- お役立ち記事
- ろ過の基礎と用途に基づいた最適なフィルター選定法およびトラブル防止策
ろ過の基礎と用途に基づいた最適なフィルター選定法およびトラブル防止策

目次
はじめに 〜製造現場を支える「ろ過」の真価〜
製造業における「ろ過」は、単なる異物除去の手段にとどまらず、生産効率や最終製品の品質を決めるまさに“縁の下の力持ち”です。
高度な自動化技術が進歩する一方、現場では今なおアナログ的な課題やノウハウが脈々と残っています。
ろ過工程は設備投資やコストの最適化だけでなく、不具合予防、工程改善という観点からも極めて重要な領域です。
本記事では、ろ過の基本原理、用途に応じたフィルターの選定ポイント、さらに誰もが直面しがちなトラブル事例とその未然防止策について、20年以上の現場経験から得た知見をもとに解説します。
バイヤーや調達担当者、供給側(サプライヤー)視点も意識しつつ、「なぜ最適選定が重要なのか」「失敗しないために現場で何を見極めるべきか」を具体的にわかりやすくお伝えします。
ろ過とは何か? 〜その役割の本質を理解する〜
異物除去からプロセス最適化まで、多様な役割
ろ過とは、液体や気体から固形物や不純物を取り除く一連の過程を指します。
製造現場では、加工作用に供される冷却水や潤滑油、洗浄液、化学薬品、あるいは純水・純ガスなど、使用媒体ごとに制御する粒子サイズや濾過精度が異なります。
従来型の一般的な「目詰まり=大敵」とした使い捨てフィルターの考え方から、メンテ性や再利用を意識したカートリッジ型・バッグ型・自動逆洗型など多様な方式が選択肢として並ぶようになりました。
特に近年は、廃棄コスト削減やSDGsの観点からリユース対応タイプや、運用工数を減らせるスマートフィルタリング技術の導入が進んでいます。
ろ過不良がもたらすリスク
ろ過の失敗が直接的に引き起こすリスク例は、以下の通りです。
・生産設備の目詰まり、ポンプの破損、機器停止によるラインダウン
・製品歩留まりの悪化や品質不良(外観異物、寸法ばらつき、機能不良)
・最終製品クレームや納入停止、対策コストの増大
・法規制(ISO等)への非適合
目先のイニシャルコストの安さや「とりあえず現状維持」の発想で、ろ過工程を軽視してしまうと、年単位で莫大な損失につながる可能性が高いことを再認識する必要があります。
ろ過フィルターの基礎知識 〜構造・原理・素材を理解する〜
主なろ過方式
(1)表面ろ過
フィルターの表面で粒子を捕捉します。ストレーナーやメッシュ型フィルターが代表例で、大きな異物・ごみの粗取りに適しています。
(2)深層ろ過
繊維や多孔質体の内部で粒子をトラップしながら通過させます。不溶性異物や微細粒子の除去に効果的で、多くのカートリッジフィルターがこの方式を採用しています。
(3)膜ろ過
高分子膜を用い微細レベルで精密に分離します。精度区分にはミクロフィルトレーション、ウルトラフィルトレーション、ナノフィルトレーション、逆浸透(RO膜)があります。半導体・医薬・飲料など高純度要求用途で活用されています。
主要フィルター素材(メディア)の特徴
・金属(ステンレスメッシュ等):溶剤耐性・高強度・リユース性に優れる
・不織布(ポリプロピレン、ナイロン等):安価・多目的・使い捨て向き
・セラミック/シリカ:耐薬・微生物除去に強い
・高分子膜:選択透過性が高く、精密ろ過に特化
使用媒体、液温、化学薬品への耐性、取り除きたい粒子径や流量等を基準に、最適な素材と構造を見極めることが肝要です。
用途別・最適フィルターの選び方 〜実践的な判断基準〜
1. 工場用水・循環の粗大異物除去
冷却塔や配管の異物詰まり予防には、ストレーナーやメッシュ型バッグフィルターの導入が一般的です。
粒子径で数百μm〜1mmクラスのごみ・藻対策を重視します。
頻繁な清掃が発生しやすいため、自動洗浄機能や抜き差し交換の作業性も考慮すべきポイントです。
2. 部品洗浄・管理への対応
精密部品や成形品の脱脂・洗浄工程には、数μm単位から、近年ではサブミクロン領域までの高効率なカートリッジフィルターや膜ろ過方式が求められます。
洗浄液の浄度維持が歩留まりや後工程(塗装・組立・接合)に及ぼす影響を理解し、再生可能なフィルターの選択や交換サイクルの最適化が課題となります。
3. 塗装・コーティング・接着など液体管理
塗装ブースなどでは毛羽立ちや金属片などごみの混入防止が不可欠です。
