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医療機器開発に不可欠な薬機法の基礎と承認申請書作成のポイント

目次
はじめに:医療機器業界で避けて通れない「薬機法」
医療機器の開発現場に携わる人材が増える中、「薬機法(やっきほう、医薬品医療機器等法)」の基礎知識は欠かせません。
現場では技術の進化に合わせて新しい医療機器がどんどん生まれていますが、形にするだけでは流通できず、法律に則った承認・認証手続きを経る必要があります。
薬機法の理解は、設計・製造部門でも調達購買や品質管理、またバイヤーやサプライヤーといった立ち位置の方にも密接にかかわるテーマです。
この記事では、プロジェクトを「前進させるための薬機法ポイント」を、現場感と実務目線から徹底解説します。
薬機法とは?最低限押さえたい全体像
薬機法が目指すもの
薬機法とは、医薬品・医療機器・再生医療等製品等の品質、有効性及び安全性確保等を図るための法律です。
旧薬事法の時代から数えて長い歴史がありますが、2014年の大幅改正で現在の名称になりました。
主に、「製造」「販売」「流通」「市販後の管理」を網羅し、医療現場や患者さんの安全を守ることが究極の目的です。
医療機器に関する分類と規制レベル
医療機器は、そのリスク(人体への影響度合)に応じて4つのクラスに分類されます。
- クラスI:一般医療機器(リスクが最も低い)
- クラスII:管理医療機器
- クラスIII:高度管理医療機器
- クラスIV:特定高度管理医療機器(最もリスクが高い、例: ペースメーカー)
クラスが上がるほど承認や認証手続きが複雑になり、必要な試験データ、申請資料も多岐にわたります。
薬機法が現場に与える影響とは
薬機法の遵守は、単に法令違反を防ぐだけではありません。
・設計変更や原材料変更が容易にできない
・バイヤーが新規サプライヤーを選定する際、薬機法要件の適合性やトレーサビリティ、新規承認のリスク評価なども求められる
・品質管理部門でもGQP(品質管理基準)、GVP(製造販売後安全管理基準)の構築・運用が不可欠になる
など、日常業務のほぼすべてに影響を及ぼします。
昭和時代から続く「現場の知恵」としては、設計・調達・生産・品質・法務部門が一枚岩で取り組む状況づくりが、最短・最善の鍵となります。
薬機法承認申請書の作成プロセス:抑えるべきポイント
薬機法下での「承認」「認証」「届出」の違い
混同が多いですが、医療機器の薬機法手続きには大きく分けて3つの申請方式があります。
- 承認:厚生労働省への申請(特定高度〜高度管理医療機器、先発品や新技術)
- 認証:登録認証機関へ申請(管理医療機器など)
- 届出:販売開始の通知だけ(一般医療機器)
製品のクラスや技術的特徴によりどこまで厳しく審査されるのか、バイヤーやサプライヤーも理解しておくことが重要です。
申請書作成の「流れ」と業務分担
薬機法の承認申請には、大きく分けて以下のステップがあります。
- 適切なクラス分類、規制要件の精査
- 技術文書(設計、性能、試験結果など)の整理
- 申請書のドラフト作成(日本語)
- QMS(品質マネジメントシステム)調査・記載
- 申請窓口との折衝・追加資料対応
- 審査および実地監査、回収報告などの義務への備え
実際の現場では、品質保証が主導するケースもあれば、生産管理・調達、営業、生産技術、さらにはサプライヤーとも連携が必要な場面が出てきます。
こうした部門横断プロジェクトをまとめきるのは容易ではありません。
現実には、仕様準備や試験サンプルの手配など、細かな作業が後から「漏れていた」と判明することもしばしばです。
意識しておきたいのは「初期段階で申請要件の洗い出しを徹底する」こと、そしてバイヤーや調達担当との情報共有体制を構築しておくことです。
審査を通すための実践的な申請書作成の心得
申請書は、事実や技術資料をただ並べるだけでは不十分です。
なぜなら実務では、審査官が疑念を抱いた場合に「追加資料提出」「ヒアリング」など、承認までに大きなタイムロスが発生してしまうからです。
