掘りしてまいります。

自動化導入で増えてしまう手間と工数の実態

1. 「自動化で解消できるはずの非効率」は本当に削減できているか

自動化といえば、「人がやっていた作業を機械に置き換えて効率化し工数を減らす」ことが最大の目的です。
確かに、単純な組み立てのような繰り返し作業や、計測・検査のような定型業務においては、効果がはっきり見える場面もあります。

しかし、実際の現場では「自動化設備を稼働させるための準備」「突発的なトラブル対応」「データ管理や報告のための入力作業」など、“本来想定していなかった新たな工数”が想像以上に生まれてしまう場合が少なくありません。

例えば、
– ロボット搬送のエラーに頻繁に現場作業者が駆けつけてリセット作業をしている
– 一台の故障が全体ラインのストップにつながる
– 毎日のデータの手入力や、帳票を自動設備用に書き換える二重管理が発生している
といった現象が典型例です。

また、既存のアナログ工程と新自動化設備が混在すると、「どちらのルールが正なのか」「責任分担があいまい」といった現場の混乱も生じがちです。
意外にも、設備導入前より“現場担当者の目配り”や“小さな調整作業”が増えるケースも多々見られます。

2. 自動化設備の「管理・保守」という見えざる負担

自動化設備は、入れたら終わりではありません。
どんなに優秀な設備でも、メンテナンスや定期的な点検・キャリブレーション・異常時の対応が避けては通れない「新たな業務」を生み出します。

もし熟練した設備担当者が不足すれば、現場の他の作業員に「保守」「清掃」などの雑務が追加されることも珍しくありません。
一方で、メーカー任せにすると費用もかさみます。

また、導入した設備の専任担当が異動や退職でいなくなった時、その機械のノウハウが失われ「誰も全体を理解していないブラックボックス化」するリスクもあり、これは重大な人的工数と組織のレジリエンスに関わります。

3. IT化と現場の「ダブル管理」の罠

自動化・デジタル化というものは、システムと現場実態がことなる速度・粒度で進化してしまいがちです。
そのため、紙ベースの旧来管理と新システム、両方の業務を「とりあえず両立」する“ダブル管理”が起きやすいという実態があります。

その背景には
– 全社共通フォーマットにすぐに切り替えられない
– 客先(バイヤー)から紙帳票の提出が絶対条件
– 部門ごとに移行の温度差がある
などがあり、現場の負荷だけが見えないところで積み上がってしまいます。

なぜ逆転現象が起きるのか?昭和的背景も含めて考察

1. 現場目線の「運用イメージ」不足

自動化導入で手間が増える最大原因の一つは、「現場で実際に誰がどのように機械と向き合い、維持・運用・改善していくのか」という“現場目線の運用シナリオ”が想定しきれていないことです。
図面やプレゼンではいくらでも理想の姿を描けますが、実際の技能伝承や現場独自の調整ノウハウは、なかなか見えない・言語化しにくいものです。

昭和的な工場では、長年受け継がれてきた「人の勘と足で現場を回す」文化が根強く残っています。
ここに最新デジタル設備が突然乗ると、現場からは
– 「自動化は良いけど、ウチのやり方には合わない」
– 「機械が止まったら全部お手上げじゃ困る」
– 「帳票だけ増えて誰が確認するの?」
といった違和感が生じ、結果として運用現場に新たな“段取り替え工程”や“手直し作業”が付加されがちなのです。

2. サプライチェーン・バイヤーと現場の連携不足

製造サプライヤー側は「バイヤーが求める納期短縮・品質向上のために自動化が必要」と考えます。
しかし、導入した自動化技術が本当の意味でバイヤーの期待を満たしているか、その設備で「どの情報を現場がどう取得できるのか」をバイヤー自身が十分理解していない場合があります。

例えば
– バイヤー側が「IoTで稼働率可視化してください」と要請
– サプライヤー現場はデータ収集のため、これまで無かった手順や機器点検を増やす
– 結果的に、現場では手作業や小工数、確認作業が激増する
といった「目的化のズレ」が起こります。

