投稿日:2025年6月22日

乾燥技術の基礎と効率的な乾燥操作のポイント

はじめに~乾燥技術が製造業にもたらす価値

乾燥工程は、食品や化学材料、金属やエレクトロニクス、さらには医薬品、繊維、建材など、あらゆる製造現場で不可欠な工程です。

しかし、製造現場では、「乾燥」という作業がしばしば二の次、三の次に扱われがちです。

昭和時代から長く続く“勘と経験”に頼った乾燥操作や、“乾燥室にぶち込んで〇時間”というおおざっぱな工程管理。

その結果、過乾燥や乾燥不足、エネルギーコスト増、歩留まりの低下など、多くの現場課題がいまだ未解決のままとなっています。

本記事では、現場視点に立って乾燥技術の基礎を整理し、効率的な乾燥操作のための実践的ポイントに踏み込みます。

粘り強くアナログ現場に根付く課題に向き合いながら、デジタル化と省エネ、ひいてはサプライチェーン最適化まで考える新しい地平を一緒に開拓しましょう。

乾燥の原理と方式の種類

乾燥操作の本質~何をどこまで乾かすのか

乾燥とは、製品中に含まれる不要な水分や溶剤を除去し、目的とする含水率まで下げる操作です。

ここで重要なのは、“水分はなぜそこに留まっているのか”、“どこまで乾かせば十分か”という設計思想です。

材料の内部に強く結合した水分と、表面にただ付着している遊離水。

取り除くべきはどちらなのか、過剰に乾燥させて品質を損なわないか、を常に意識しましょう。

代表的な乾燥方式

乾燥方式は大まかに以下のように分類できます。

– 自然乾燥(天日乾燥など)
– 熱乾燥(オーブン乾燥、熱風乾燥、遠赤外線、マイクロ波など)
– 真空乾燥
– 凍結乾燥(フリーズドライ)
– 吸着乾燥・脱水乾燥(物理吸着材や化学的乾燥剤使用)

それぞれの方式ごとに、対象物・目的(品質、コスト、歩留まり)・現場条件に合わせた選定が必要です。

特に近年では、熱源の強化や省エネ、廃熱回収など、持続可能性を強く意識した設備選定が求められつつあります。

製造現場における乾燥効率化の課題

「乾燥工程はブラックボックス」からの脱却

実際、乾燥工程は現場担当者にとって「ブラックボックス」となっているケースが目立ちます。

多くの現場では、「前工程でできたものを乾燥機に投入し、既定の時間経過後に取り出すだけでOK」「温度や時間設定は先輩から伝承されたやり方を踏襲」というのが実情です。

