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OEMパーカー製造でのPL法・商標・契約リスクの回避術

目次
はじめに:OEMパーカー製造のリスクと現場のリアル
OEM(Original Equipment Manufacturer)製造は、他社ブランドの商品を受託生産することで、アパレル業界をはじめ多くの製造業で一般的なビジネスモデルです。
中でもパーカーのようなアパレル製品は、多品種・小ロットや短納期の要求が激しく、バイヤー(発注者)もサプライヤー(受託工場)も日々さまざまなリスクと向き合っています。
昭和から続くアナログな商習慣が根強く残る業界において、PL(製造物責任)法、商標権侵害、契約トラブルは企業に甚大な損失やブランド毀損をもたらしかねません。
20年以上製造現場に携わった経験をもとに、バイヤー・サプライヤー双方の実践的な視点、最新の業界動向も織り交ぜながら、OEMパーカー製造に潜むリスクの本質と回避テクニックを解説します。
PL法(製造物責任法)のリスクと現場での対策
PL法とは何か、パーカーOEMでなぜ重要なのか
PL法は、製造業者等が製造・販売した製品によって消費者に人身・財産被害を生じさせた場合、「過失がなくても」損害賠償責任が生じると定めた法律です。
パーカーのようなアパレルでも、例えば染色剤による皮膚トラブルや金具パーツによるケガ、ファスナー欠陥による誤飲事故など、意外に事故リスクが潜んでいます。
バイヤーや受託工場は、顧客の要望に応えるだけでなく、安全性・法令遵守を強く意識しなければなりません。
商品企画段階でのリスクヘッジ
材料選定や加工工程の段階で、「法令や各種規格」「消費者クレームの実例」「事故情報」「第三者認証基準」などを確認しましょう。
特に「どこまで責任分担を明確にするか?」が重要です。
たとえば、支給資材や指定レシピの場合、どちらが責任を持つのか。
タグ・ラベルの注意喚起文言の校正や、意図的なデザイン・仕様変更時のリスク合意。
こうした論点を仕様書・契約書で必ず取り決めておきます。
現場目線でのQC・検品・記録管理の徹底
工程ごとの品質基準をマニュアル化して記録に残すこと、最終検品で「危険部分(フード紐の引っ掛かり・尖った縫製など)」を重点的にピックアップすることがPLリスクの実効的な予防です。
昭和的な「なんとなく大丈夫」や「あの担当者に任せれば平気」という属人化は非常に危険です。
検査記録や標本品の保管、問題発生時のトレーサビリティも徹底する必要があります。
もしもの事故時の備えと保険活用
万全を期しても、事故リスクをゼロにはできません。
そのため、PL保険の加入、保険内容の定期的な見直しは必須です。
また事故発生時の「初動対応マニュアル」を社内浸透させ、バイヤーへ速やかに報告・協議できる体制を作っておきましょう。
商標権・意匠権など知的財産リスクの落とし穴と対応策
OEMでの「模倣トラブル」本当によくあるパターン
パーカーのOEM案件では、発注側から「〇〇のようなデザインで」「有名ブランド風に」という要求が寄せられることが少なくありません。
しかし、既存ブランドのロゴ・パターン・配色・スローガンなどを無断模倣してしまうと、商標権・意匠権などの侵害で損害賠償や取引停止に発展するリスクが高いです。
昭和的な「ちょっとぐらいなら大丈夫」という根拠ない慣行が、現代では大トラブルの火種になりかねません。
現場レベルでチェックできるポイント
バイヤーから依頼されたデザイン案やラフ画を、そのまま作る前に必ず社内・弁理士と確認します。
・社名やロゴが第三者権利に該当しないか?
・タグやパッケージに商標登録済の文言・図形が含まれていないか?
・類似性が指摘された過去トラブルの社内ナレッジが生かされているか?
