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粉粒体の物性評価測定技術の基礎とその活用法

目次
はじめに:粉粒体物性評価が製造現場で重要視される理由
製造業の現場では、原材料や中間製品として扱うことの多い「粉体」や「粒体」――まとめて「粉粒体」と呼ばれる素材は、品質・歩留まり・生産効率に直結する極めて重要な存在です。
しかし、その物性(粒径、形状、流動性、圧縮性、含水率など)は複雑かつデリケートで、「目で見て」「手で触って」分かる範囲には限りがあります。
精度の高い製造や自動化、省人化、そしてサプライヤー・バイヤー間の信頼構築のためにも、粉粒体の物性評価技術への理解とその活用は今や避けて通れないテーマとなっています。
本記事では、私自身が20年以上にわたり現場で培ってきた知見も交え、粉粒体物性評価の基礎から、実践的な活用法、さらにデジタル化が進んだ最新動向まで、徹底的に解説します。
粉粒体の物性評価とは何か
粉粒体の物性──評価すべき主な項目
粉粒体とは、直径数ミクロンから数mm程度の粒子が集合した固体素材です。
その物性評価とは、以下のような性質を数値化して明らかにすることです。
・粒径(粒子サイズ、粒度分布)
・粒子形状(球状、棒状、フレーク状など)
・比表面積および孔径分布
・かさ密度、タップ密度
・流動性(流れやすさ)
・圧縮性、付着性
・含水率、吸湿性
これらは「外観」や「勘」だけでは正確な区別が難しい一方で、わずかな差異が
混合性、溶解性、焼結・成形特性、反応性、安全性など
様々な性能や工程品質に大きく影響を与えます。
なぜ物性評価が不可欠か
粉粒体の物性はサプライヤーごと、ロットごとに微妙に異なります。
商品開発や生産現場で
「なぜ今回は上手く成形できないのか」
「なぜ混ぜても均一にならないのか」
と悩んだ経験がある現場担当者は少なくありません。
受入検査や工程内管理で定量的な物性評価を「見える化」できていれば、
不良発生時の迅速な原因究明や
安定調達のための購入先評価
最適な粉体ハンドリング設備の設計
顧客・社内への説明責任
など、多くの面でリスクを低減できます。
また、粉粒体は只の「素材」ではなく、設計段階から「性能要件のひとつ」としてバイヤーとサプライヤーで合意しておくことで、安定的な取引やトレーサビリティの確保にも繋がります。
粉粒体物性の代表的な測定方法と原理
粉粒体の特性を数値化する技術は日進月歩であり、現場でもアナログと最新デジタルが混在しています。
代表的な測定方法を項目ごとに紹介します。
粒径・粒度分布の測定
・ふるい分け法(篩分析)
もっとも古典的ですが、ガラスビーズや大粒径粉体では今も根強い手法です。
複数のふるいを重ね、各網の通過量から粒度分布を得ます。
・レーザー回折・散乱法
微粉体に有効な測定法で、レーザー光を試料に当てて散乱光パターンから粒径分布を算出します。
数百ナノ~ミリ単位で高精度な測定が可能です。
現代では全自動タイプも多く、サプライヤー間で標準データとして活用されています。
・動的光散乱法
主に数百ナノ以下の微粒子用で、コロイド分散系や新素材の研究でよく用いられます。
形状評価
・光学顕微鏡やSEM観察
2次元画像から真円率などを算出する、現場でもなじみの深い方法です。
AI画像解析を組み合わせて自動測定に活用されるケースも増えています。
流動性の評価
・アンゲラ法、ホールフロー法
粉体が所定の穴からどの程度の速度(または質量)で流れるかを調べます。
・安息角法
粉体を山積みしたときの傾斜角で流れ性の良し悪しを見ます。
単純ながら、輸送・サイロ投入口設計など現場で多用されています。
・振動式レオメーター
より精緻な流動性評価法として導入が進んでおり、製剤や食品分野でも利用されています。
かさ密度、タップ密度、圧縮性
JIS規格に準拠した測定シリンダーで体積・重さから計算します。
徐々に自動化装置も普及しており、バイヤーの受入スペックにも設定されやすい項目です。
含水率・吸湿性の評価
・加熱減量法
サンプルを加熱し、減った質量分(揮発した水分)を計測します。
・カールフィッシャー滴定
