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親水撥水の基礎と製品開発コーティングへの応用例

目次
親水・撥水の基礎知識とは
親水(hydrophilic)と撥水(hydrophobic)は、製造業に携わる方なら一度は耳にする基礎的な表面性質です。
これらは、製品の耐久性や機能性、品質管理、さらには現場の効率化やコストダウンにも直結し得る極めて重要なテーマです。
本記事では、現場目線で親水・撥水の基礎から、製品開発・コーティングへの現実的な応用事例までを掘り下げます。
親水性とは
親水性とは、水とのなじみやすさを示す性質です。
「親水」という言葉はその名の通り、水と“仲が良い”性質を意味します。
具体的には、ガラスやクリーンな金属表面などが親水性を持っています。
親水表面では、水滴が広がっていき、ほとんど残らず“スーッ”と消えていく様子が観察できます。
その指標となるのが「接触角」です。
接触角とは、水滴が表面上で作る角度のことで、これが30度未満であると親水とされます。
まさに工場で窓ガラスを水洗いした際に、水滴が残らず流れ落ちる現象そのものです。
撥水性とは
撥水性は親水性の逆、すなわち水を弾く性質を持ちます。
自動車のウィンドウにコーティングを施した後に、水滴が球状になってコロコロと転げ落ちるようなイメージが代表例です。
接触角が90度以上ある場合、撥水性と分類されます。
高分子コーティングやフッ素樹脂、多くのプラスチック類が撥水性素材の典型です。
そして、より極端な撥水性(接触角が150度を超えるもの)は「超撥水(スーパー・ハイドロフォビック)」とも呼ばれ、先端産業でも注目されています。
親水・撥水の物理的・化学的メカニズム
親水・撥水の現象は実は素材の「化学的性質」と「表面形状」の両方で決まります。
化学的要因
素材自身の分子構造や表面にある官能基が、水との相互作用性を左右します。
親水性は、酸素や水素を多く含み、水と水素結合を作りやすい化学構造が特徴です。
代表例としてはシリカガラス表面の-OH基が挙げられます。
一方、撥水性は、炭素やフッ素など水と親和性の低い元素からなる、非極性の表面構造やフッ素官能基の存在が鍵となります。
物理的要因
表面の凹凸――マイクロやナノスケールの微細な凹凸――が決定的な役割を果たします。
水滴が凹凸の山部分のみに乗ると、“空気層”が間にでき、撥水効果が格段に増します(これがロータス効果の正体です)。
逆に、平滑な、あるいは吸着力の強い表面構造では、水はよく広がります。
現場でコーティング剤の塗布方法や表面処理を変えると、結果が大きく異なる理由はここにあります。
製品開発における親水・撥水の活用例
親水・撥水という表面性質は、工場の日常から最新テクノロジーまで、幅広い製品開発の現場で応用されています。
建材・自動車ガラスにおける親水コーティングの例
自動車のサイドミラーや建築物の外壁・窓ガラスには、親水性コーティングが多用されています。
この目的は「汚れ防止」「メンテナンス性向上」です。
現場目線でお伝えすると、建築ガラスや自動車のガラスに親水コーティングを施しておくと、雨水がガラス表面をフラットに流れ、土埃や油膜も一緒に洗い流せるので日常清掃が圧倒的に楽になります。
その結果、清掃頻度の低減や長期的なコスト削減も実現します。
衣類・繊維における撥水加工の代表例
アウトドアウェアや防水衣類、産業用フィルターなどでは「撥水加工」が必須です。
制服や作業服など、工場で汗・油・薬品に曝される可能性がある素材にも撥水加工が役立ちます。
昔ながらのフッ素系撥水剤やシリコーン系コーティングが多用されていますが、最近は環境規制により「PFASフリー」や新たな“グリーンケミカル”への移行も進んでいます。
現場では「撥水性が落ちた」ときのリコールや苦情対応、繰り返しの洗濯・摩耗試験といった現実的な品質検証も重要ポイントです。
電子・光学部品への応用