こうしたポイントを現場で再確認しましょう。
独自性をアピールする場合も、そのデザインが他のブランドと「出所混同」を招かないレベルか、十分に意識が必要です。
バイヤー・サプライヤー間での責任分担の明確化
デザインデータやブランド要素の持ち込み・選定がバイヤー主導だった場合、誰が知的財産リスクを負担するのか、契約書面で明示しましょう。
サプライヤーが「提案」する場合も、同様にリスク説明を十分尽くすことが肝要です。
曖昧なまま進めることで、後々になって「製造業者が悪い」「デザインを出した発注先が悪い」などの水掛け論になることを避けます。
OEM契約締結時に潜むリスク〜現場で見落とされる点
昭和から続く口約束・曖昧合意の危うさ
日本の製造現場では、今も「馴染みのバイヤーだから」「昔からの付き合いだから」などの理由で、契約を口頭や簡素な覚書だけで進めてしまうケースが多いです。
しかし、パーカーのOEMでは多くの工程と多重下請けが絡み、トラブル発生時には責任の所在が曖昧になりがちです。
納期遅延や追加コスト、品質基準の解釈違い、残材処理や返品、不良品対応など、現場でよく起きる揉めごとの多くは、契約書の不備や不完全なリスク共有が背景にあります。
契約書の実践的なチェックリスト
・製造物責任(PL)に関する責任分担と保険体制
・知的財産権に関する責任範囲と対応方法
・品質レベル・納入条件・検品方法などの明文化
・仕様変更、追加・中止・キャンセルの取り扱い
・納期遅延や不可抗力発生時の対応シナリオ
・紛争時の協議・解決手順や準拠法の明示
これらを項目ごとに確認し、実務で想定されるリスクをできる限り言語化します。
特に小規模サプライヤーでは弁護士のチェックが手薄な場合も多いので、バイヤー側は説明責任、サプライヤー側は自社の弱点を明確に把握することが重要です。
現場管理職ができるリスク防止策
現場の管理職~課長や工場長が、法務・営業・生産管理との橋渡し役を果たし、リスク案件の初期相談ルートをつくることが効果的です。
現場視点の「本当によくあるトラブル」と、契約の抜け穴が一致していれば、実践的なリスク防止に繋がります。
また、社内でケーススタディ・勉強会を実施し「トラブル時に原点に戻るポイント」を備えておきましょう。
最新の業界動向:デジタル化とグローバルリスク
デジタル時代のリスクと昭和的商習慣のギャップ
AIやIoTによる生産監視、オンラインでのサプライヤー選定やデザイン共有が急速に広がっています。
一方で、発注・受託~納入まで「紙伝票」「電話やFAX」「口頭伝達」が根強く残る現場も多く、記録の不備や意思疎通の錯綜が、リスクの温床です。
今後は「デジタル証跡が残るしくみ」と「アナログ現場の肌感」の橋渡しがより重要となるでしょう。
グローバル化による契約・PL・ブランドリスク
海外発注・海外委託製造の比率が高まっていますが、現地法規や品質基準の違い、言語・文化ギャップをあらかじめスクリーニングすることが必須です。
特に欧米企業との取引では、PL事故や知財侵害に対する損害賠償のスケールが日本国内より遥かに大きいので、リスクヘッジの緻密さが求められます。
まとめ:OEMパーカー製造時、今できる「リスク回避術」
・PL法、商標権、契約リスクはアナログ商習慣ではなく、現代的なリスクマネジメントとして徹底する
・バイヤー・サプライヤー双方で、契約時にリスクの洗い出しと明確な責任分担を必ず行う
・現場視点のQC・記録・報告徹底で、万一の際に初動対応・証跡を整備する
・デジタルとアナログのギャップを意識し、時代に合わせた証跡・確認体制を整える
製造業の発展は一人ひとりの「気づき」から始まります。
OEMパーカーくらい…という一歩を、「リスクの芽を摘む現場力」に変えて、安心できる商流・製造現場をみんなで創り上げていきましょう。
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