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サイズプレスで使われるアプリケータ部材の基礎知識

目次
はじめに:サイズプレスとアプリケータ部材とは
サイズプレスは、紙やフィルムを始めとした製造業において、コーティングや表面改質の目的で使われる重要な装置です。
この装置の性能や生産効率を大きく左右するのが、アプリケータ部材です。
本記事では、現場で20年以上の経験から得た知見をもとに、アプリケータ部材の基礎知識と選定・管理のポイントを解説します。
サイズプレスの基礎理解
サイズプレスの役割
サイズプレスは、主に製紙やフィルム関連の工場において「サイズ液」と呼ばれるコーティング液を紙やフィルム表面に薄く均一に塗布する装置です。
サイズプレスの質が製品品質を左右するため、アプリケータ部材の状態や選定は極めて重要になります。
サイズプレスの主な方式
サイズプレスには機械的構成や運転方式によっていくつかのタイプがあります。
代表的なものは、ロールタイプとブレードタイプです。
– ロールタイプ:2本のローラー間で基材にコーティング液を塗布します。
– ブレードタイプ:ブレードで余分な液を掻き取り、規定量を薄く均一に塗布します。
現場では、基材やサイズ剤の特性によって最適なタイプと部材を選定します。
アプリケータ部材の基礎知識
アプリケータ部材の役割
アプリケータ部材は、コーティング液を基材に均一に塗布するための「手」となる部品です。
主な部材は下記です。
– ロール(ラバー巻き/スチール製)
– アプリケータロッドやワイヤーロッド
– ブレード(金属製や樹脂製)
– ドクター部材(余剰液を掻き取る)
これらは物理的接触や化学反応、摩耗など過酷な環境で長期間働き続けるため、耐久性と精度が極めて重要です。
また、最近ではデジタル制御や自動化要素も組み合わさり、部材の選定がより高度化しています。
アプリケータロッドの種類と特徴
– ワイヤーロッド:細いステンレスワイヤーをらせん状に巻き付けた棒です。
塗布膜厚を精密にコントロールできます。
– スムーズロッド:表面が平滑な金属ロッドで、比較的厚めの塗布に適しています。
ワイヤーロッドは緻密な膜厚制御、スムーズロッドは大きな膜厚変化に強みを持ちます。
どちらも摩耗や変形の管理がカギとなります。
ブレードの材質と寿命
ブレードは塗布液を均一化し、余分を除去する役目を担います。
材質はステンレス、カーボン、樹脂などが一般的です。
– ステンレス:耐久性に優れる反面、硬くて基材傷つきに注意が必要
– カーボン:軽量で摩耗に強いが、コストは高め
– 樹脂:基材へのダメージが小さく、敏感な用途や試作向き
ブレードは消耗品であり、摩耗すると形状が崩れ、加工精度や品質に重大な影響を及ぼします。
現場では、定期的な交換や適切な管理が重要です。
アプリケータ部材の選定ポイント
基材との相性を最優先に
基材の種類によって、最適なアプリケータ部材は大きく異なります。
– 紙:繊維密度や平滑度で部材を選ぶ
– フィルム:樹脂ごとの溶剤適合性や滑り性
– テキスタイル:表面の凹凸や吸収性を考慮
確実な膜厚コントロールや表面品質の維持には、実証試験やサプライヤーとの綿密な打ち合わせが必須です。
サイズ剤の化学的特性との適合
サイズ剤(コーティング液)は水系・溶剤系・UV系など様々です。
成分による腐食や膨潤、凝集への耐性を持った部材を選ぶ必要があります。
– 腐食性:ステンレスSUS316など高耐食材を選ぶ
– 溶剤攻撃性:フッ素加工や樹脂コーティング品を活用
– 洗浄性:分解・再組立が容易な設計が望ましい
最初はコスト優先で安価な部材を選定しがちですが、後工程でのトラブルや歩留まり低下を考えると、トータルコストで検討するのが賢明です。
現場目線から見たアプリケータ部材の課題
アナログ現場の実態と課題
製造業の多くの現場、特に“昭和スタイル”を色濃く残す企業では、アプリケータ部材選定や管理が担当者の経験や勘に依存しているケースが未だに多いです。
– 部材の磨耗チェックが目視や手触りのみ
– 交換サイクルが従業員ごとの“慣習”まかせ
– 不良発生時に根本原因が追えない
こうしたアナログな体制は、部品メーカー側が「これなら間違いない」と勧める定番品へ頼りがちとなり、現場特有の改善・新技術導入が遅れがちです。
サプライヤーとして参入したい側も「まず現場の生の声」に寄り添い、価値提案を考えることが成功への近道です。
デジタル化・自動化への潮流
最近ではIoTセンサーや自動診断機能によって、
– 摩耗度(リアルタイム計測)
– 温度や荷重の異常検知
– 交換時期の予測(AI分析)
などを導入する先進工場が増えています。
「まだまだウチには早い」と尻込みする企業も多いですが、部材のライフサイクルコスト(LCC)や歩留まり向上に直結するため、段階的にでも自動化・管理の見直しを進めることが肝心です。
アプリケータ部材管理のポイント
ベストプラクティスの共有
– 定期点検と交換記録の標準化
– 交換周期の「数値化」と根拠付け
– 部材ごとの摩耗履歴のデータベース化
これらを実現するためには、現場作業者と技術部門、そして本社管理部門が連携して「組織的なルール化」を目指すことが重要です。
要員ごと、シフトごとのばらつきを極力なくし、「誰でも再現できる現場管理」が理想です。
サプライヤーとの協働による現場改善
サプライヤーは単なる部材納入者にとどまらず、「現場の品質パートナー」としての役割が強調されています。
アプリケータ部材の形状や仕様変更、スペック最適化に際しては、現場の“困りごと”を共有し、一緒に現場改善を推進する姿勢が求められます。
「テストサンプルの無償提供」「現場データを用いた効果シミュレーション」「現場スタッフへのトレーニング支援」といった取り組みは、双方の信頼関係を強固にします。
今後のアプリケータ部材選定に求められる視点
SDGs・ESG時代の新要素
環境配慮やサステナビリティ(持続可能性)は、あらゆる調達・購買活動で重要な指標となってきました。
アプリケータ部材においても、
– リサイクル可能な素材
– 長寿命化で廃棄物削減
– 生産時のCO2排出低減
といった観点での選定・運用が不可欠です。
サプライヤーに対しては「環境配慮型新素材の提案力」や「LCA(ライフサイクルアセスメント)情報の開示力」が求められます。
現場力×テクノロジーが生む新たな付加価値
これからのアプリケータ部材は、「現場力」と新技術の融合による付加価値創出がポイントとなります。
AIやビッグデータ解析による“最適な運用提案”、予知保全までを含めた「コンサル型部材ビジネス」も出現しています。
– 部品データの可視化
– 交換タイミングの自動通知
– 遠隔地でも一元管理
こうした仕組みが導入できれば、調達バイヤーや工場経営者には大きな武器となるでしょう。
まとめ:アプリケータ部材の知識が現場を変える
アプリケータ部材の理解と最適化は、製造品質や生産効率、さらにはコスト・環境両面のパフォーマンス向上につながります。
現場からはじまるイノベーションの第一歩として、いま一度アプリケータ部材の基礎知識を体系的に学び、最新動向やベストプラクティスにも常に目を向けていきましょう。
サプライヤーもバイヤーも、事業環境が激変する「今」こそ、共に新しい価値を作っていくパートナーです。
枠組みにとらわれない自由な発想と、技術と現場をつなぐラテラルシンキングで、持続可能なものづくりの進化を目指しましょう。
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