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特大貨物の道路占用許可・回送許可の取り忘れによる積替え費の回避

特大貨物の道路占用許可・回送許可の取り忘れによる積替え費の回避
はじめに:特大貨物輸送の落とし穴
特大貨物を輸送するにあたって、多くの現場担当者や調達バイヤー、サプライヤーが見落としがちなポイントの一つが「道路占用許可」「回送許可」の取り忘れです。
とりわけ製造業では、生産設備や大型部品、特殊車両など、規格外サイズの貨物を工場や現場間で動かすシーンが少なくありません。
ところが、行政や道路管理者の許可申請が適切に行われていない場合、現場で急きょ積替えが発生したり、想定外の長期停留費・積替え費が発生したりします。
このようなミスは、コスト増だけでなく、納期遅延や信用失墜にも直結します。
この記事では、私自身が20年以上の製造業経験で痛感した「許可取り忘れ」の実情と、その予防策、そしてアナログ主体の現場でも実践できるノウハウをわかりやすく解説します。
特大貨物とは?まずは基本の確認
特大貨物とは、通常の貨物車両では運ぶことのできない、道路交通法で定められた特殊な条件を超える貨物を指します。
たとえば、車両の長さ、幅、高さ、総重量が下記の規格を超える場合、警察や道路管理者への事前申請・許可が必要です。
- 長さ:12.0メートル超
- 幅:2.5メートル超
- 高さ:3.8メートル超
- 重量:20トン超(車種・状況にもよる)
この許認可なしに特大貨物を運搬する場合、道路交通法違反となる可能性が高く、罰則や貨物輸送の中止を命じられることもあります。
つまり “許可申請” は特大貨物輸送の最重要工程と言えるのです。
許可取り忘れの現場実態――なぜ起こる?
20年以上の製造現場経験を通じ、私は何度も「許可取り忘れ」が引き起こす悲喜こもごものドラマを目撃してきました。
特に昭和から続くアナログ体質の現場では、以下のような理由で“うっかりミス”が生じやすくなります。
- 経験者依存:ベテランの属人的な知識頼りで、手続きがブラックボックス化している
- マニュアル未整備:手順が明文化されず、引継ぎや標準化が不十分
- 調達~現場間の連携不足:輸送スケジュールだけが先行し、許可取得が忘れられる
- 「いつも大丈夫だった」慢心:過去事例からの油断。規制が変わっていても気付かない
- 下請け頼み:運送会社側が許可を出すと思い込み、サプライヤー・バイヤーが仕組みの全貌を把握していない
特に調達購買部門やバイヤー、中小サプライヤーでは、製造現場と物流現場の「壁」が根強く、責任分界点も曖昧になりがちです。
その結果、「手配したが、積載直前に許可が降りていないことが判明」「現場入口で立ち往生」「緊急積替え連絡が入り高額な費用発生」といった痛い目に遭うのです。
積替え対応で発生する実際のコスト
許可取り忘れ→積替え発生、このプロセスでは以下のような実費・間接費が累積します。
- 積替え作業員・重機の手配費用(数万~十数万円)
- 余分な運搬車両・新規許可申請費
- 日程変更による逸失利益・人件費
- 工場側でのラインストップや生産遅延の損失
- 最悪の場合、顧客やサプライヤーとの信頼失墜
特大貨物の場合、単なる配送遅延以上に「工程全体の組み直し」「製造ライン全体への影響」といった重大リスクが隠れています。
経験の浅いバイヤーやサプライヤーこそ、細部への配慮が必要です。
どこに許可申請するのか?現場での具体的手続き
特大貨物の許可申請は、運送ルート、貨物サイズ、通過自治体数によって大きく異なります。
主な関係機関は以下の通りです。
- 警察署(道路使用許可)
- 国土交通省・都道府県の道路管理者(道路占用許可・特殊車両通行許可)
- 高速道路会社(NEXCO等で特殊車両許可)
- 自治体ごとにルールが異なるため、全ルート分で一括チェックが必須
特に“回送許可”と呼ばれるものは、積み下ろし後に空車で帰る場合にも再申請が必要なケースがあります。
「往路は許可取得済み、復路は未申請だったために途中で止められて帰れなくなった」など、些細な手違いが大きな問題に発展することもあります。
アナログ現場でも使える“抜け漏れ防止”ノウハウ
ベテラン頼みのアナログ業務でも、次のようなシンプルな工夫で許可取り忘れを未然に防げます。
- チェックリスト方式の導入(手配担当・運送会社・現場ごとの“相互確認欄”を設ける)
- 「許可取得証」のコピー/PDF化を設置現場や工場長へ必ず送付・掲示
- 許可申請の進捗を共有するグループメール・LINE・チャット
- 1週間前・前日など、決まったタイミングで“再確認”担当を設定(属人化の排除)
- 「許可未取得時の緊急連絡フロー」を全体周知する(積替え発生時の段取りを事前明確化)
IT化が進んでいない現場こそ、こうした“アナログの見える化”が有効です。
バイヤー・サプライヤー側が積極的にチェックを徹底することで、責任の所在もはっきりし、運送会社任せの“あいまいリスク”を回避できます。
現場と調達・購買の連携強化が必須
製造業の現場では、「購買と物流、さらに生産現場の三者連携」が許可申請の正確さを大きく左右します。
とりわけ調達・バイヤーは「積載貨物のサイズ情報・運送区間・希望納期」などを、漏れなく詳細に物流部門や運送会社へ伝達する責務を持っています。
また、工場長や現場責任者が“許可取得済み”を確実に確認し、納品日時に問題がないことを全員で共有する必要があります。
このプロセスを怠ると、「社内外での責任転嫁」「再手配による余計な費用」に繋がります。
サプライヤー視点での注意点:バイヤーの優先事項を知る
サプライヤーの立場から見ると、「許可申請はバイヤーまたはエンドユーザーの責任か?」と思うかもしれません。
しかし実際は、「届け先の現場が一番困る」「納期に穴を空けると契約トラブルになる」といったバイヤーの心理を理解した上で、許可の確認を“おせっかいなくらい”徹底することが信頼構築のポイントです。
たとえば、見積段階で「特大貨物の許可申請に伴うリードタイム」「申請費用」が発生することを伝える。
発注後にも「この貨物は特殊車両通行許可が必要です」とリマインドすることで、バイヤーの“思い込み手配”を防止できます。
長期取引では、「許可申請と工程管理はワンストップ」で提案できるサプライヤーほど次の案件獲得につながります。
まとめ:現場の声を生かした“未然防止”でコスト&信用を守る
特大貨物の道路占用許可・回送許可は、製造現場において「コスト削減」「納期遵守」「信頼維持」を実現するための“最後の砦”です。
昭和的な属人・アナログ文化が残る工場であっても、現状を可視化し、責任の所在を明確化することで失敗リスクは確実に減少します。
調達購買、バイヤー、サプライヤーのいずれも、現場・物流・関係官庁との連携を大切にして、「許可申請」という地味だが重要な工程を“仕組みで守る”意識が重要です。
数千万円規模の生産設備が“たった一枚の書類のミス”で止まるという現実を忘れず、積替え費・遅延コストをゼロに近づける――。
これこそが「真に現場目線で考える製造業バイヤー・サプライヤー」への第一歩です。
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