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ISO 14644クリーンルーム規格の基礎と実務

目次
はじめに:ISO 14644クリーンルーム規格とは何か
ISO 14644は、クリーンルームの設計、運用、管理において不可欠な国際規格です。
この規格は、製薬、自動車、半導体、食品、医療機器など、高い清浄度が求められる産業で幅広く活用されています。
現場目線で言えば、ISO 14644の運用が正しくなされていないと、異物混入・不良品発生などの重大な品質トラブルに直結します。
特に、「昭和のアナログ志向」から脱却しきれていない現場や工場でこそ、このグローバルな指標がバイヤーや品質保証部門から必須とされる背景があります。
ISO 14644の基本構造とシリーズ概要
ISO 14644はシリーズ規格で、主に下記のような章立てになっています。
現場で頻繁に参照されるのはISO 14644-1と2ですが、実務では3以降もチェックリストやエビデンス作成に欠かせません。
ISO 14644-1: クラス分類と検証基準
ISO 14644-1は、クリーンルーム内の空中微粒子濃度による「クリーンルームの清浄度クラス(Class 1~9)」を規定しています。
「1m³あたりの粒子個数」をカウントし、その結果でクラスが決まります。
現場実務では、サンプラー(パーティクルカウンター)操作や測定点の数、測定頻度の選定こそが品質の根幹です。
ISO 14644-2: 継続的監視の要件
ISO 14644-2では、初期の認証後も継続的に「安定した清浄度が維持されているか」をチェックする体制を求めています。
誤解されがちですが、「一度パスしたら終わり」ではなく、継続した環境の監視と記録保存が重視されます。
ISO 14644-3以降:試験方法・設計・運用の詳細
– 3:検証試験の手順(例えば、気流確認やリーク試験など)
– 4:設計・建設指針
– 5:運用・保守要件(教育・マニュアル含む)
– 6:パーティクルカウンティングの手法と解釈
現場目線で言えば、これらの規格を組み合わせ「お客様を説得・安心させるエビデンスとする」ことが実務に直結します。
クリーンルーム要求の現場実態:なぜISO 14644が重視されるのか
日本の製造現場では、「クリーンルーム」と名乗っていても、明確な定義や測定が曖昧な”なんちゃって運用”が一部残っています。
しかし、バイヤーが欧米・グローバル調達へシフトする中、「ISO 14644認証クラスで管理していますか?」という質問はスタンダードです。
この時、監査に通らない工場は選ばれなくなってしまいます。
さらに、半導体や医療機器分野では、リーン生産や省人化だけでなく、トレーサビリティとクリーン度エビデンスの同時提出が求められるのが業界トレンドです。
ISO 14644に準じない施設は、”競争力が低い”と見なされてしまう現実があります。
ISO 14644導入・運用の具体的ステップ
ISO 14644を導入・運用するには、以下の段階で現場力を発揮することがカギとなります。
1. クラス要求の定義と合意形成
まず、取り扱う製品や工程で「どの清浄度クラスが必要か」を正しく設定します。
サプライヤーとしては、ここでバイヤーと十分にディスカッションし、工程ごとのリスクも一緒に洗い出しておくべきです。
2. 設計・施工時の注意点
誤解されやすいのは、「気密性」「壁材」だけクリアすれば良いという点です。
実際は、材料選定、防塵・防虫設計、作業者導線、維持管理コストまで考慮しなければなりません。
3. 初回認証・パーティクルカウント計測
現場では測定担当者のスキルが問われます。
サンプラーの事前校正、正しい設置・バリデーション方法、不具合発生時の原因切り分け手順を明確にしないと、監査時に大きなペナルティになります。
4. 維持管理および記録保持
設備運用だけでなく、日々の清掃点検、入出管理、消耗品(フィルタ)の交換履歴などが「すぐに提出可能」な状態が重要です。
