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自動車軽量化を実現する樹脂材料評価と高機能成形加工法応用ポイント

目次
はじめに―自動車の未来と軽量化ニーズ
自動車業界は今、100年に一度の大変革期を迎えています。
CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる技術革新のうねりの中で、既存の開発・製造手法が根本的な見直しを迫られています。
燃費・航続距離の向上だけでなく、CO2排出量削減、環境規制遵守など「軽量化」はこれまで以上にクリティカルな課題となり、材料メーカーと成形加工業者、さらに自動車OEMが三位一体で価値協創を迫られています。
その中で、樹脂材料は軽量化のフロントランナーとして歴史的役割を担う存在になりました。
ですが、日本の製造現場ではいまだに「昭和的モノづくり」のクセや、根強い信頼主義が抜けきれていません。
ここでは、現場に根差した課題・観点と実践的な樹脂材料評価および、成功する高機能成形加工法の応用ポイントを具体的に解説します。
自動車部品 軽量化の全体像と樹脂材料の役割
なぜ「樹脂」がここまで車体軽量化の中心となったのか
自動車軽量化のアプローチは、主に2種類あります。
1つは高張力鋼板、アルミやマグネシウムといった金属材料の進化・多様化による軽量化。
もう1つは従来の金属部品をエンジニアリングプラスチックやコンポジット(複合材)に「置き換える」ことでの軽量化です。
近年の技術革新で、樹脂は単なる内装部品にとどまらず、エンジンルーム、シャーシ、外装など「強度・耐熱性・難燃性」が重要な部位にも活用されてきました。
特にEV・ハイブリッドなどバッテリーや制御機器が増加する現代車両では、1kgでも、いや100gでも軽量化することの価値が日増しに高まっています。
樹脂はそのポテンシャルを存分に発揮しつつありますが、同時に従来の物性評価だけでは対応できない新たな要求性能への“進化”が急務となりました。
なぜ評価と加工が一体化できないと失敗するのか
多くの工場で「材料選定」と「成形加工」が分断され、「カタログスペックで物性十分なら良いだろう」「勝手知ったる金型で成形すれば大丈夫だろう」といった過信・自己流が根強く残っています。
こうした姿勢が、量産試作中に不具合が発覚したり、成形加工で意図した部品剛性や外観が得られなかったりする原因です。
実際、自動車向け樹脂部品の現場では、成形時の流動解析やトライ&エラーを何度も繰り返し、ときに“試問自殺”ともいえるコストと納期のプレッシャーに直面します。
昭和的な「勘と経験」も重要ですが、それだけでトップランナーになれない時代となりました。
自動車用樹脂材料の評価基準と失敗しない選定のポイント
主要な性能指標と評価方法
自動車用樹脂材料の選定では、下記のような物性評価が必須となります。
– 機械的特性(引張強度、曲げ強度、衝撃強度、疲労特性)
– 熱特性(耐熱温度、熱歪み温度、熱伝導率)
– 耐薬品性・耐候性
– 寸法安定性、吸水性
– 可燃性、自己消火性
– 電気特性(絶縁抵抗、誘電率など)
これらの評価はJIS、ISO等の標準規格で測定しますが、実際には自動車メーカーの個別規格や社内基準に即した『現場カスタム』が求められることが多いです。
よくある失敗例として、カタログ数値のみで樹脂材料を選定したものの、量産成形時に「ウエルドラインが弱い」「ヒケがひどい」「寸法バラツキが収まらない」といった課題が露呈します。
成形条件や部品形状によっても材料本来の性能が大きく変化するため、設計段階から量産を意識した「評価選定」の視点が重要です。
バイヤーの本音とサプライヤーが押さえたい商談ポイント
自動車メーカーやティア1バイヤーが求めるポイントは大きく以下です。
– 各種信頼性試験に合格し、かつ安定供給できる材料であるか
– ESGやカーボンニュートラル対応など社会的な要請にマッチしているか
– 突発的な価格高騰リスク・納期遅延リスクにも柔軟に対応できるか
– 成形加工時の歩留まり、量産トレーサビリティの確保ができるか
サプライヤーは「カタログスペックに頼らない」「実際の成形依頼や工程設計段階での歩留まり仮説」「最終部品使用環境での耐久試験」のエビデンスを持参することで、バイヤーの信頼と商談力が大きく向上します。
高機能成形加工法と『工場現場で実現する』応用ポイント
射出成形、高機能複合材(FRP/CFRP)活用の最前線
従来の射出成形では、部品設計上の制限や生産効率(サイクルタイム、歩留まり)が常に課題でした。
ですが、今や「薄肉化」「長繊維強化」「多材料一体成形」といった特殊加工が進み、難易度の高い構造部品へも積極的に活用されています。
