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アパレル業界で求められる“サステナブル素材”の基礎知識

目次
アパレル業界におけるサステナブル素材の重要性とは
近年、アパレル業界において「サステナブル素材」が強く求められるようになっています。
いまや世界のモノづくりは、環境への配慮や持続可能性が標準となりつつありますが、日本国内の工場や下請け業者の現場では未だ昭和的な慣習やアナログな文化も根強く残っています。
しかし、グローバルサプライチェーンの大転換や消費者意識の急速な変化が、大手メーカー調達担当者(バイヤー)やサプライヤー(メーカーや加工業者)の役割に大きな影響を与えていることは間違いありません。
ここでは、まさに生産現場で培った知見とバイヤー視点を融合しながら、アパレル分野で今後必ず不可欠となる“サステナブル素材”の基礎を実践的に解説していきます。
サステナブル素材とは何か?背景と潮流を理解する
サステナブル素材の定義
サステナブル素材とは、環境への負荷を減らし、資源の持続的利用や循環を目指した原材料とその加工法の総称です。
一般に下記のような特徴をもちます。
– 原料に再生・再利用資源や植物由来素材、生分解性素材などを活用している
– 生産・流通・廃棄プロセスでCO2排出や水、化学物質の使用量を抑えている
– 労働環境やフェアトレード(倫理的調達)にも配慮している
このような素材は、衣料品の製造・販売・流通を担うあらゆるサプライチェーンの現場で、地球規模の課題解決とブランド価値向上の両軸として急速に導入が進んでいます。
なぜサステナブル素材が今、ここまで求められるようになったのか
アパレル業界は長年、多量生産・大量廃棄のビジネスモデルを主流としてきました。
ですが、「ファストファッション」の台頭による環境被害(過剰生産、原料の浪費、CO2排出、マイクロプラスチック問題)が、世界的な問題となりました。
省エネルギー社会、SDGs(持続可能な開発目標)、ESG投資(環境・社会・ガバナンスへの配慮を評価する投資)の流れや、Z世代の価値観の変化なども重なり、素材から見直すことが不可避となっています。
実際、世界的ブランド各社が「2030年までに全製品の80%以上をサステナブル素材に切り替える」と宣言したり、量販店バイヤーが下請けサプライヤーに対して「再生ポリエステル使用率」「オーガニック認証取得」などを調達条件とするケースが極めて増えています。
日本国内の中小アパレルメーカー、縫製工場なども今や無視できない現実です。
代表的なサステナブル素材の種類と特徴
再生素材(リサイクル素材)
– リサイクルポリエステル:回収したペットボトルや廃棄衣料を原料に再生
– リサイクルナイロン:漁網、カーペットなど産業廃棄物から再生
– 再生ウール・再生コットン:裁断くずなど生産過程の残渣を再利用
大量廃棄・環境負荷への直接的な対応策として、欧米大手では標準装備化されつつあります。
ただし、原材料回収・選別・再生リサイクルのバリューチェーンが確立していない地域・業者ではコスト高になりがちです。
生分解性・バイオマス素材
– オーガニックコットン:農薬・化学肥料を極力使わず栽培された綿花
– テンセル(リヨセル):ユーカリなど成長の早い木を原料とした再生繊維
– PLA(ポリ乳酸):植物由来原料の合成繊維、生分解性を有する
– 麻(リネン、ヘンプ):比較的少ない農薬・水で栽培可能な天然繊維
これらは原料調達から生産段階まで環境負荷低減に貢献しますが、手触りや耐久性、価格、流通規模など、従来素材とは異なる特性を理解し活用する必要があります。
アップサイクル素材・資源循環型の新興素材
– 食品廃棄物や残渣由来繊維(レモン繊維、コーヒーかす、ミルク繊維など)
– 合成皮革に代わる新規バイオレザー(きのこ由来、パイナップル由来)
– 微生物によるセルロース繊維や次世代バイオ樹脂
量産性やコストの壁はあるものの、アイコン的なコレクションや販促、SDGs戦略のシンボルとして引き合いが続く分野です。
バイヤーが注目する調達・認証・トレーサビリティのポイント
グローバルサプライチェーン管理と認証の重要性
単なる「環境配慮型素材」選択だけでなく、今や「どのようなプロセスで調達・製品化されたのか?」という全体の見える化(トレーサビリティ)が極めて重要になっています。
