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蒸留技術の基礎と最適な内部熱交換技術による革新的省エネルギー化技術と応用・例

目次
蒸留技術の基礎
蒸留技術は、さまざまな混合物から目的の成分を分離・精製するために広く使われている伝統的かつ今なお重要な化学工業プロセスです。
液体混合物を加熱して成分ごとに蒸発させ、冷却して凝縮させることで、沸点の違いを利用して分離します。
製造業の工場やプラントでは、石油精製、医薬品、化学品、食品など多岐にわたり不可欠なコア技術です。
特に昭和期から連綿と受け継がれてきたこの技術は、現在もアナログの要素が色濃く残っています。
しかし近年、脱炭素社会の流れやエネルギーコスト高騰による省エネルギー化の要求は急激に高まり、これまでの「大は小を兼ねる」ような設計思想からの脱却が求められています。
蒸留塔とは何か
蒸留技術の中心にあるのは「蒸留塔」です。
原料を下から投入し、加熱して蒸気化させ、塔内部の複数のトレイあるいはパッキンを流れながら冷却・凝縮し、分離されていきます。
塔の上部から取り出した蒸気や下部から排出する残渣の流れをコントロールしながら、目的とする成分を効率的に取り出せるよう設計されています。
現場では、安定操業のために塔内の温度プロファイルや圧力、リボイラー(再沸器)やコンデンサーの運転条件を繊細に管理しています。
しかしその一方で、昭和期から続くアナログな計装・操作体系が根付いており、デジタル管理や自動制御の進化が遅れている現場も依然多いのが実情です。
内部熱交換技術の概要と課題
従来のエネルギー消費パターン
蒸留プロセスは、本質的に大量の加熱・冷却エネルギーを消費します。
たとえば塔底のリボイラーで加熱し、塔頂のコンデンサーで冷却するという二極構造になっているため、投入した熱エネルギーの大半が未利用のまま外部に放散されています。
このエネルギーロスは数十年前から指摘されていますが、工場規模の刷新や大規模な設備投資を伴うため、特に歴史のあるアナログな現場では改善が進みにくいというジレンマがありました。
省エネルギー化の新潮流:内部熱交換
こうした課題意識のもと、登場したのが「内部熱交換技術」です。
最もシンプルな例は「サイドリボイラー」「サイドコンデンサー」のように、塔内の高温側から低温側へ熱を戻すループを設けることです。
また「熱統合(ヒートインテグレーション)」という手法も普及しつつあり、複数の蒸留塔や他のユニットとの間で熱エネルギーのキャッチボールを可能にします。
新しい内部熱交換技術の導入によって、蒸気・冷水の消費量を最大30~50%削減した事例も報告されています。
従来は捨てていた熱を再利用できることは、ボイラーや冷却塔など周辺設備の負荷低減にもつながり、サステナビリティ(持続可能性)やカーボンニュートラル化という社会要請に応える最前線の現場技術となっています。
革新的な省エネルギー化技術と最適化への展望
最新の熱交換器とプロセス最適化
近年では、従来比で熱交換効率が1.5~2倍高い「プレート式熱交換器」や、コンパクトで保守も容易な「マイクロチャネル熱交換器」など新型機器が主流になりつつあります。
また、蒸留塔の各部位にセンサーを配置し、デジタル監視システムでリアルタイムに運転状態を把握・自動調整することで、熱回収を最大化する運転制御技術も普及し始めています。
大切なのは「全体最適」の視点を持つことです。
個々の装置の効率だけに着目するのでなく、工場ライン全体でのエネルギーフローを設計し直す発想が求められています。
たとえば蒸留塔のリボイラー熱源を別プロセスの排熱流に切り替える、また逆にここで生まれる低品位熱を他ユニットにバトンタッチするなど、きめ細かな熱回収ルートを組み込むことで、省エネ効果は飛躍的に高まります。
運転・保全現場における具体的工夫
ここで重要になるのが「現場目線の柔軟な工夫」です。
たとえば、熱交換器のスケール堆積や詰まりによる効率低下には、定期的な洗浄や性能監視が必須です。
また、部分的な改造だけでなく、既存ラインを活かして負荷分散やバイパス経路を新設するなど、低予算・短期間で実現できる省エネ策も現場で多く実践されています。
「作業員一人ひとりの温度勘」「トラブル前兆の気づき」「装置メーカーやサプライヤーとの密な連携」など、アナログ現場ならではの知見も現場改善に活かすことで、理論設計と実践運用のギャップを解消できます。
蒸留技術の応用事例
大手化学メーカーの事例―ヒートポンプ併用型蒸留システム
大手化学メーカーのA社では、塔底側で発生した廃熱を圧縮・昇温させて塔内に再投入する「ヒートポンプ蒸留システム」を導入しました。
これにより外部熱源の蒸気使用量が70%減、小規模ライン増設でも大規模なボイラー追加を行わずに済むなど、大きな省エネ・設備投資削減効果を上げています。
食品工場での応用例
食品工場B社では、「プレート式熱交換器」を活用し、濃縮糖液の蒸留ラインの排熱で給水ラインを予熱する熱統合を実現しました。
導入前後でガス消費量が25%減少し、加熱レスポンスの改善によって生産リードタイムも大幅短縮されました。
新興メーカーでのスマート省エネ化挑戦
スタートアップC社の事例では、IoT温度・圧力センサーとAIによる熱回収経路の最適化技術を導入し、ラインのラインバランスや熱負荷が随時自動調整される「スマート蒸留システム」が構築されています。
これにより人による運転のムラを排除し、エネルギーコストの自動抑制と品質安定両立に成功しています。
サプライヤー・バイヤー双方が知っておきたいポイント
バイヤー視点の蒸留プロセス最適化
今、多くのメーカーでは「脱炭素」「省エネルギー」を調達購買の必須条件として掲げています。
蒸留設備更新・熱交換器選定を行う際には、単純な装置価格・納期だけでなく、将来的な運転コスト削減効果やメンテナンス性、熱回収フローの拡張可能性など長期視点からの調達戦略が求められています。
バイヤーはサプライヤーから省エネ実績や導入事例、現場デモなど積極的に情報開示を求め、自社ラインの課題に合わせたカスタマイズ提案を引き出すべきです。
また、現場運転員・エンジニアとの橋渡し役として、技術仕様と現場要求の細やかな認識のすり合わせを進めることで、現実的で効果的な省エネ導入につながります。
サプライヤーが価値提供すべき方向性
一方、サプライヤーは単なる装置・部材供給に止まらず、「プロセス全体の最適化コンサルティング型サービス」や「熱回収データ解析+運用支援」など、バリューアップ案件を創出することが競争力向上につながります。
操作現場とのコミュニケーションを密にし、小規模検証や部分導入など現場負担の少ないソリューション提案を行うことで、アナログな現場へのスムーズな適応を促すべきです。
まとめ:昭和から令和への蒸留技術イノベーション
蒸留技術は日本のものづくりの原点とも言える基盤技術です。
現在の脱炭素社会、サステナブルな工場経営に向けた「省エネ蒸留」の波は、昭和のアナログな現場にも確実に押し寄せています。
バイヤー・サプライヤーを問わず、現場の知恵と最先端の内部熱交換技術を掛け合わせることで、“現場主導のイノベーション”を実現できます。
今後は、IoT・AIといったデジタル技術の進化と、現場力の融合がカギです。
これからバイヤーを目指す方も、サプライヤーとして現場支援を志す方も、「現場感覚+先端技術」の両輪を意識しつつ、日本のものづくりの新たな地平線を切り拓いていきましょう。
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