しかし、原材料のロットごとのばらつきや作業環境の変動、老朽化設備による加熱ムラなど、さまざまな変数が実は大きく影響しています。

これが原因で、乾燥ムラや乾燥しすぎによる品質低下、次工程での不良増加、無駄なエネルギーロスが発生していることは見逃せません。

昭和的管理からの意識変革~「なぜこの時間・温度で乾燥するのか」を科学する

アナログな現場特有の“とりあえず〇〇時間”という乾燥操作は、「お客様に迷惑をかけてはならない」「歩留まりを高めたい」という現場の善意から生まれたものです。

しかし、本当に最適な乾燥条件を“科学”できているでしょうか。

たとえば、多湿の梅雨時と乾燥する冬場、原材料ロットや投入量が変わったとき、乾燥品質のバラつきが出ていませんか。

バイヤーとして調達先の現場を見ていると「まだこの管理から抜け出せていないのか」と感じることもしばしばあります。

サプライヤーとしては、乾燥条件の標準化・見える化を推進しない限り、品質保証の説得力を増すことはできません。

効率的な乾燥操作のための現場ポイント

1. 前段階の最適化~「乾燥を担保するための前処理の徹底」

乾燥がうまくいかない原因は、実は前処理段階に根本がある場合も多いです。

原材料の粒度や成形体のサイズ、表面積、投入高さ、配置方法など、前段取りのできばえが乾燥性に与える影響は想像以上に大きいものです。

たとえば、プラスチック成形の前にペレットが均等に広がるような投入の工夫や、食品の場合のスライス厚みの均一化など、前工程とのキャッチボールを強化してください。

2. 乾燥設備の点検・管理~「目視・測定とデータ蓄積」

設備の老朽化によるヒーターの劣化、ファンの能力低下、温度センサーのキャリブレーションずれ、配管の詰まりなどは、乾燥工程全体の大敵です。

旧態依然のままでは「見過ごされた不良の温床」となりかねません。

月次点検や定期キャリブレーション、設備データロガーによる異常検知など、地道な改善活動が功を奏します。

また、アナログな手書き帳票のみではなく、データ化や工程モニタリング(IoT機器導入)も段階的にトライしましょう。

現場に染み付いた“現物見て良ければヨシ”思考から一歩踏み込むことが、次世代への布石となります。

3. エネルギー効率~「エネルギーロスの棚卸と最適運用」

乾燥機は工場のエネルギー消費の最大要因になりやすい装置です。

とくに熱風乾燥や大型オーブンでは著しい電力・ガス代がかかるため、次のような施策が有効です。

– 廃熱回収やヒートポンプ導入による再利用
– ムダな空転運転や未使用時加熱の撤廃
– ピークカット運転へのシフト
– インバータや断熱材の適用によるロス低減
– 空気流通や積載物レイアウト見直しによる均一化

“コスパ”の改善は現場の短期利益になり、またカーボンニュートラル推進の観点でも競争力向上につながります。

4. 「乾燥完了」の適切な判定・品質保証

乾燥工程において最も重要なのは、「どの段階をもって乾燥完了とするか」を定量的に見極めることです。

水分計や赤外線測定、重量ロス法、表面色や硬度の計測など、業界・工程ごとに最適な指標を定めましょう。

また、「見た目」や「手触り」ではなく、誰がやっても同じ基準で合格判定できる“数値”・“記録”で工程を管理することが、サプライチェーン上の信頼確立にも寄与します。

バイヤー・サプライヤー双方が知っておきたい乾燥工程の視点

調達購買・バイヤー側から工場の乾燥工程を見ると、実は「乾燥ムラが後工程での検査NGや不良流出リスクを高める」ので非常に神経を使います。

RFQ(見積もり依頼書)で乾燥プロセスのヒアリングが強化されつつあるのも、「乾燥工程をどこまで標準化しているか」「工程データをどう開示できるか」が調達競争力の裏付けになるからです。

例えば、「乾燥基準値を文書化」「前後データトレーサビリティの保証」「乾燥完了判定の測定方法」など、明文化と可視化が今後ますます求められます。

一方、サプライヤー・現場側としては、「これまでの経験に頼った乾燥管理」から脱却し、工程ごとのベストプラクティスや改善事例(省エネ達成例・歩留まり向上例など)を積極的に開示する姿勢が交渉力強化につながるでしょう。

デジタルツールやIOT連携による「見える化」は一見コスト高に思えますが、人的ミスや手戻り作業、予防保全効果を勘案すると長期的な利益があります。

今後の乾燥技術トレンドと求められる現場力

自動化・省人化の波~「デジタル乾燥」の到来

IoTセンサーやAIを活用したリアルタイムモニタリング、工程自動補正、設備異常の予知保全など、「自動化・省人化」は乾燥現場にも急速に進行しています。

従来の“マニュアルで都度調整”から、「データで乾燥工程をコントロール」し、歩留まりと省エネ、資源ロス低減を同時に叶える時代になっています。

この波に乗り遅れると、高付加価値製品や海外調達先との競争力を保つのは困難になるでしょう。

持続可能性と乾燥技術~「脱炭素」「カーボンフットプリント」の視点

最近では、バイヤーから「製品1個あたりの乾燥時CO2排出量」まで問われるシーンが増えてきました。

乾燥工程の脱化石燃料化、電化や再生可能エネルギー化、廃熱回収やエネルギーマネジメントの高度化など、サステナブルな生産への転換が全業界で急務です。

乾燥機ごとのエネルギー効率データの提出や、LCA(ライフサイクルアセスメント)でのアピールも新たな競争軸となっています。

まとめ~製造現場とバイヤーをつなぐ「乾燥技術」の本質

乾燥工程は、古くからどの業界でも“あたりまえ”に存在する一方で、その本質や最適化の可能性が見過ごされやすい地味な領域です。

しかし、歩留まり・品質・コスト・環境と、現場利益と将来の競争力を直接左右する重要プロセスでもあります。

昭和から続くアナログ現場の知見は大切にしながらも、現場データの見える化・標準化・省エネ、自動化への転換、“なぜ”を突き詰める科学的姿勢を現場全体で共有しましょう。

バイヤーにとっても、サプライヤーにとっても、そしてモノづくりに携わるすべての方々にとって、乾燥工程の本質を理解し、効率化・高付加価値化を推し進めていくことがこれからの製造業に不可欠です。

その積み重ねこそが、競争力と信頼を築き、サプライチェーン全体の健全な成長、業界の未来を切り開く推進力となるのです。

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