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オリジナル食品を作る前に理解すべき“食品安全マネジメント”の基礎

目次
はじめに ― 製造業の現場から伝えたい食品安全への本気の取り組み
食品メーカーの現場で長く仕事をしていると、「食品安全」は一度も他人ごとではありません。
日々のルールや書類作業、チェック項目。
その一つ一つが、「お客様の安心・信頼」そして「企業の存在価値」そのものに結びついています。
とりわけ新たにオリジナル食品を開発したいと考える企業・担当者にとって、食品安全マネジメントの基礎知識は、絶対に外せないスタートラインです。
この記事では、現場の経験者としての実践視点を交え、昭和的な慣習がいまだ根強く残る日本の製造現場のリアルも加味しながら、食品安全マネジメントの本質と最新動向を深掘りします。
食品安全マネジメント――基本と現場で意識すべき3つの柱
1. 食品安全マネジメントとは何か
食品安全マネジメントとは、食品の企画・製造・出荷・流通・販売の全工程にわたり、消費者へ「安全」な製品を常に安定して届けるための管理・運営プロセス全般を指します。
単に「品質が良い」「おいしい」だけでは不十分です。
誤表示や異物混入、アレルゲン対応、衛生管理など、多角的なリスクを事前に察知し、システム的にコントロールし続けることが責務です。
2. 日本のアナログ現場に残る“昭和的感覚”とその課題
日本の多くの製造現場では、いまだ「ベテランの経験値に依存する現場判断」や「紙ベースの記録文化」が色濃く残っています。
これが属人化や情報伝達ミス、不正・隠蔽リスクの温床になっているのが現実です。
例えば、現場のベテランが「こうすれば大丈夫」と思い込んでいる工程でも、フードディフェンス(食品防御)やHACCP(危害要因分析・重要管理点方式)の観点から見れば致命的な見落としが潜む場合があります。
オリジナル商品開発の際は、この“昭和的文化”から一歩抜け出し、システム&チームで食の安全を考える意識変革が土台になります。
3. 管理職経験からみた“食品安全”に対する2つの誤解
食品安全対策=コスト高、手間増―この誤解は根深いです。
しかし、ひとたび回収事故が起きれば企業として失うもの(信頼・費用負担・人材流出)は想像を超えます。
本質的には「安全への投資なくして持続的な競争力なし」です。
また、「うちは大手じゃないからHACCPみたいな本格体制は要らない」という声もありますが、小規模事業者ほど柔軟で効率的なマネジメント体制を持つことで、逆に地域やニッチ市場で大手以上の信用を勝ち取る土壌になります。
食品安全マネジメントの国際規格と日本の最新動向を押さえる
食品安全はグローバル基準への適応が進んでいます。
消費者の意識と同時に、取引先(バイヤー)側の審査目線もどんどん厳しくなっています。
HACCP(ハサップ)の仕組みと導入義務の現状
HACCPは一度は耳にしたことがある方が多いでしょう。
危害要因(ハザード)を科学的に分析し、危険度が高い工程を「重要管理点」として定め、常時モニタリング & 記録を義務化する管理手法です。
日本国内では2021年よりHACCPに基づいた衛生管理が食品事業者の義務となりましたが、特に中小・零細工場では「とにかくチェックシートは作ったが活用できていない」「現場への落とし込みが弱い」といった課題が散見されます。
HACCPを単なる“書類作業”とせず、売上や業務効率化に直結させる視点が大切です。
GFSIやFSSC22000、ISO22000などの国際認証の意義
GFSI(グローバル食品安全イニシアチブ)公認のFSSC22000やISO22000などの国際認証制度は、特に大手量販店・商社経由で食品を流通させる場合は“参入パスポート”の役割を強めています。
これらの認証は単なる工程管理だけでなく、リスクアセスメント、内部監査、経営トップのコミットメントといった企業全体のマネジメント能力を問う点が特徴です。
サプライヤーの立場でも「なぜバイヤーがここまで安全へのこだわりを持つのか」「国際基準の視点からの要求は何か」を理解することがビジネスチャンス拡大の鍵になります。
バイヤーとサプライヤーの“安全”を巡るせめぎ合い
現場でよく耳にするやりとりとして、サプライヤー(供給側)とバイヤー(調達側)では「どこまで安全への投資を優先するか」にギャップが生じがちです。
バイヤーの視点では、「リコールリスク」「ブランド損失」「取引中止」など経営リスク管理が最優先事項です。
一方、サプライヤーは「コスト増」「設備更新」「人材負担」のほうを先に気にしてしまいます。
本当に選ばれるメーカーになるには、「バイヤーの課題を自分ごととして理解し、一歩先んじて提案できる」ことが決定的です。
現場力を強化する食品安全マネジメントの実践ノウハウ
1. アナログ現場で陥りやすい“記録だけ運用”からの脱却方法
例えばHACCPやISOの記録様式の多くは「ルールを守ったことを残す」ことが主目的になっています。
ですが、真の運用は「記録をもとに失敗を“見える化”し、次に生かす」サイクルづくりです。
現場パートや作業者の声を積極的に拾い、「どこで失敗しやすいか」「現実とルールに乖離がないか」を顕在化させる仕組みとして、朝礼やOJT、ヒヤリハット報告会を制度化しましょう。
2. “昭和的な先輩流”をデジタルデータ活用で再構築
経験豊かなベテラン作業者の“暗黙知”を、IoTやセンサー、動画記録などでデータとして蓄積し、全員に共有することが今後ますます重要です。
例えば、温度や湿度、加熱・冷却のログを自動収集しAIで最適条件を抽出する、新人教育用に熟練作業の手順動画をデータベース化するなど、「昭和の職人技」を“全員の財産”に変えていく発想が、新しい食品メーカーの競争力を生みます。
3. 調達・購買戦略と食品安全マネジメントの交差点
安全な原材料調達という観点では、「価格」「納期」だけでなく、「トレーサビリティ」「合法性」「サステナビリティ」の3方向に気を配る必要があります。
特に産地偽装やアレルゲン混入などは、サプライチェーンの初期段階でコントロールできていないと後工程で重大事故になりかねません。
バイヤー視点に立ち「サプライヤーに何をどこまで求めるのか」「取引先をどう選別するか」といったマネジメントも食品安全の一部です。
まとめ ― 食品安全マネジメントは新たな“ブランド力”になる
オリジナル食品開発や製造現場の変革で最も求められるのは、「お客様・取引先にとっての安心」を“目に見える形”で提供することです。
食品安全マネジメントは単なる義務ではなく、新しいブランド価値を創出する戦略的な武器です。
昭和流の「なんとなく」「ベテラン依存」から、最新のデジタル技術や組織運営へと視点を切り替えることで、今まで見えなかった新たな市場やバイヤーから選ばれる可能性が広がります。
そして、工場で働くひとりひとりが「顧客の信頼を創り出している」という誇りを持てる仕組みづくりこそ、間違いなくこれからの製造業における最大の差別化ポイントです。
目まぐるしく変化する食品業界ですが、現場の知恵と経験をアップデートし続けることで、必ずチャンスは拡がります。
食品安全マネジメントの本質を知り、実践することが、オリジナル食品での成功の礎になると強く確信しています。
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