今後のクラウドベースなサプライチェーンマネジメントが進展するほど、現場の負バックヤード業務は増加傾向です。

3. 「自動化導入=万全」と見なす経営・管理層の認識ギャップ

多くの工場で、経営トップやシステム部門は「自動化=自動で動くもの・手間が省けるもの」と考えがちです。
しかし、実際には“新たな専門性の習得コスト”や“現場でのリカバリー工数”、“臨機応変な改善提案”が不可欠になります。

組織がトップダウンで自動化を推進し、「仕組みを入れたから現場は自律的になんとかして!」というスタンスになると、現場管理職やスタッフの負担が一気に膨れ上がります。
ここで現場サイドの「声」を適切に吸い上げず現場が疲弊すれば、逆に生産性低下や人材流出という負のスパイラルに陥るのも、昭和的な固定観念が抜けきらない現場でよくみられる問題です。

製造現場はどう対応すべきか?―新たな業界展望と現実的ヒント

1. 「工数ゼロ化」より「最適な工数バランス」追求へ

今後の工場自動化は、「人が全く介在しないスマート工場」を一気に目指すよりも、「自動化でどこまで人の負担を最適に減らすか」「新たに発生した手間をどのように見える化し削減していくか」という“絶妙なバランス感覚”が成功の鍵となります。

つまり
– 「自動化する意味のある工程」と「人の対応が不可欠な工程」
– 「自動化によって増えた小さな作業」の見える化と現場フィードバック
– 「自動化後に発生した新たな段取りや管理」を洗い出し改善する習慣
を重視しましょう。

2. 真の現場主導・巻き込み型の自動化推進

設備、IoT、AIなどの新規自動化は、「技術主導」でも「経営主導」でもなく「現場主導」で進めるべきです。
現場が主役となり
– 現状の手間・作業フローを徹底的に見える化し
– 設計時から現場担当者(主任・リーダー・作業者)と一体で検討し
– 改善アイデアを試行錯誤しながら反映(PDCAサイクル)
と進めることで、“本当の意味で価値ある工数削減”が実現できます。

最前線のバイヤーやサプライヤーはこの動きに積極的に参加し、現場の声を反映した自動化仕様・情報化要望を共同で設計しましょう。
結果的に両者にとっての「Win-Win」を構築できます。

3. 「自動化の運用フロー」を第三者に説明できるか?

自動化導入の成否は、「誰かがいなくなってもフローを維持できるか」にかかっています。
そのためにも「誰が」「何を」「どう動かす/止める/情報を見る」を標準化し、属人的な業務を解消していくことがポイントです。
また、その成果物(業務フローや手順書)を、バイヤーや協力会社など第三者が見てもすぐ理解できる「共通言語」として整備しておけば、将来的な事業継続力も格段に向上します。

まとめ:自動化は「何を」「誰の負担を」減らしたいのか現場と一体で再定義を

工数削減を目的に導入した自動化が、意図せず現場の手間を増やすという逆転現象は、全製造業にとって抱える現実的な課題です。
昭和から続く日本的な現場文化や、サプライヤー・バイヤー間の構造、トップダウンの経営スタンスなど、多様な要因が複雑に絡み合っています。

今後、製造現場やバイヤーを目指す皆さんには「自動化導入=万能ではない」という前提に立ち
– “現場目線の小さな工数”を見逃さず
– “現実のオペレーション”と理想の姿を行き来し
– “人と機械、工程と情報”の最適なバランスを探り続ける
姿勢が強く求められます。

私自身、現場の泥くさい声・トラブル・葛藤を何度も経験してきました。
現場の知恵と試行錯誤こそが、自動化施策そのものを一段高い価値あるものへ押し上げる力になると確信しています。
これからの製造業が、日本のみならず世界規模で進化していくためにも、現場で働くみなさん一人ひとりが“本当の意味での働きやすさ・工数削減”の実現へ歩んでいけるよう、今後も知見と改善の輪を広げていきたいと考えています。

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