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永久磁石同期モータのベクトル制御・位置センサレス制御の基礎と応用例

目次
はじめに
製造業におけるモータ技術の進化は、製品の性能や製造効率の向上に密接に関わっています。
特に永久磁石同期モータ(PMSM: Permanent Magnet Synchronous Motor)は、その高効率性と高いトルク密度により、広範な応用が見込まれています。
本記事では、PMSMのベクトル制御と位置センサレス制御について基礎を解説し、具体的な応用例を紹介します。
これにより、製造業に従事する方々が実務的な視点から理解を深め、技術応用のヒントを得ることを目標とします。
永久磁石同期モータの基本構造と特長
PMSMの特徴は、そのロータに永久磁石を使用している点にあります。
これにより、モータの損失の減少と効率の向上が図られ、高出力・高効率の駆動が可能になります。
PMSMはまた、小型で軽量な上に、低騒音・低振動の特性を持っているため、自動車業界や産業用ロボットなど、多くの分野で利用されています。
PMSMの基本構造は、固定子巻線と永久磁石を備えたロータから成ります。
このような構造により、鋳造や鍛造などの重厚産業から、細かな精密加工が求められる製造業においても、その技術の優位性が発揮されています。
PMSMの長所と短所
PMSMの長所には、上記のとおり高効率性や高トルク密度といった特徴があります。
一方で、永久磁石の特性が温度に影響されるという欠点もあります。
ロータの永久磁石の特性が変化してしまうと、パフォーマンスの低下につながる可能性があります。
したがって、使用する材料や冷却方法の最適化が求められます。
ベクトル制御の基礎
PMSMの制御において、ベクトル制御は特に重要な役割を果たします。
ベクトル制御とは、モータのトルクと磁束をそれぞれ独立に制御できる手法であり、エネルギーの効率的な利用を可能にします。
ベクトル制御は、PMSMの複雑な動作を直交座標(d-q座標)に変換することで実現されます。
これにより、モータの直接トルク制御や高速応答が可能となり、異なる負荷条件下でも安定した駆動を保証します。
ベクトル制御の実装プロセス
ベクトル制御の実装には、モータの速度やトルクを高精度でフィードバック制御する必要があります。
これは、電流センサやエンコーダなどのデバイスを利用して行われ、駆動系のリアルタイム制御を実現します。
また、制御アルゴリズムとしては、PI(比例積分)制御器が一般的です。
このように、複雑な制御理論がPMSMの優れた動作性を支えています。
位置センサレス制御の基礎
位置センサレス制御は、PMSMのロータ位置を推定する技術であり、センサを用いずに正確な駆動が可能になります。
これにより、コスト削減や信頼性の向上が実現します。
位置センサレス制御の鍵となるのは、モータの端子電圧や電流から間接的にロータ位置を割り出すための高度な推定アルゴリズムです。
例えば、MRAS(モデル基準適応制御)やEKF(拡張カルマンフィルタ)などの手法が用いられています。
この技術は、センサの設置が困難な状況や、センサ自体の信頼性に課題がある場合に特に有効です。
結果として、システム全体の簡素化が図れ、メンテナンスの手間も軽減されます。
位置センサレス制御の効果と課題
センサレス制御による効果として、高速回転や過酷な環境下での運用が可能になる点が挙げられます。
しかし、システムの複雑化に伴い、制御ソフトウェアの開発やデバッグに多くの時間が割かれることがあります。
また、ロータ位置の推定誤差が増大すると、駆動性能に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらの課題を克服するためには、常に新しい技術の導入とチーム間の密接なコミュニケーションが欠かせません。
応用例:自動車産業におけるPMSMの活用
近年、自動車産業においてPMSMは非常に重要な役割を担っています。
電動化が進む中、PMSMは電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の心臓部として活用されています。
自動車におけるPMSMの利点は、前述した高効率性や静音性、コンパクトさです。
特にベクトル制御と位置センサレス制御の組み合わせによって、迅速かつ正確なトルク制御が可能となり、走行性能の向上に寄与しています。
自動車メーカー各社は、これらの技術を組み合わせた電動ドライブユニットを開発し、さらなる省エネ性とパフォーマンスの向上を図っています。
産業用ロボットにおける応用
産業用ロボットにおいても、PMSMは優れた性能を発揮しています。
高精度での位置決め制御は、精密工業製品の加工や組立工程において不可欠です。
さらに、ベクトル制御技術が組み込まれることにより、複数のアクチュエータを一元的に管理することが可能となり、高度な複製や一貫性のある作業が実現します。
ロボットアームなどの駆動には、無断変速が求められることが多く、PMSMとその制御技術がそのニーズを満たすことができます。
まとめ
本記事では、永久磁石同期モータのベクトル制御と位置センサレス制御の基礎、およびその応用例について解説しました。
PMSMはその高性能と多様な応用可能性により、製造業を含む様々な産業での役割が期待されています。
新たな技術進化が求められる現代、製造業に携わる皆様にとって、PMSMの技術は見逃せないテーマです。
今後、これらの技術をいかにして現場で活用し、最適化していくかが、競争力を高めるカギとなるでしょう。
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