また、トラブル発生時の是正措置(CAPA)まで運用マニュアルに組み込む必要があります。
5. 定期的な監査と見直し
ISO 14644-2に則り、四半期や半期ごとの定期監査、パーティクルカウントの記録・分析も忘れずに実施しましょう。
ここで「問題ゼロ」ではなく、「発見された小さな問題を継続的に改善する」姿勢こそが、サプライヤー評価で高ポイントとなります。
現場目線から見る「落とし穴」:ISO 14644運用のよくある失敗例
1. 表面的なパーティクルカウントだけで満足してしまう
パーティクルカウントのみを重視して、その背後の作業者管理や清掃手順をおろそかにするケースが目立ちます。
現場では人の出入りや工程切り替え時こそリスクが高まります。
「目の前の数値」だけでなく、「運用・教育・マニュアル」の総合バランスを見ましょう。
2. 記録の形骸化
点検表やチェックリストの「実施サイン」だけが目的化する現象もよくあります。
実態と記録が合っているか、第三者目線で棚卸しを実施し、サプライヤー自身の信頼性を高めましょう。
3. 設備優先で「省エネ」「人手不足」問題を見失う
最新設備導入にばかり目が行きがちですが、無理な省エネ化や人員削減により「清浄度維持のための本質的な管理」が疎かになる危険もあります。
自動化を推進する時ほど、「現場でイレギュラーが起きた時の対処」も運用フローに組み込むことが重要です。
バイヤーはISO 14644をどう見ているか
グローバルバイヤーの多くは、「ISO 14644クラス認定=当たり前」と認識しています。
ポイントは、単なる認証マークではなく、「日々現場で規格を維持する力量・文化が備わっているか」に注目していることです。
例えば、監査時には「異物が発見された場合、どうトラブルを分析し報告するか」「過去1年間の改善履歴を見せてほしい」といった要請がなされます。
現場の運用記録がデータで管理されていなければ、信頼を失い兼ねません。
同時に、「ISO 14644に準じるクリーン度」と「現場のイノベーションや改善提案力」は、今や高付加価値なパートナーシップの前提条件です。
サプライヤー・バイヤー間でクリーンルーム規格をどう活かすか
サプライヤーの立場で活かすポイント
– 顧客監査時には「ISO 14644規格に基づく管理・改善記録」を積極的に提示し、透明性を持たせる
– 部品や材料の切り替え(新規調達)時に、クリーンルーム管理計画も提案し、バリューチェーン全体の品質保証をアピールする
– 清掃やパーティクル管理の自動化・遠隔監視など、”最先端と現場改善”を組み合わせたイノベーション事例をバイヤーへ発信する
バイヤーの立場で優れた調達先を見抜くコツ
– ISO 14644規格をどれだけ「生きた運用」として現場で根付かせているかを監査時に確認する
– 異常時の是正フローや、定期的な自発改善活動(KAIZEN)の実態も評価軸とする
– “コスト”や“納期短縮”だけでなく、“クリーン度維持の持続性”や“人材育成”にも目を向け、中長期的な信頼関係を構築する
まとめ:昭和からの脱却とグローバル競争の切り札
ISO 14644クリーンルーム規格は、単なる国際認証ではなく、“現場での品質保証の土台”として定着しつつあります。
アナログ業界体質から抜け出せないサプライヤーが、ここで一歩踏み込み、「透明性・改善力・運用体制」という新しい地平線を開拓できるかが成功のカギです。
製造業に従事する全ての方に、ISO 14644を単なる規格ではなく、“現場力を高める武器”として磨き上げてほしいと願っています。
今後はAIやDXも活用しながら、「高品質×省人化×グローバル対応」という三位一体の進化が問われる時代です。
最後に、バイヤーやサプライヤー、現場担当者それぞれが「真の品質」「顧客信頼」を担うプロフェッショナルであり続けましょう。
これが日本のものづくりを次世代へと発展させるための確かな基盤です。