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中小工場が海外企業と取引を始める前に準備すべき国際契約の基礎知識

目次
はじめに:中小工場の海外取引、その第一歩の難しさと可能性
近年、中小製造業でもグローバル市場を視野に入れた動きが活発になっています。
「うちの製品をもっと海外に売りたい」「海外の部品メーカーと仕入れ先の多角化を図りたい」など、海外との取引を検討する現場の声は枚挙にいとまがありません。
しかし実際に踏み出そうとすると、どこから手を付けて良いのかわからず、契約書を前にして思考が止まってしまう経営者も少なくありません。
グローバル調達、グローバル販路開発という言葉の華やかさとは裏腹に、国際契約の基本的な理解がないまま話を進めてしまうと、想定外のリスクを抱え込むことになります。
本記事では、製造業の現場経験と管理職目線の視点をもとに、アナログ本位な業界でも必ず押さえておきたい「国際契約の基礎知識」を分かりやすく解説します。
なぜ国際契約の準備が重要なのか?
口約束や慣習だけでは通用しない
日本国内の取引では、工場同士の長年の付き合いや「信頼の積み重ね」で成り立つ、いわば昭和的な商習慣がまだ色濃く残っています。
しかし相手が海外企業になると、文化も常識も異なり、「言った、言わない」というトラブルが頻発します。
特に近年はサプライチェーンの多様化や自社のグローバル化が加速しており、取引リスクも複雑化。
このため、事前に十分な契約書面でのすり合わせとリスクの可視化が不可欠となります。
リスクの種類:納期、品質、知財、為替変動…
例えば納期の認識違い、品質基準の誤解、検収・検品方法の不一致、知的財産権の侵害、実際の決済手段や現地法令への未確認など、日本国内の取引とは比べ物にならないほどの多様なリスクが潜んでいます。
また国際契約書は英語が主流となるため、「雛形を翻訳して何となく署名してしまった」では取り返しのつかないケースも多々発生します。
国際契約において最低限知っておきたいポイント
1.契約の種類とその位置づけ
国際取引でよく用いられる契約形態には、売買契約(Sales Agreement)、秘密保持契約(NDA)、技術供与契約(Technology License)、代理店契約(Distributor Agreement)などがあります。
最初の一歩としては、売買契約とNDA(秘密保持契約)を正しく理解することが肝要です。
NDA無しで見積・仕様提示を繰り返すと、自社の競争力の源泉を流出させてしまうリスクに直結します。
2.インコタームズ(Incoterms)で把握する決済・引き渡し条件
国際取引における「誰がどこまでの責任を負うのか?」を理解する基準として、「インコタームズ」が国際慣行となっています。
FOB(本船渡し)、CFR(運賃込み)、DAP(仕向地持込渡し)など、一見アルファベットの略語に過ぎませんが、物流・保険・関税・リスク負担の範囲を全く違ったものにします。
インコタームズの基本を、ミスなく押さえておくことは絶対条件です。
3.言語と準拠法、紛争解決方法
契約書に記載する言語(日本語、英語など)、どこの国の法律(準拠法)に従うか、紛争発生時の解決手段(裁判、仲裁など)は、後の大きなトラブルを左右する重要項目です。
ここを曖昧にしたまま契約に調印してしまうと、日本法で通用する前提のまま権利行使ができなかった…という事例も珍しくありません。
契約書を作成・チェックする上での現場的な視点
現場目線で考えるリスクシナリオ
・仕様変更が発生した時の対応(費用負担、納期調整)はどうするか
・納品時の検品基準の定義は数値化されているか、客観的か
・品質クレーム時に何をどこまで補償するのか(再製作、返品、修理など)
・不良発生時の賠償限度額や、不可抗力条項(Force Majeure)の有無
このような現場ならではの事象を、契約条文内でどうカバーするかが失敗しない秘訣です。
特に中小工場では、1回のクレームで経営が傾く例が現実に多発しています。
契約書の英語表現に惑わされない
直訳した日本語やGoogle翻訳だけで「意味は何となく通じているだろう」と思い込むのは、大変危険です。
契約英語には独特の表現や慣用句が多用されており、一単語の違いでその後の解釈がまったく異なることもあります。
一文一文の意味を現場目線で点検することで、将来的な解釈リスクを最小限にできます。
アナログ業界だからこそ求められる“段取り”と体制づくり
「雛形コピペ」からの脱却
バイヤーや営業担当者がネットで拾った「英文契約書の雛形」をコピー&ペーストしている現場は意外と多いものです。
しかし自社の取引実態やリスクプロファイルに合った契約書でなければ、守るべきものを守れません。
業界団体や専門家が提供するテンプレートを参考にしつつ、自社の現場課題や経験則も盛り込んで文言調整を行うことが重要です。
法務部門や外部専門家との連携強化
中小工場では、法務・総務部門が弱体化しているケースも珍しくありませんが、「契約リスクは最終的に経営が直接負うもの」だという理解を持つことが先決です。
すぐに社内リソースが不足する場合は、外部の国際法務専門家やコンサルタントの活用も積極的に検討してください。
「餅は餅屋」です。
バイヤー目線・サプライヤー目線で考える国際契約の実践ポイント
バイヤーが重視するポイント
・コストだけでなく、品質・納期・サポート体制もしっかり評価
・サプライヤーの約束が守られない場合の補償内容
・予防策としてのNDAや品質保証条件の明記
・納期連絡、仕様変更時の迅速な連携
サプライヤーが押さえたい心構え
・リスクの全体像(為替、関税、輸送リードタイム等)を可視化したうえで、無理な条件には絶対に合意しない
・現地の法規制やカスタムに精通する専門家とのネットワーク構築
・初回の取引は少量・短納期など、小さく始めて“信用の蓄積”をつくる
・想定外の事態(パンデミックや戦争含む)への不可抗力条項の挿入
今後の動向と中小工場に求められる新しい視点
グローバルサプライチェーンは、地政学リスクや次世代テクノロジー、サステナビリティ要件の強化によって急速に変化しています。
昭和的な“顔と信頼”だけでは渡り合えないフェーズに入っていることを、まず現場で共通認識にすることが第一歩です。
海外取引はリスクも大きいですが、同時に今までと比較にならないほどの「新たな市場」や「技術・情報」の流入をもたらします。
国際契約はそのゲートウェイ = 入り口です。
チームみんなで知識を共有し、自ら“契約を武器にする”意識改革が今こそ必要とされています。
まとめ:中小工場が今できる、現実的なステップ
1. 海外取引時のリスクポイント(納期、品質、知財、法的責任)を可視化する
2. 必要最低限の契約雛形(売買契約、NDAなど)を社内で整備・理解する
3. 英語契約書の基礎用語や表現、“読解力”を現場で共有し合う
4. 業界団体や外部専門家を活用、分からないことは必ず聞く
5. 初回取引は小さく始め、信用を着実に積み上げていく
中小工場だからこそ、小回りと誠実さで、世界市場へ一歩踏み出せるチャンスがあります。
国際契約を正しく理解し備えることで、グローバルビジネスの成功確率を大きく高めることができます。
現場目線で地に足のついた準備を今日からはじめましょう。
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