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備蓄品の種類選定で現場意見が割れる背景

備蓄品の種類選定で現場意見が割れる背景
現場と経営層、それぞれの立場に存在する溝
工場や製造現場における備蓄品の選定は、調達・購買や生産管理、現場オペレーター、品質管理部門など、さまざまな立場や職種の意見が交錯しやすい課題です。
「これだけは切らしたくない」
「いや、コストの無駄になる」
「実績があるし、変える必要がない」
「これからは自動化で、このパーツは不要だ」
現場からは日々こうした声が漏れ、狭間で調整を迫られる担当者は困惑しがちです。
なぜここまで備蓄品の種類選定で意見が割れるのでしょうか。
その背景には昭和的な「経験則重視」と、IT化や最適化といった新しい潮流の間で揺れる製造業独特の文化、役割ごとの責任範囲や情報格差、そしてリスクに対する心理の違いが複雑に絡んでいます。
なぜ備蓄品は必要なのか〜リスクと安定供給のバランス〜
備蓄品=在庫は、単純な“余剰”ではなく生産活動におけるリスクマネジメントの一部です。
突発的な設備トラブルや納入遅延、天災によるサプライチェーン寸断など、さまざまな事象が発生します。
そこで「このパーツがなければ、今夜の生産が止まってしまう可能性がある」という危機感が現場の判断基準となる一方、経営層や購買部署は「過剰な在庫=資金の滞留、コストの増加」と捉えがちです。
サプライヤー側から納期の安定化に自信があっても、バイヤーや現場では「本当に信じていいか」という“疑い”が付きまとい、一度トラブルがあると極端に反発が強くなります。
このように、安定稼働とコスト抑制という“表裏一体”の課題が備蓄品選定の議論を複雑にしています。
現場が「絶対必要」と信じる理由~経験則と属人化の功罪~
昭和時代から続く製造現場では、いわゆる“ベテランの勘と経験”が根強く信奉されています。
例えば「10年以上トラブルなく使ってきた部品だから、もしもの時のために必ず2セット置いておきたい」「昔こんなトラブルがあって大混乱したことがある」といった、現場独自の“物語”が備蓄品選定の根拠となる場面は少なくありません。
しかし、この“伝承”がサイロ化(縦割り意識)の温床となり、なかなかデータドリブンな合理化や、部門を超えた標準化が進みづらいのも事実です。
工場長や課長といった職責者も自身の経験則を重視し、記録や分析データよりも「自分の肌感」を優先することが多くあります。
そのため、客観的には“ほぼ使わない部品”でも「いざという時のため…」と備蓄され続け、棚や倉庫に眠る“死蔵在庫”と化すケースが後を絶ちません。
これが現場意見の強硬な一因です。
調達・購買目線:コストミニマムと需給リスク
一方、調達購買部門は在庫最適化によるコスト削減、キャッシュ・フロー向上が大きな目標です。
「過剰備蓄=お金が在庫に寝かされる」として、現場の“念のため在庫”を排除したいのが本音です。
近年はSAPやERP、需要予測AIなどデジタル化が進み、数値にもとづいた在庫管理や発注点管理の導入が進んでいます。
この流れのなかで
「過去データを見ると、この備品は1年に1個も動かない。なら0で良い」
「今後は自動化ラインに切り替わる。過去使ったからといって、今後も同じ需要があるとは限らない」
こうした指摘が現場の“経験値主義”と衝突します。
調達購買部門としては、計画発注や適正在庫の考え方を徹底しつつ、現場の声もすべて無視できない――この二律背反に悩みながらも、全体最適を探る必要があります。
サプライヤーから見た「備蓄品選定」のリアル
一方、備品や部材を納入する側(サプライヤー)は、バイヤーがどこに重きを置くのかを見極める必要があります。
「最近、現場から在庫圧縮の要望が強い」
「発注頻度が急に減る」
「前年割れが続く品目は、そろそろ切られるか」
こうしたバイヤーの心変わりを敏感に捉え、自社の需要予測や提案内容を変える準備が求められます。
一方、「あの会社は現場の声が非常に強く、ちょっとした納入遅延でも激しく反発される」など、現場主導型の企業風土を理解することが、安定取引や商談継続につながります。
サプライヤーとしては、バイヤーの調達方針(コスト重視、安定重視、現場主導型など)を常にウォッチし、臨機応変な提案を行う力が求められます。
なぜ意見のすり合わせが難しいのか?
このように、
・現場の経験や心理的安全(不安解消)
・調達購買の経営的合理性
・サプライヤーの戦略的提案
が渾然一体となり、なかなか一筋縄で行かないのが備蓄品選定の実情です。
加えて、情報共有の不足や、部門間の風通しの悪さ、過去の失敗(トラブル)への“トラウマ”などが影響し、
「どうせ自分たちの意見は通らない」
「購買は現場を分かっていない」
「現場のワガママに従ってばかりでは会社が持たない」
といった、対立構造が根付いてしまいがちです。
業界動向~昭和的アナログ文化を打破できるか~
日本の製造業は、戦後の高度経済成長期から平成にかけて「現場主導」の伝統で発展してきました。
特に中小〜中堅企業では、いまだに「記録より記憶」「勘と経験」のカルチャーが色濃く、「とりあえず置いておけ」「万一を考えて2倍持つ」など、備蓄に“安全バイアス”がかかっています。
一方、グローバル化・情報化の波が押し寄せ
・Just In Time(必要なものを、必要な時に、必要な量だけ)
・SCM(サプライチェーンマネジメント)の導入
・DX(デジタルトランスフォーメーション)
といった動きが大企業から中堅クラスにも広がりつつあります。
これにより「見える化」「共通ルール化」「属人性からの脱却」が徐々に進み、備蓄品の選定でも“透明な議論”やデータにもとづく意思決定が根付き始めています。
とはいえ、依然として「ベテランの説得」「現場感覚と経営合理性の融合」には地道な努力が必要です。
解決のヒント~現場目線×データ×対話力~
備蓄品の種類選定で現場と購買、双方の納得解を導くには、次のようなアプローチが有効です。
1. 「見える化」と「説明責任」
在庫データや払出・不具合履歴、設備停止リスクなど、客観的データを“見える化”し、納得を得やすい資料・根拠とすること。
2. 現場ヒアリングと対話
ベテランの「過去に何があったか」「どこに不安を感じているか」を丁寧に聞き出し、それらを“数値化”や“再発防止策”に置き換えて分析する。
3. 最低必要数の合意
「絶対切らしてはいけない在庫(クリティカルパーツ)」と「多少の納期調整が効く品目」を区別するルール作り。
4. サプライヤーとの情報共有
納期保証や緊急時対応、納品頻度などをサプライヤーと緊密にやりとりし、現場の不安を和らげる。
5. トライアル施策の導入
「まずはこの部品で安全在庫削減を試してみる」など、段階的に現場理解を得るステップを踏む。
こうした地道な積み重ねが、バイヤー・現場・サプライヤーの信頼関係を築き、「経験とデータ」が融合した備蓄品選定を可能にします。
まとめ:備蓄品の議論は“組織力の鏡”
備蓄品の種類選定で現場意見が割れる背景には、リアルな経験に基づく“現場感覚”と、データやコスト管理を重視する“購買・経営層意識”の対立構造が深く根付いています。
一方で、現場から声を拾い、数字で理解を促し、サプライヤーを巻き込んだ“対話型マネジメント”を根気強く続けることこそ、今後の日本製造業が真に強くなる道です。
歴史を大切にしながら、新しい技術やロジックを取り入れ、「備蓄品の議論」を自社組織力改革の出発点にしていきましょう。
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