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センシングデータの漏洩を防ぐセキュリティ設計の基礎

目次
はじめに:製造業におけるセンシングデータとセキュリティの重要性
近年、製造現場においてIoT化や自動化の波が加速し、多種多様なセンサーが工場内に張り巡らされています。
現場の温度や湿度、機械の稼働状況や生産ラインのスループットなど、リアルタイムかつ膨大なセンシングデータは、生産効率の向上や品質管理の高度化に寄与してきました。
しかし、その一方でセンシングデータが持つ価値が高まるほど、外部・内部双方からのデータ漏洩リスクも深刻化しています。
特に日本の製造業は「現場や経験に依拠しがちな昭和型アナログ文化」が根強く残っており、セキュリティ対策の意識やノウハウが十分に浸透していない現実があります。
本稿では製造現場目線で、センシングデータの漏洩を防ぐセキュリティ設計の基礎について解説します。
センシングデータが漏洩した場合のリスク
競争力の喪失
センシングデータは、工場ごとの生産ノウハウやバリューチェーンの“強み・弱み”を如実に表しています。
もし外部に漏れれば、ライバル企業に生産技術の詳細を知られることになり、コスト・品質・納期の優位性を失いかねません。
品質事故や不正利用
不正利用によるデータ改ざんで、品質事故や製品リコールに発展する恐れもあります。
またセンシングデータが操作されると、機械トラブルの予知や追跡が困難となり、場合によっては人身事故や膨大な損失につながります。
サプライチェーンへの波及
昨今ではバイヤーや親会社から「サプライチェーン全体のセキュリティ」を求められます。
一カ所でも脆弱なリンクがあれば、取引停止や信用失墜は免れません。
現場で見落とされがちなセンシングデータの特徴
実は「個人情報」や「機密情報」が含まれる
一見、単なる数字の羅列でしかない温度・振動・動作ログや設備の状態ログでも、解析手法を駆使すれば生産の機微や工程のクセ、場合によっては従業員の行動パターンすら把握可能です。
このため、従業員のプライバシーや企業機密がセンシングデータの中に潜んでいると認識する必要があります。
ネットワーク越しに外部送信されやすい
多くの工場では、設備メーカーやSIer等の外部パートナーがリモートからデータを確認するケースが増えています。
このため、工場の外部ネットワークにデータが流出しやすい経路が常に存在します。
データ量と速度が膨大で監視が追いつかない
センシングデータは分単位・秒単位で大量に発生し、従来の“人手検知”や目視監査だけでは異変を見破り切れません。
センシングデータ保護のためのセキュリティ設計の基礎
1.現場ごとにリスク評価を実施する
曖昧な“やっているつもり”でなく、現場設備ごとに「どこに・どのようなデータが・どんな手段で外部へ漏れる可能性があるか」を棚卸ししましょう。
製造ライン、検査装置、AGVなど、設備種類ごと・工程ごとに洗い出すことが重要です。
自社だけで判断に迷った場合は、設備ベンダーやIT部門・外部コンサルの協力も不可欠です。
2.通信経路の暗号化・認証強化
インターネット越しの通信はもちろん、LAN内や装置同士の通信も、SSL/TLSやVPN等の暗号化が原則です。
また、不正アクセス防止のため、通信相手はID・認証キー等で確実に本人確認を行いましょう。
現場でよくある「ベンダー担当者のノートPC持ち込み作業」「スマホアプリの管理」など、小さな穴からも漏洩は起き得ます。
3.データ保管先・履歴管理の徹底
収集した生データを、誰が・どこに・どのくらい保存しているかを明示的に管理しましょう。
一時的なUSBメモリやローカルPCへの保存もリスク要因となりえます。
データの保存期間や削除ポリシーも明文化し、不要データは早期に消去する体制を整えましょう。
4.定期的な脆弱性チェックと教育
ネットワーク機器やIoTゲートウェイ、現場端末のOSは常に最新の状態を保つ必要があります。
また、「ベンダーに任せきり」の油断が事故につながりやすいため、定期的に現場主導で点検を実施しましょう。
さらに、センシングデータの重要性や取り扱いルールを現場従業員全体に周知し、「ヒューマンエラー」を未然に防ぐ教育ループも大切です。
5.ゼロトラストの考え方を取り入れる
従来の「工場内は安全、外は危険」という境界防御モデルから、最近は「すべての通信・すべてのアクセスを常に疑う」ゼロトラストセキュリティへの転換が求められます。
現場ネットワークに接続しているすべての機器・ユーザーの挙動を可視化し、異常を自動検知する仕組み(SIEM/EDR等)の導入も検討しましょう。
バイヤー・サプライヤーの立場で考えるべきこと
バイヤー:工場や委託先のセキュリティをどう担保するか
昨今、サプライチェーンセキュリティの重要性はますます高まり、自社工場だけでなく、協力工場・外注先のセンシングデータ管理体制のチェックが求められます。
具体的には、監査項目への「データ漏洩対策」「ログ管理の実施」「通信の暗号化有無」などを盛り込み、定期的にヒアリングや現地監査を行いましょう。
また、RFP(発注仕様書)や基本契約書にも、「情報セキュリティ要件」を明記することで、サプライヤー任せの属人的運用を未然に防げます。
サプライヤー:顧客(バイヤー)の視点・不安を先手で解消
サプライヤー側は、自社工場のセンシングデータ保護・活用について「どのような体制で安全に管理しているか」「漏洩時にどのような報告・対処を行うか」を明文化し、顧客(バイヤー)にきちんと説明責任を果たしましょう。
情報セキュリティ認証(ISO/IEC 27001:ISMS、CISO体制の構築など)も有効な差別化要素になります。
進化する製造業とアナログ現場の両立
デジタル化にありがちな落とし穴
「IoT機器さえ導入すれば効率化もセキュリティも一気に進む」と思われがちですが、現実はそう甘くありません。
IoT化・センシング強化そのものが、逆に「新たなセキュリティリスク」を生み出す要因になることもあります。
特に昭和から続くアナログ現場では、データの価値やリスクの本質がなかなか浸透せず、「紙・ホワイトボード・表計算管理」と新旧混在が当たり前です。
“ヒト”の重要性とボトムアップ型の推進
どんなにセキュリティ強化をうたっても、最終的にリスクを生み・防ぐのは“人”の行動です。
マニュアル整備やツール導入に加え、日々の業務教育やヒヤリ・ハット共有・現場自慢大会(アナログ現場では侮れません)が、“セキュリティ文化”醸成の土台となります。
まとめ:「現場目線」で始めるセンシングデータセキュリティ
製造現場を知る者として伝えたいのは、「センシングデータの漏洩リスクは想像以上に身近」ということです。
だからこそ現場主導でリスクの棚卸し、通信・保管のルール整備、人の意識改革を着実に進めることが不可欠です。
バイヤーは自社・委託先管理を、サプライヤーは顧客の不安取り払いと差別化を意識して、サプライチェーン全体でのセキュリティ底上げを目指しましょう。
アナログとデジタルの“いいとこ取り”で、強くしなやかな製造現場を築いていきましょう。
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