代表的な認証例は以下です。
– GRS(Global Recycled Standard):リサイクル素材含有率の認証
– GOTS(Global Organic Textile Standard):オーガニック繊維製品の認証
– FSC認証:森林管理された木材由来素材の証明
– OEKO-TEX:有害物質不使用を保証するエコラベル
現場では「証明書がなければ、大手バイヤーからの調達条件を満たせない」という状況が年々増しています。
実務上のハードルと対応策
– 中小縫製・染色工場では、こうした認証取得コストや手間が大きな障壁と感じられがちです。
– 原材料仕入先の段階から情報を確認し、一次加工業者や仲介業者へのヒアリングの徹底が必要です。
– ITツールやクラウド管理でサプライチェーン全体の記録・共有を推進する企業も増えてきました。
課題感は根強いものの、「サステナブル素材×認証×トレーサビリティ=新規受注獲得・ブランド力向上」の方程式を意識することが求められる時代となっています。
サステナブル素材導入のメリット・デメリット
メリット
– ブランドバリューや商品差別化に直結し、価格競争からの脱却が図りやすくなる
– 取引先大手メーカーや海外バイヤーからの新規調達・サステナブル納入枠獲得につながりやすい
– SDGs経営やESG投資アピールにより優秀な人材が集まりやすい
– 消費者からの信頼度向上、販促時の話題づくりになる
デメリット
– 原材料コストや加工工程で従来より割高になりやすい
– サプライチェーン全体の情報管理・証明取得の手間が増える
– 独特の物性や風合い、生産条件の制約から従来技術の見直し・追加投資が必要
– サステナブル素材の定義が年々変化・進化していることによる対応の難しさ
現場目線では、ペーパーレス化やIoT活用による一気通貫的な「素材起点からの生産管理」が、喫緊の課題となっています。
サステナブル素材時代に求められる調達・生産・品質管理の実務ポイント
調達の観点
– 原材料生産地の情報、複数サプライヤーからのバルク購入体制の確立
– サステナブル素材の納期遅延リスクを見越した在庫管理や工程平準化
– 認証対応のための証拠書類や工程管理マニュアル作成
生産・品質管理の観点
– 蒸し工程や染色など原料ごとに最適な条件を細かく標準化
– 従来素材では生じなかった物性トラブル(毛羽立ち・型崩れ・変色)の事前リスク評価
– 従業員教育、作業マニュアルのアップデート
バイヤーとのコミュニケーション
– サステナブル素材や認証取得の進捗状況を定期的にフィードバック
– 消費者向けストーリー(どんな素材で、なぜこの商品か)の資料提供
– トラブル発生時の早期情報共有と原因究明、改善策の提示
こうした「素材を起点にした一気通貫型の現場対応力」が、今後の競争力の分岐点となります。
今後のアパレル業界の未来と、現場が取るべきアクション
サステナブル素材は単なる一時的な流行ではなく、「繊維業界の本質的なパラダイムシフト」です。
昭和から続く慣習や“今までの当たり前”にとらわれている場合ではありません。
– まずは、社内の小さな改善(省エネ機器導入や記録簡略化)から着実に始める
– 新たな素材や工場設備を小ロットから試験的に導入し、現場のナレッジ・データを溜める
– 地域の組合や異業種連携を活用し、サステナビリティ関連の補助金・認証申請を共同で進める
バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤーのニーズを掴みたい方にとっても、「素材・生産管理・流通・認証」までの現場知見と課題意識が、今後の成長ドライバーとなります。
サステナブル素材の正しい理解と現場実践こそが、アパレル業界に新たな未来をもたらします。
まとめ:サステナブル素材の基礎知識を現場に活かすために
アパレルのサステナブル素材は、単なる言葉や流行ではなく、製造業全体を変えていく本質的なテクノロジー&経営戦略です。
今変わらなければ、2030年にはサプライチェーンから外されてしまう“現場の危機”が確実に訪れます。
ぜひ調達担当、工場管理者、経営層の方は、現場目線の実践・全体最適を主導しながら、“サステナブル素材時代”を先取りしていきましょう。
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