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粉体の基礎と付着性流動性帯電性の計測制御法およびトラブル回避策

目次
はじめに:粉体の基礎知識と重要性
粉体は、製造業の多岐にわたり使用される極めて重要な材料形態です。
化学、食品、医薬、電子、自動車など、数多くの業界で粉体技術は中核的な役割を担っています。
その一方で、粉体特有の物性や挙動――たとえば付着性、流動性、帯電性――が原因でトラブルも多発します。
「粉体に始まり、粉体に泣く」とも言われるほど管理が難しいものなのです。
この記事では、粉体の基礎理解から、製造現場で直面しやすい付着・流動・帯電の測定法、制御法、そしてトラブル未然回避の実践的ノウハウを、現場感覚を交じえて解説します。
昭和時代に確立されたアナログな管理手法と、近年急速に進展するデジタル化・自動化技術のシナジーにも触れていきます。
粉体の特性と分類
粉体は、固体粒子が多量に集まった物質です。
サイズはミクロン単位の微粒子から数ミリまで様々です。
粒径・粒度分布
粉体の代表的な特徴は、粒子サイズとその分布(粒度分布)です。
粒径のバラつきがあるほど、相互作用が複雑になりやすく、ハンドリングが難しくなります。
比表面積・孔隙率
粉体は同じ質量の固体より、はるかに広い比表面積を持ちます。
また、粒子同士の間には多くの空隙が生じます。
これが粉体の付着性や流動性と密接に関わってきます。
粉体の三大課題:付着性・流動性・帯電性とは
付着性(Adhesiveness)
粉体粒子は、機器壁や搬送路にくっつきやすい厄介な性質を持っています。
これは主にファンデルワールス力や静電気力、水分による凝集力に起因します。
流動性(Flowability)
粉体を貯蔵サイロやホッパーからスムーズに「流す」ことは、製造ラインの安定稼働のうえで重要です。
しかし、湿気や粒子形状の不均一性、粒径のバラつきで、しばしばブリッジやラットホール(穴抜け現象)が発生してしまいます。
帯電性(Electrostaticity)
樹脂や無機物、微粉体に多い現象が帯電です。
製造ラインの搬送・切替時に静電気を帯びてトラブルを引き起こすだけでなく、着火・爆発事故のリスクもはらんでいます。
付着性・流動性・帯電性の計測法
現場で実践される測定法
測定は標準化されているものから、現場独自の工夫まで幅広くあります。
付着性の測定
代表的な方法として「タッピング法」や「付着力試験器(Adhesion Tester)」が用いられます。
機器壁に定められた力で粉体を押し付け、剥がれる力(付着仕事)を測定します。
現場では、サンプリングした粉を実際の材質プレートに当てて付着量を目視測定するアナログ法も根強い人気があります。
流動性の測定
代表的なのは「アンゲラーカ角(安息角)」「ホールフロー試験」「シャーセル試験」などです。
安息角とは、粉体を積み上げた際の崩れることなく維持できる最大傾斜角です。
角度が小さいほど流動性が良いと判断されます。
帯電性の測定
粉体の帯電量は、「帯電電圧計」「コロナ放電試験」などで計測が可能です。
ただし、現場ではシートに粉体を撒き、帯電後の挙動や現象的な発火・付着で大まかな目安とされることも多いです。
制御・改善方法:現代技術とアナログ力の併用
付着性の制御策
装置内壁にテフロンやシリコンコーティングを施すことで、付着を抑制できます。
また粉塵の湿度低減や粒径均一化も有効です。
表面改質(表面活性剤や球形化)や材料選定、バイブレータ設置も伝統的な改善策です。
流動性の制御策
実際の現場では、粉体の乾燥(脱湿)や添加剤(フローエイド)による凝集防止が効果的です。
また、バイブレーションやパルスエアブローによる機器内流動促進も多用されます。
最近ではピエゾ式振動子や自動監視システムといったスマートデバイスの導入が進みつつあります。
帯電性の制御策
帯電によるトラブルを避けるため、荷電防止剤の添加、装置のアース接続、導電性材料でのホッパー内張り、イオナイザー(除電装置)を活用します。
静電気が発火源となるケースも多く、安全対策は徹底が求められます。
粉体ハンドリングのトラブル事例と現場での回避策
よくあるトラブル
・ホッパーから一切出てこなくなった
・混入品が除去できない
・静電気で作業者が感電する、火花が飛ぶ
いずれも、流動・付着・帯電トラブルが発端です。
回避策:予防保守と現場観察
経験から申し上げて、定期的な点検と経験者による現場観察が、トラブル未然回避のカギになります。
各種センサー(重量、圧力、帯電モニタ等)の設置も進めるべきです。
加えて、「異常の芽」を早期発見できるよう、日報やQC活動の継続が重要です。
サプライヤー・バイヤー・現場の三位一体での改善推進
アナログ文化が根強い工場現場においては、サプライヤーとバイヤー、現場オペレーターが一枚岩になって改善に取り組む必要があります。
バイヤーは原材料選定の眼力を磨き、粒度分布や表面処理有無などスペック面だけでなく実機での挙動にも常に目を配るべきです。
サプライヤーは、単にスペック提供にとどまらず、現場でのテストサポートや技術フォローまで踏み込むことで選ばれる取引先となれます。
現場オペレーターは、従来手法の良い点とDX・自動化の新機軸を組み合わせ、永遠の現場改善サイクルを力強く回す推進役です。
アナログからデジタルへ――昭和の知恵と令和の技術を融合せよ
粉体というのは、アナログで泥臭いハンドリングの積み重ねのうえに、AIやIoTによる最適化がようやく実現する領域です。
現場でしかわからない微妙な「粉体の挙動」を感知し、データと掛け合わせて最適解を導き出す――このラテラル思考が今こそ製造業を一段上の地平線に導きます。
最新装置の導入も重要ですが、現場感覚の維持と伝承、そしてサプライヤー・バイヤー・現場の連携が「粉体トラブルゼロ化」への唯一の道と言えるでしょう。
まとめ:粉体管理で製造現場は進化する
本記事では、粉体の物性理解から測定・制御法、そして現場での課題解決アプローチまでお伝えしました。
・日々進化する測定・制御技術と、昭和から受け継がれる現場力の両輪を意識した運用
・サプライヤー・バイヤー・現場の三位一体での共創的改善
・最新デバイスとアナログ知見の融合によるトラブルゼロ化
これらを徹底していくことが、製造業の未来を切り拓くカギになります。
今一度、自職場の粉体管理を見直し、「トラブルゼロ」の安定生産ラインを実現しましょう。
粉体技術の深化による日本ものづくりの進化に、ぜひ皆さまの現場知見をお役立てください。
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