バッグフィルターや多段カートリッジシステムによる段階的ろ過、耐溶剤性フィルター材の選択、流量変動を踏まえた圧損管理も重要です。
4. 化学薬品・特殊流体への対応
薬品・溶媒の純度管理では、材質選定(耐薬品性・非反応性)と抜け落ちしやすい微粒子・ゲル状物質のトラップ性能が鍵となります。
PTFEメンブレンやセラミックタイプなど特殊フィルターを積極的に検討しましょう。
フィルター選定で失敗しないためのプロセスとチェックリスト
作業現場を知り抜いた調達・バイヤーの判断ポイント
(1)現場プロセス+保全側との連携
ろ過の仕様選びでは、調達・購買担当者だけの判断で決めるのはリスクをはらみます。
設備保全担当、現場の作業者、製造技術や品質管理部門、サプライヤーとの四者連携が不可欠です。
(2)「最適フィルターは唯一無二」ではない
流体条件、設置スペース、メンテサイクル、交換作業性、トータルコスト(本体+消耗品+作業時間)、品質保証…様々な観点を多元的に評価する必要があります。
(3)バイヤー&サプライヤー視点の着眼点
・現場実地検証(テスト設置やサンプルろ過)による妥当性検証
・納期・調達安定性(サプライチェーンリスク分散)
・国内外規格・食品衛生・ISO対応など各種認証対応
現場ヒアリング・仕様書レビューの必須チェックリスト
1. ろ過対象の流体情報(液体/気体/粘度/温度/化学組成/流量/圧力)
2. 除去対象の粒子径と濃度(最大・平均サイズ、流入量のばらつき)
3. 使用頻度・連続/断続運転・停止タイミング
4. フィルター設置スペース・交換方法(自動/手動/スペア数)
5. コストバランス(本体+消耗品+保守作業+廃棄コスト)
ろ過の実際例 〜“本当にあった失敗談”からの現場ノウハウ〜
トラブルケース1:予想外の目詰まりによるラインストップ
現場で多いのは、粗めのストレーナーのみで十分だと見積もり、微粒子(例えば工場内塵埃や金属粉体)の高濃度流入を見落とした事例です。
2〜3ヶ月で頻繁な目詰まり・フロー低下が発生、交換頻度が想定比2倍以上となり、定期保全計画も狂いコストアップ…。
この場合、事前の流体シミュレーションやプレフィルター設置(二段階ろ過)で解決できるケースがほとんどです。
トラブルケース2:フィルター材質不適合による溶出・異臭事故
安価な汎用品を採用した結果、熱交換ラインで樹脂製フィルターが高温・一部薬品で溶解し、製品異臭&PPM異常で出荷停止。
素材の選定や認証取得品導入、初期テストでの確認不足が招いた典型的な失敗例です。
どんなにコストメリットがあっても、必要な耐薬品性・温度耐性・衛生規格をクリアしたものを選定しましょう。
トラブル未然防止のために現場でできること
設計段階:ろ過に「安全マージン」と「拡張性」を持たせる
安易なコストダウン競争ではなく、ろ過経路に余裕を持った設計(バイパスラインや増設可能性の確保)を意識しましょう。
ろ過能力は数年後の増産・製造条件変動も見越して計画するのがポイントです。
導入・運用段階:見逃しやすい「目詰まりのサイン」に注目
・圧力損失値(ΔP)の日常管理
・流量・液温・色調の変化
・小さな修理や通過漏れの「予兆」共有
データに現れにくい兆候も現場作業者が最初に察知する場合が多いです。
早期情報共有→保全担当への迅速な対策が、設備事故・クレーム未然防止の要となります。
バイヤー&サプライヤーが知っておきたい最新トレンド
・IoTセンサ連携によるフィルター自動監視システム
・環境負荷低減(リサイクル型、再生フィルター、廃棄物削減対応材質)
・フィルター内蔵ポンプや統合モジュール化による省スペース設計
・国内外サプライヤーの動向把握、非常時の代替品調達体制
最新技術動向をキャッチアップすることで、ろ過選定で「後手に回る」リスクを回避できます。
まとめ 〜「あたりまえ」の見直しが現場力を高める〜
ろ過工程の重要性を“現場の当たり前”と過小評価せず、工程の最適化・トラブル未然防止の視点で常に見直すことが、ひいては企業の競争力強化につながります。
この記事で紹介した基礎知識やフィルター選定法、トラブル防止の現場ノウハウは、調達バイヤー、現場作業者、サプライヤーの誰にとってもすぐに活かせる内容です。
「もっと良くできる」「まだ改善の余地がある」という気付きが、昭和型アナログの殻を打ち破り、真の現場力アップをもたらします。
今日からぜひ一歩、実践してみてください。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)