スマートフォンやタブレットなどのスクリーン、防犯カメラのレンズ保護、LED照明カバーなどにも、親水・撥水コーティングが積極的に活用されています。
例えば「指紋が付きにくい」「曇りにくい」「雨水が残らない」といった性能を実現するために、ナノコーティング技術が導入されています。
サプライヤーやバイヤーの観点では、コーティング剤供給メーカーの選定や、品質のばらつき・長期耐久性評価が調達購買戦略上の重要課題となります。
現場目線で見た親水・撥水コーティングの業界動向
いまだ昭和的なアナログ運用が根強く残る工場の現場。
しかし、デジタル化・自動化の波は、表面処理・コーティング工程にも確実に押し寄せてきています。
検査・評価の自動化 ―「匠の目」 から「IoT」へ
これまでは目視や現場リーダーの“カンと経験”による検査が主流でした。
ですが、近年では水滴の接触角を自動で測定・記録する画像解析システムやIoT連動検査装置の導入が始まっています。
この変化は、生産管理や品質保証の工数を劇的に削減するだけでなく、異常検出の早期化やヒューマンエラー低減も実現します。
現場の職人が従来担っていた“肌感覚”と、デジタルの正確さをどう融合させるかが、今後の課題です。
サステナビリティと表面処理技術
脱フッ素、脱有機溶剤など、環境負荷の低いコーティング材料への移行が世界的トレンドです。
OEM・大手顧客の要求で、リードタイムやコストとともに「環境配慮型プロセス」を打ち出すことがサプライヤー選定条件に急浮上しています。
現場としては、古い設備×新材料という“ミスマッチ”も発生しやすいため、設備更新・プロセス調整力が問われます。
また、親水コーティングによるエネルギー削減(水や洗剤使用量の低減)もサステナビリティの観点で注目されています。
サプライヤー・バイヤーの立場で考える親水・撥水コーティングのポイント
購買・調達やサプライヤー管理に携わる方に向けて、バイヤー視点で重要な観点を整理します。
◎ 親水・撥水剤の選定ポイント
・要求仕様(耐薬品性、耐紫外線性、耐擦傷性)
・適用可能な素材(樹脂、金属、ガラスなど)
・コーティングプロセスの適合性(ラインへの組込みやすさ、乾燥・硬化条件)
・コストと持続性(塗布量、再加工頻度、メンテナンス性)
・エビデンスやトレーサビリティ(試験データ、RoHS/REACH適合証明)
◎ 恐れるべき“業界あるある”と、その対策
・口約束ベースの現場対応による“スペック落ち”や曖昧な品質判定
・現場個人技への過度な依存、伝承されないノウハウ
・後付け・現場改造によるラインへの負担増と生産トラブル
・品質トラブル時の「犯人探し文化」と情報共有の遅れ
これら昭和的な慣習から脱却し、仕様・手順書の明文化、デジタル管理、PDCAサイクルの強化が求められます。
◎ サプライヤーに求めるパートナーシップとは
・現場に密着した技術サポート(導入立上・トラブル時の迅速対応)
・VE/VA提案によるコスト低減と機能強化の両立
・サステナビリティ・法令遵守を見据えた提案力
・効果的な教育/育成支援(現場作業者へのハンズオン等)
バイヤーは価格だけでなく、サプライヤーの現場適応力、情報発信力・共有力も含めた総合力でパートナーを“吟味”しましょう。
まとめ:親水・撥水は現場を変えるイノベーションの原石
親水・撥水という表面制御技術は、単なる“材料の表面処理”にとどまらず、製品の付加価値向上、現場の効率化、省人化・省エネルギー、さらには社会全体の持続可能性にも多大な貢献が期待できます。
従来のアナログな現場力と、最新のデジタルツールや新材料技術。
両者を上手く融合させた「現場発イノベーション」の取り組みこそが、これからの製造業・調達購買業務の新たな成長のカギです。
この分野でバイヤー・サプライヤーが協働し、変化を楽しみつつ、よりよいモノづくりに挑戦していくことを強くお勧めいたします。
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