微量の水分も高感度で測定でき、医薬品や高分子素材などで多用されます。
現場での物性評価の活用法──実践的視点で解説
受入れ時の「バイヤー基準」としての物性評価
バイヤーの立場では、
「単価の安い粉体を採用したが、流動性が悪く投入装置で詰まった」
「見た目は同じだが、焼結体の強度が安定しない」
など、価格やメーカー情報だけでは見抜けない課題が生まれがちです。
これらは、取引開始時点で
「粒度分布の許容範囲」「かさ密度の公差」「吸湿率の最大値」
といった物性スペックをQCDR(品質・コスト・納期・リスク)の枠組みで
明確に取り決めて契約条件に組み込むことで、トラブルリスクを極小化できます。
安定調達と不良削減の両立のために、サプライヤー側にも測定法と管理限界値を開示してもらうことが大切です。
工程内管理・品質保証部門での役割
粉粒体を扱う工程は想像以上にバラツキが生まれやすく、昼夜で温湿度が変動するだけでも流動性や詰まり具合が変わることがあります。
物性評価装置を定期点検・キャリブレーションと共に使いこなし、
「不良が増えた…?何が原因か?」
という時には現場担当者と協働してデータ分析する文化を根付かせることが重要です。
全社横断で同じ測定基準を使う、IoT化した測定装置のデータをAIで解析する、など
物性評価を「見える化」して、生産性と品質保証を両立させる工夫も求められます。
新規材料開発・工程設計段階での応用
新しい粉体やサプライヤーを試す段階でも、物性評価データが「企画・開発部門」に欠かせません。
例えば
・圧縮成形用なら、最適な粒径・かさ密度を設計値として指定
・混合工程があるなら、異なる粒度分布での混合均一性を事前検証
・食品分野や医薬品分野なら、吸湿性や含水率、衛生リスクを評価
複数のサプライヤー候補を同一仕様で比較することで、根拠ある選定・購買判断ができます。
アナログからの脱却:デジタル技術と連携する物性評価
デジタル化が切り拓く新たな現場
IoT・センサー技術・AIの進化により、粉粒体の物性評価も大きく進化しています。
・リアルタイムモニタリング
ライン内に粒径測定機やセンサーを組み込み、連続してデータを取得・分析することで、
「規格外粉体の混入」や「粉体流動の異常」発生を即座に検知できます。
・AIによる外観判別・不良予測
微細な粒径・粒度分布の変化を学習し、「将来のトラブル」を予測した保守や設備点検が実現し始めています。
・クラウドシステムによるデータ共有
バイヤー・サプライヤー間で物性評価データをリアルタイム共有することで、
「サンプルと量産品でばらつきが大きい」「現場のデータ信憑性が分からない」
といった従来の不安を大幅に低減できる時代が到来しています。
サプライヤー・バイヤー相互理解のために──業界の現状課題と展望
昭和から続くアナログ現場では「慣習」「経験則」が依然として根強く残っていますが、
グローバル化や人手不足、機能材料の高度化が進む中で
「物性データで語る」文化への転換が不可欠です。
サプライヤーは
「自社でどこまで測定・管理できるのか」「バイヤーが本当に求めている基準は何なのか」
を発信・提案し、信頼性・一貫性のある納品を心がける必要があります。
バイヤーは
「現場で起きている問題」と「測定データの本質」とを繋げて判断し、変動要因を理解した柔軟なサプライヤーマネジメントが求められます。
まとめ:現場起点の物性評価こそ、製造業の新しい価値基準
粉粒体の物性評価技術は、単なる品質管理に留まらず
・高効率生産
・サプライチェーン全体の最適化
・顧客や消費者への安心・安全の提供
・競争力のある新素材・新製品開発
につながる不可欠な基盤です。
「データで語れる製造現場」を目指して、
現場担当者、バイヤー、サプライヤーが物性評価技術を共通言語として活用し、
従来の慣習や直感を「根拠あるデータ」に置き換えていくことが、
これからの製造業において発展のカギを握ります。
現場のリアルを知る皆さんとともに、粉粒体物性評価の力を最大限に活かした現場つくりを進めていきましょう。
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