ポイントは、次の3つです。
- 技術的優位性や安全策を、誰が読んでも分かる日本語で徹底説明する
- 製造現場、生産・調達サイドの課題や変更リスクはすべて洗い出し説明しておく
- 過去の承認事例だけをもとにせず、最新のガイダンスや規制変更点も常時キャッチアップする
製造拠点や部品サプライヤーが海外の場合は、とくに原材料手配やトレーサビリティ、リードタイム等についても正確な情報記載が必要となります。
昭和な「製造の勘・コツ」に頼りすぎず、最新の動向や電子化申請(eCTD対応)などIT化も積極的に取り入れましょう。
薬機法承認取得がサプライチェーン全体に与える波及効果
新規サプライヤー・新工法導入時の注意点
薬機法の許認可を得た医療機器が市場へ投入された後に、「部品が突然入手できない」「材料規格が変更されてしまった」という事態は、絶対に避けたいリスクです。
バイヤーや調達担当は、自社だけでなくサプライヤー、部品メーカー、原材料供給元まですべての変更履歴と品質保証体制を把握し、トレーサビリティを確立する必要があります。
特にサプライヤー側も、「どこまで薬機法に適合した生産・記録を維持できているのか」「今後何かイレギュラーな変更予定がないか」といった観点でバイヤーの視点を理解することが求められます。
現場では「小ロットの試作OKです」「コスト削減のご提案」と営業をかけがちですが、薬機法下では変更管理(変更管理評価、Change Control)プロセスが強烈に重視されます。
サプライヤーにとっても「薬機法の仕組みとバイヤーのリスク感覚」を深く理解することで、より円滑なビジネス展開が可能となります。
量産移行・生産拠点移管が招くリスクとは?
いったん薬機法の承認を取得したからといって、その後の生産条件の“変更”は自由ではありません。
例えば、次のような場合も規制当局に通知・承認が必要なことが多いです。
- 主要部品の調達先・サプライヤーが変更になる
- 生産拠点、組立工程、検査工程の移管
- 製品仕様や設計の一部アップデート
この時に業界動向としてしばしば見られるのが「変更届の失念」「試作品と量産品の仕様齟齬」など、昭和から必ずある”現場のうっかり“です。
そのため、量産計画や拠点戦略がある段階で、薬機法対応のQMSや記録体制、変更管理の徹底が求められます。
現場担当・管理職が「薬機法担当は法務側だから」と責任を切り分けてしまうと、大きなトラブルに発展しかねません。
AI・IoT化時代の薬機法対応に備える
最近は、AI・IoT技術を活用したスマート医療機器や遠隔監視装置の開発も加速しています。
そうした高度な電子デバイスでは、ソフトウェアのバージョンアップやクラウド新規サービス連動など、従来の機器以上に「変更」のリスクが高まっています。
現場では「プログラムのバージョン管理」「リアルタイム障害監視」といった観点も薬機法で求められるので、これはシステム・品質・生産・調達、それぞれの壁を超えた協業体制が再度求められる分野です。
将来的にはAI監査やクラウドQMSなど業界の自動化も進みますが、現状では「薬機法下でどのデータをどこまで提出し、保管義務が課されるか?」を常にキャッチアップしておくことが不可欠です。
まとめ:製造業現場が意識すべき「薬機法+バイヤー思考」の真価
薬機法は一見、法務や品質保証だけの課題と思われがちですが、実際は設計、開発、調達購買、生産管理、サプライヤー管理など、製造現場のすべてに強い影響を及ぼします。
効率化やデジタル化が進む一方で、業界としては昭和的な「現場力」と「泥臭い手作業」にも課題が残り続けています。
バイヤーやサプライヤーを目指す方、またその双方と協業する現場の皆さんは、ぜひ薬機法を「単なる業務の壁」ではなく「市場競争力の源泉」と位置づけて取り組んでいただくことをお勧めします。
製品開発スピード&顧客価値を最大化しながら、薬機法の“お作法”にも則った「安心・安全なものづくり」への挑戦が、今まさに求められています。
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