投稿日:2025年6月18日

クリーンルームの基礎と効果的な管理手法およびそのノウハウ

クリーンルームとは?基礎知識の整理

クリーンルームは、半導体、医薬品、電子部品、食品など高い品質が求められる製造現場では欠かせない存在です。

クリーンルームとは、空気中の微粒子や汚染物質、微生物の混入を極限まで抑制した特別な作業環境を指します。

ここで管理される「清浄度」は、用途によって求められるレベルが大きく異なります。

一般的には、ISO 14644-1という国際規格や、米国連邦規格(FED-STD-209E)などによって「クラス」で管理されています。

例えば、クラス10とは、1立方フィートあたり0.5μmの微粒子が10個以下であることを意味します。

日本の製造現場でも、ISOクラス5~8あたりのクリーンルームが多く採用されています。

製造業におけるクリーンルームの重要性

製造業、とりわけ高度な品質を求められる分野では、微小なコンタミ(異物混入)が大きなトラブルへと発展します。

半導体であれば歩留まり向上、医薬品分野であれば消費者の安全確保、食品では信頼の維持のため、クリーンルームは必須といえるでしょう。

数十年前は「ここまでやるのは大企業だけ」と言われていましたが、近年は中小製造でも導入が進んでいます。

背景には「顧客要求の厳格化」「製品の高機能化」「グローバル対応」などが挙げられます。

また近年はESG投資やCSR経営の観点からも、クリーンな製造環境をアピールする企業も増えています。

クリーンルームの管理手法とは

クリーンルーム管理の肝は「維持」と「記録」です。

現場で培われてきたノウハウをベースに、いかに実効性の高い管理手法を徹底できるかがポイントです。

1. 空調管理(HEPAフィルター・陽圧維持)

微粒子の除去には、高性能HEPAフィルターの導入が欠かせません。

しかし設置しただけで終わりではありません。

定期的な風速測定、フィルター圧損管理、ダクト内清掃など継続的なメンテナンスが必要です。

特に陽圧(クリーンルーム内の気圧>外部気圧)を維持することは、外部からの異物流入を防ぐ基本となります。

メーター指標の監視、差圧アラームの設置などで、異常時の素早い対処が求められます。

2. 人・物の動線管理とゾーニング

せっかく室内をきれいにしても、人や物の流れに“情弱”があると一気に汚染リスクが高まります。

エアシャワーや粘着マットでの入退室管理、作業着の管理、動線のゾーニングなど、アナログな手法も未だに有効です。

入口の段階で異物を落としきれているか、靴・衣服の繊維抜けなどをどこまでケアできているか。

実際には「慣れ」が管理強度を下げがちです。

日常的な見回りやローテーション点検、現場教育による徹底が鍵を握ります。

3. 清掃と点検サイクルの高度化

清掃頻度や清掃エリアは、製造物によって大きく異なります。

しかし、ポイントは「目に見えない汚染」の早期発見です。

照度管理を活用した微粒子見え化、生菌検査のルーチン化、夜間や休日のランダム点検などで“見逃し”を未然に防ぎます。

また、カビ・細菌検査を月次や週次で回す企業も増加しています。

一見手間に感じますが、品質クレームの発生リスクと天秤にかければ大きな投資対効果が実感できるはずです。

4. 品質管理部門とのデータ連携・活用

クリーンルーム管理記録は、品質管理部門との密な連携が不可欠です。

製品ごとの微粒子数・菌数のトレンド変化、清掃記録の管理、異常値の早期警告によって「未然防止」が可能です。

多くの現場では、書面管理や個人依存型の記録体制が根強く残っています。

DX推進のためにも、センサーやIoT、クラウド型管理ソリューションの導入が進んでいます。

昭和的なアナログ業界でも少しずつ「データ活用」が浸透し始めています。

現場経験から得た効果的な運用ノウハウ

筆者が現場で感じてきた成功例・失敗例を交えつつ、実践的なノウハウを紹介します。

1. 教育こそ最大の管理対策

最新設備や洗練された手法も、まず「現場の誰もが意識レベルを合わせる」ことが始まりです。

手袋のままで顔を触らない、マスク装着の徹底、微粒子が立ちやすい作業のタイミング調整など、日々の行動一つが品質を守ります。

朝礼や定期的な現場教育、ヒヤリ・ハット事例の共有は、地味ですが最も効果的な対策です。

ハウスルールのポスター掲示や動画教材など、伝え方の工夫も重要なカギです。

2. アナログとデジタルを融合させる

紙での記録とIoTセンサーを併用する、定例清掃とランダム清掃を交互に実施するなど、実際には両者の良い部分取りがベストです。

アナログ世代が多い現場では「見える化」や「目で分かる指標」が有効です。

すぐ結果が出るモニタリング表示や、点検リストを“大きめ”表示で貼り出すなど、現場が「自然と守れる」設計がポイントです。

3. サプライヤー・バイヤー目線での現場管理

納入前検査や立会い監査では、サプライヤー側がクリーンルームの管理状態を「見せる」ことが求められます。

自社独自の管理手法や記録の透明化、市場クレーム時のトレーサビリティ確保なども重視されます。

バイヤー視点では「現場レベルのノウハウ」「アウトプットへの応用力」「問題発生時の対応力」を細かくチェックしています。

サプライヤーも「安心材料」として、ルールを守れる現場文化・管理レベルを武器にできる時代です。

昭和から抜け出せない現場が変化するヒント

昭和の時代から「職人の勘」「現場の経験」「紙の管理」に頼ってきた製造業現場が、どう時代に適応していくか。

そこには“変革の壁”と“継承すべき知恵”の両面があります。

技術革新は徐々に浸透する

自動記録装置やAI点検など、最新技術の導入は大きなコストがかかります。

しかし部分的にでも新しい仕組みを導入し、現場に理由を説明することが“変化への第一歩”です。

「なぜ必要なのか」「どう良くなるのか」を現場目線で腹落ちさせることが定着の鍵となります。

知恵や経験のデジタル化も重要

「この時期は風向きが変わるから微粒子が増えやすい」
「大量生産の直後は異物が混入しやすい」
そんな属人的・暗黙知なノウハウも、ぜひ資料化して蓄積しましょう。

ベテランの経験を若手に資料化させることで、組織として“知恵の堆積”が進みます。

クリーンルームは会社の生命線

クリーンルームは単なる「きれいな部屋」では終わりません。

品質確保、顧客信頼、事故予防、経営リスク低減など、会社の存続に直結する要素です。

最新の設備と地道な管理努力、その両方が初めて「効果」を生みます。

また、DXや新技術を積極的に取り入れつつも、現場の知恵や経験を大切にしていくことが、これからの製造業の大きな財産になるでしょう。

「昭和から令和へ」の知恵と技術を融合させ、自社に最適なクリーンルーム管理手法を磨いてみてはいかがでしょうか。

サプライヤー、バイヤーを問わず、現場で奮闘する皆さんの品質改善やキャリア形成に、この記事が一助となれば幸いです。

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