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オリジナル商品づくりで後悔しないための原価とブランドのバランス感覚

目次
はじめに:オリジナル商品が脚光を浴びる理由
今、製造業の現場でオリジナル商品開発への関心が高まっています。
背景には「自社だけの強み」で市場競争力を持ちたいという企業の思いと、コモディティ化が進み他社との差別化が難しくなった現状があります。
一方、オリジナル商品を手がける際には必ず「原価」と「ブランド」という両輪の調和が問われます。
このバランスを誤ると、単なる赤字プロジェクトや市場で埋もれる商品を延々と生産する羽目になりかねません。
本記事では、昭和のアナログ体質を受け継ぐ現場目線と、最新動向を交えた視点から、原価とブランドをどう考え、どのようにバランスを取るべきかを解説します。
バイヤーを目指す方、現場担当者、サプライヤーなど、モノ作りに携わる全ての方に、現場で本当に役立つ実践内容をお届けします。
オリジナル商品の原価設計、そこに潜む落とし穴
1)安易なコストダウンのリスクとは
オリジナル商品を開発すると、標準品よりどうしてもコストが高くなりがちです。
設計変更や新たな金型投資、小ロット生産、付加価値のための素材選定など、イニシャルコストやランニングコストが膨らみやすいからです。
そのため「どうやってコストを下げるか?」と考える上司や経営層も多いでしょう。
ここでありがちなのが、「安い材料を探す」「協力工場に値下げ交渉をかける」といった表面的な対応に走ることです。
このやり方では、現場の片隅で埃を被る“在庫の山”や“想定外の品質トラブル”につながりやすいです。
特に昭和から続く“コスト至上主義”が色濃く残る企業では、「コストカット=正義」となり、本来払うべき価値への投資が軽視されやすくなっています。
2)原価は“積み上げ型”で決めない
多くの現場で“コスト積み上げ型”で売価を決める習慣が根強くあります。
つまり、「材料費+加工費+経費+利益」で最終価格を決定するやり方です。
しかし、現代の市場は「価値で価格が決まる」時代です。
あくまで“お客さまが感じる価値”を起点とした“逆算発想”で原価と価格を設計しなければ、商品は市場に受け入れられません。
たとえば、「これくらいの付加価値があるなら2万円払ってもいい」と思わせることができれば、1万5千円の原価でも売れるのです。
逆に、積み上げ式で原価を1万円に抑えたところで、価値が感じられなければ1万円でも売れ残ります。
“価値で価格を決め、逆算して原価を設計する”という現代的な手法を意識しましょう。
ブランド力を高める投資:なぜ原価以上の価値になるのか
1)ブランド = 単なるロゴやデザインではない
「ブランドを意識しよう」と言われると、「パッケージをお洒落に変えよう」「ロゴマークを新しくしよう」といった“表層的”な施策に終始しがちです。
現場でよくあるのは「品質は標準品と大差ないけど、パッケージだけ格好良く仕上げました」といった事例です。
しかし、ブランドとは「継続的に顧客から信頼され、選ばれ続ける価値の総体」です。
独自のストーリーやビジョン、見えない品質(アフターサービス、エンジニアの情熱など)こそが、ブランド力を底上げする要素となります。
ブランド力が上がれば、ローコスト原理主義の競争から抜け出せ、原価を上回る価格で評価される商品が生まれるのです。
2)ブランド強化のために現場ができること
オリジナル商品では、「なぜ、この仕様にこだわるのか」「どんな現場試験・工夫をしたのか」といったストーリー作りそのものが、ブランド価値に転化します。
たとえば、「従来の規格とは逆発想の素材をあえて使い、高温・多湿な現場でも壊れない信頼性を実現した」など、現場担当者の汗と知恵がブランドの“証明”となります。
実際、欧州車や日本の一部高級家電などは「見えない作り込み」を武器にブランド価値を高めています。
「現場だけが知っている工夫」や「量産の裏に隠された地道な改善」の物語を、積極的にブランド訴求へと活かすべきです。
原価とブランド、現場目線でバランスをとる実践ノウハウ
1)最初に“価値ピラミッド”を作る
企画段階で「この商品、誰が、どこで、どう使って、どこに価値を感じるのか?」を突き詰めましょう。
価値ピラミッド(たとえば、最低限必要な機能→便利機能→顧客の感情に訴える体験価値)のイメージを明確にします。
これにより、ただ安く作ることより、本当の投資ポイントを見極められます。
安価に仕上げて利益率を高めても、顧客価値の中枢が抜けていれば、売れません。
逆に、小さな投資でも、強烈な付加価値ポイント(他社が真似できない安全機構や異常検知アルゴリズムなど)を創れれば、それがブランド資産となり、価格競争に巻き込まれにくくなります。
2)“見積もり精度”の見極め方:厳しさと柔軟さのバランス
現場の購買部門やバイヤー経験者から見ると、「サプライヤーの見積もり」は極めて重要です。
一方、単に「値下げできる/できない」の判断だけではいけません。
本当に価値が伴っていれば、標準品より高い原価でも積極的に採用できる目利きを持つべきです。
また、サプライヤー側も、「なぜその原価になるのか」「どんな品質を守るためなのか」をロジカルに語れる要素を磨いておく必要があります。
これが、正当なバリューとして受け入れられるかを、現場―バイヤー間でしっかり議論しましょう。
消耗的な値下げ競争は、結局どちらも疲弊させるだけです。
3)“部分的な自動化”と“こだわり人手作業”のいいとこ取り発想
昭和から続く工場では、熟練工の手作業や勘が重要な価値を生んでいました。
一方、現代は自動化・省力化が要求されます。
この二律背反していますが、両者をうまく組み合わせる発想こそがオリジナル商品の持続的競争力につながります。
たとえば、「90%は自動化したが、最後の10%だけは熟練工の組付けで完成精度を高める」といったアプローチです。
“全部自動化”より“価値の源泉になっている部分だけ人手”を残す…という発想の転換が、多くの現場で新しい成功パターンを生み出しています。
バイヤーから見た「選ばれる条件」とは?
バイヤーや調達担当者として仕事をする場合、単に「安く調達する」ことが目的ではありません。
付加価値・品質水準・安定供給・将来競争力…これら多面的な“中長期的メリット”を見抜く力が重要になります。
「目先のコストダウン要請」より、サプライヤーと組んだ新たな価値創造(新仕様の共開発、小ロット多品種の敏速生産、新しい素材の共同実験等)が、結果として調達成果にも直結します。
ひいては、取引先サプライヤー側も「自社技術・自社ノウハウ」をしっかり訴求し、「この会社とならオリジナル商品でブランドを磨ける」と信頼される関係づくりが肝要です。
まとめ:昭和から令和、そしてその先へ
昭和的な原価意識や“ものづくり現場主義”には、多くの強みがありました。
しかし今、「価値で価格が決まり、ブランド力が利益を生み出す」時代に進化しています。
オリジナル商品開発においては、「原価圧縮」だけを追うのではなく、「どこに、どんな価値を創りたいか」を徹底的に突き詰めることが成功のカギです。
バイヤーもサプライヤーも一緒になり、この“バランス感覚”を現場実践に落とし込むことで、時代を超えたものづくりの新しい地平線を切り拓くことができるでしょう。
あなたの現場でも、ぜひこの考え方を取り入れてみてください。
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