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有限要素法による伝熱解析の基礎講座

有限要素法による伝熱解析の基礎講座
はじめに:ものづくり現場と解析技術の関係性
製造業、特にものづくりの現場では試作や量産立ち上げ、品質トラブル対応、新技術導入まで、多様な課題に日々直面します。
その現場の意思決定を一段上のレベルに引き上げるツールとして、解析技術の活用は極めて重要です。
今回取り上げる「有限要素法(FEM)による伝熱解析」は、現場感覚と理論をつなぐ橋渡しとして、またデジタル化が進む今こそ価値が見直されています。
有限要素法(FEM)とは何か
有限要素法は、複雑な構造や現象を「小さな部分(要素)」に分割して、その微小な部分の物理現象を数式で記述し、全体の挙動をシミュレーションする手法です。
言い換えると、「現場で見ている大きな困りごと」を「分割して小さな単位で積み上げることで全体像を把握する」という考え方が本質です。
昭和の現場では職人の勘や経験に頼ってきた部分が多くありましたが、近年はこのFEMを使い、「なぜこうなるのか」を科学的・論理的に再現できるようになりました。
伝熱解析とは―現場の悩みを解き明かす切り口
伝熱現象とは、熱が伝わる一連の物理現象(熱伝導・対流・放射)を指します。
現場でよくある例を挙げると、鋳造金型の冷却、ICや半導体パッケージの熱設計、樹脂成形品の変形防止、食品工場の加熱・冷却効率化、など多岐にわたります。
特に昨今は、「省エネ」「高品質」「サステナブル」など多様な観点で熱処理や冷却設計の最適化が企業競争力に直結しています。
伝熱解析は、試作レス・初期不良率低減・トラブルシュートなどで現場改善の“武器”となるのです。
有限要素法による伝熱解析の基本的手順
1. 問題設定(モデリング)
設計・現場担当者が「どの場所で何度の温度になるか知りたい」「どこに冷却水路を入れれば最適か」といった目的を明確にし、解析対象(部品・装置・材料)や条件を設定します。
2. ジオメトリ作成・要素分割(メッシュ)
CADデータや手描き図面をもとに解析モデルを作成し、数㎜~数十μmオーダーで小さな「要素(メッシュ)」に分割します。
メッシュが細かいほど結果精度は向上しますが、計算機負荷も大きくなるため、「どこを細かく・どこを荒く作るか」は現場経験が光るポイントです。
3. 物性値・境界条件設定
材料の熱伝導率、比熱、密度、外部からの熱流入や放熱条件(空冷・水冷・断熱など)を設定します。
材料メーカーのカタログ値だけでなく、経年変化や工程ばらつきを加味した「現場の現実値」を意識することが信頼性の高い解析のカギです。
4. 計算実行→結果評価
シミュレーションを流し、温度分布・熱流束データを得ます。
基本は「現象を理解」し、「改善ポイントを発見」し、「現場にフィードバックする」ことが目的です。
有限要素法伝熱解析の具体的な効果と実例
1. 金型冷却設計の最適化
射出成形やプレス金型で「冷却時間短縮」「歪み防止」「不良率低減」を両立するため、FEMで冷却配管の設計や冷却効率を数値化・最適化するケースが増えています。
2. 電子部品の熱設計(過熱防止)
ICやパワーモジュールの基板レイアウト、ヒートシンク・放熱フィンなどに伝熱解析を用い、「真夏の車載環境でも壊れないレベル」に設計を追い込み、コストダウンと品質向上を両立しています。
3. 食品業界の加熱/冷却システム
食品の加熱・冷却プロセスでむらを防ぎ、均一な品質や省エネを実現できます。
食品・医薬品の現場でも導入事例が拡大中です。
思考法としての“現場力×数学力”
有限要素法は「コンピュータ任せのブラックボックス」と受け取られがちですが、現場で真に役立てるには“数学力”と同時に“現場力”が不可欠です。
例えば、現象が単純熱伝導なのか、熱流体/複雑な多層体/可変物性体なのか、現場特有の知見がないとモデル構築時に「現実との解離」が起こりやすいです。
また、解析結果を鵜呑みにするのではなく「現場観察」と「定量的シミュレーション」をセットで回す現場主導サイクルが成果へ直結します。
製造業のデジタル化:昭和の現場からの脱却
いまだに「ノギスと目視チェックと紙帳票」「ベテランの経験が唯一の頼り」といった昭和文化が根強く残っています。
しかし、デジタル化・自動化推進の流れのなか、有限要素法に代表される「シミュレーションベースの検証と設計」への移行は待ったなしの課題です。
この流れに乗り遅れると、グローバル競争力の低下、若手技術者のやる気喪失・人材流出、現場トラブルが繰り返される悪循環に陥りかねません。
一方で、シミュレーションを現場に根付かせることで「短納期・多品種化」にも迅速対応しやすく、技能伝承のアップデートにも繋がります。
バイヤー/サプライヤーの視点:解析力が調達購買を変える
バイヤーを目指す方や、サプライヤー側で購買担当の意図を理解したい方にとっても、有限要素法による伝熱解析の視点は強力な武器になります。
例えば、見積依頼時に「標準品では温度超過が懸念される」「冷却能力に根拠ある設計になっているか」を解析で検証しておけば、無駄な調達・不良コストを下げられます。
また、サプライヤー側も「当社の伝熱設計は、FEM解析で最適化済み」と自信を持ってアピールできれば、値段勝負になりがちな取引で技術的優位と信頼を確保することができます。
まとめと今後への展望
有限要素法による伝熱解析は、現場視点とマス計算・解析力の融合により、製造業現場の「なぜ?」を解き明かし生産性・品質・納期・コスト・サステナビリティまで多面的な課題解決につながります。
いまだ昭和的な「勘と経験」が支配的な製造業界でも、FEM伝熱解析を根付かせることで、一歩進んだ現場作り、日本のものづくり復権に貢献できるでしょう。
「新しい解析技術は難しそうで踏み出せない」と思う方も、小さなテーマからトライし、現場で起きている課題を自ら数値で“見える化”する体験からスタートしてみてください。
きっと工場や現場の見え方が大きく変わり、新たなイノベーションや自信へと繋がっていきます。
現場発、“考える力”で未来のものづくりを切り拓く。
それが有限要素法伝熱解析活用の醍醐味です。
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