放射温度センサーの基本と応用例

放射温度センサーの基本と応用例

放射温度センサーとは

放射温度センサーは、物体から放射される赤外線を検知して温度を非接触で測定する装置です。従来の接触型温度センサーと比較して、接触せずに温度を取得できるため、高温、危険、またはアクセスが難しい場所での測定に適しています。

原理としては、物質は温度に応じて一定の波長帯域で赤外線を放射します。この赤外線の強度を検出し、特定の波長に対応する放射強度を計算することで温度を求めます。この手法はプランクの法則に基づいています。

放射温度センサーの種類

放射温度センサーには主に以下のような種類があります。

– 単一波長センサー：特定の波長の赤外線を検出するシンプルなタイプです。コストが低く、基本的な温度測定に適しています。
– デュアル波長センサー：異なる波長の赤外線を同時に測定し、比率を取ることでより正確な温度測定が可能です。ガスや煙、埃が存在する環境でも影響を受けにくい仕様です。
– 放射率調整センサー：材料や表面の放射率に応じて調整が可能なタイプです。異なる素材や表面状況においても正確な測定が行えます。

製造業における応用例

放射温度センサーは、製造業において幅広く利用されています。以下に具体的な応用例をいくつか紹介します。

1. 鉄鋼業

鉄鋼業では、高炉や転炉など非常に高温の環境での温度測定が必要です。放射温度センサーは非接触で広範囲の温度を迅速に測定できるため、高熱の環境でも安全かつ効果的に利用できます。具体的には、鋳造プロセスでの溶融金属の温度管理や、冷却過程での温度変動の監視に使用されます。

2. プラスチック製造業

プラスチック製造業では、プラスチックの成形段階での温度管理が品質に大きく影響します。射出成形機では、金型とプラスチック材料の温度を正確に維持することが求められます。ここで放射温度センサーが役立ちます。非接触で温度を把握できるため、均一な冷却や加熱が実現し、製品の品質向上に寄与します。

3. 半導体製造業

半導体製造業では、ウェーハやチップの製造過程において厳密な温度管理が必要です。特に化学気相成長（CVD）や物理気相成長（PVD）などのプロセスでは、数百度から数千度までの温度が要求されます。放射温度センサーは非接触で高精度な測定が可能なため、プロセスの最適化と不良品の低減に大きく貢献します。

4. 食品産業

食品産業でも放射温度センサーは重要な役割を果たします。食品の品質管理や安全性を確保するために、調理過程や冷却過程での温度監視が不可欠です。例えば、パンの焼成過程で均一に焼けるかどうかのモニタリングや、冷凍食品の保存温度の確認などに利用されます。

5. 自動車産業

自動車の製造過程でも放射温度センサーは広く利用されています。特にエンジン部品やブレーキディスクの製造において、温度管理が欠かせません。例えば、エンジン部品の鍛造段階での均一な加熱や、塗装工程での乾燥温度の管理に使用されます。これにより、製品の性能と耐久性を向上させることができます。

まとめ

放射温度センサーは非接触での温度測定が可能なため、製造業において非常に重要なツールとなります。様々な業界において温度管理の精度を向上させ、安全性を確保し、製品品質の向上に寄与しています。適切なセンサーの選定と設置、運用を行うことで、その効果を最大限に引き出すことが可能です。

今後も技術の進化と共に、より高精度で使いやすい放射温度センサーが登場することが期待されます。製造業の現場でのニーズに応じた新たな応用が生まれることでしょう。