特に以下の技術は自動車軽量化現場で成果を上げています。
– 薄肉高速射出成形によるドアパネルや内装部品の超軽量化
– 長繊維強化樹脂(LFT)によるトレッドカバー、サポート部材の高強度・軽量両立
– CFRP(カーボンファイバー強化樹脂)によるサスペンションアーム、スペアホイール用部品の量産適用
– インサート成形や異種材料の多層成形による機能集約化と部品点数削減
現場においては、金型設計段階での流動解析やゲート位置最適化、成形サイクル制御が大きなカギとなります。
変異バラツキを極限まで減らすため、IoT対応の成形機導入や各種センサーによる異常検知も必須です。
アナログ現場だからこそ現れる「樹脂加工の落とし穴」
現場の肌感覚として、「いつものやり方」で妥協し結果的に歩留まりを悪化させる場面が根強く残っています。
たとえば、成形条件のセットアップ時に「温度と圧力の微調整をカンに頼りすぎる」「正規のメンテサイクルを蔑ろにする」などです。
さらに、人手不足や高齢化による技能継承問題も深刻化しています。
IoTやデジタル化が進む一方で、ライン監視やトラブル対応の現場力、一発勝負の立ち上げ対応など「昭和的なアナログ技能」と「最新IT活用」のハイブリッドが不可欠です。
また、不良が顕在化する部品では「不良流出0」の管理強化が重要です。
ここでは、外観検査のみならず、金型内圧/温度のリアルタイム監視や、AIを活用した外観画像検査など、生産現場そのものの自動化・知能化がますます求められるでしょう。
調達・バイヤー視点:良いサプライヤーの選び方とは
調達バイヤーとしては、単なるコスト比較でサプライヤーを選ぶ時代は終わりました。
サプライヤー開発力・不具合対応力・工程設計力・人的技能の有無がますます重視される時代です。
現場ヒアリングや現物確認による「見える化」が決定的に有効です。
– 評価用サンプルの納期、品質レベルを管理できているか
– 量産立ち上げ時の不具合対応スピード、改善提案の質
– 重大クレーム発生時のリーダーシップと責任感
– 提供データや記録が明瞭で、技術担当とのコミュニケーションが円滑かどうか
このようなポイントを押さえれば、安定・低コストだけでなく“持続的な信頼関係”が生まれやすくなるはずです。
今後の業界動向―現場の知見を活かすラテラルシンキング
自動車メーカーからサプライヤーまで広がる「水平思考」
モノづくりの現場では「日常の常識を疑う」態度、いわゆるラテラルシンキング(水平思考)が求められる時代に突入しています。
“この部品は昔からこう作ってきた”、“お得意様の言うことは絶対”というマインドセットも必要ですが、一方で
「本当にその設計がベストか?」
「材料や配合を根本的に見直すことで他社より大きく軽量化できないか?」
「現場の異常データを蓄積・分析し、将来的な不良流出ゼロに近づけないか?」
こうした問いを持つことが、現場リーダーとして組織を導く推進力になります。
また、海外生産拠点やグローバルサプライチェーンの強化、規制強化への対応など、一層多様なチャレンジが不可欠になります。
各現場の成功・失敗に学び、組織横断のナレッジシェアが差別化ポイントとなるでしょう。
「製造業」から「共創業」へ ― これからの現場とバイヤー像
バイヤーも現場も、これまでの「コスト削減中心主義」「品質保証だけの品質管理」から脱却し、サプライチェーン全体で付加価値を生み出す『共創』の姿勢が主流となりつつあります。
そのためには、現場で課題感を共有する「対話力」と、データとヒアリング結果を組み合わせた「総合的な分析力」が武器になります。
バイヤーもサプライヤーも、現場のアナログ感性も大切にしつつ、DX、AI、IoTといったデジタル技術、新素材開発など垣根を超えたラテラルシンキングを発揮することが新たな価値創造のカギです。
まとめ―自動車用樹脂材料の未来と「現場知見価値」の最大化
自動車産業における軽量化は、単なる材料技術進歩だけで実現できるものではありません。
現場での実践的な評価・厳密な管理プロセス・アナログ技能とデジタル化の融合、そのどれもが抜け落ちれば、軽量化の成果は不完全なものとなります。
現場リーダーやバイヤーは、自分の立場や守備範囲にとらわれず、日々の業務・現象を深く観察し疑問を持ち続けてください。
「なぜうまくいったのか」「なぜ失敗したのか」を粘り強く問い直すことが、あなた自身の価値を高め、組織や日本の製造業そのものの進化の起爆剤になります。
自動車の樹脂部品は、まだまだ進化します。
ぜひ現場の知恵と最先端技術、新しい視点の融合が、これからの製造現場をリードすることを願っています。
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