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超音波接合技術の基礎と溶着機活用による固相接合の製品応用ノウハウ

目次
はじめに
製造業の進化は、素材や加工技術の革新とともに歩んできました。
その中でも、「超音波接合技術」は、従来のアーク溶接やはんだ付けなどの熱加工法とは異なる“固相接合”という原理で注目される先端技術です。
深化する軽量化・高機能化へのニーズに応え、電子部品、自動車、医療機器、パッケージ分野など広範な製品分野で着実に応用範囲を拡大しています。
この記事では、長年にわたり現場で体感し続けてきた超音波接合技術の基礎、溶着機導入・運用ノウハウ、成功するためのポイントと、昭和的なアナログ手法が依然として根強い業界の風土の中での実践的アプローチについて、現場目線で掘り下げていきます。
超音波接合技術とは
固相接合の原理と特徴
超音波接合は、金属や樹脂を高周波(一般に20kHz~40kHz程度)の超音波振動により強く押し付けながら、摩擦による分子間結合で接合する技術です。
ここで重要なのは、“被接合材が溶融せず、固体同士のまま接着する”という「固相接合」という点です。
従来のアーク溶接・レーザー溶接では局部加熱により材料を溶かしますが、超音波接合では材料を溶かさないため、
・熱影響による材料劣化が起きにくい
・異種材料(例:アルミと銅など)も接合しやすい
・接合時間が短く、高速化・自動化に適する
などのメリットがあります。
特に省エネ志向が高まる昨今、自動車や電池分野ではアルミ圧着端子やハーネス結合など、接合部に熱やスパッタの影響を残したくない用途で重用されています。
超音波溶着と超音波圧着
超音波技術は材料によって呼び名や応用法が異なります。
主に以下の二つに分類されます。
1. 超音波溶着(プラスチック溶着、Ultrasonic Welding)
樹脂製品同士を強く密着させ、超音波で部分加熱することで材料同士を“溶かして”固定します。
自動車のバンパー、家電のパーツ、医療容器の密封などで多用されます。
2. 超音波圧着(Ultrasonic Bonding, Ultrasonic Metal Welding)
アルミや銅などの金属線・金属薄板同士を高圧+超音波振動で“滑り合わせ”、分子レベルで接合します。
ハーネス端子、リチウムイオン電池のタブ結合、LEDのワイヤーボンディングなどが代表例です。
ここでは主に金属の超音波圧着(固相接合)を中心に実践面を解説します。
なぜ今、超音波固相接合なのか
一歩先のものづくり課題に直結
固相接合技術は、以下のような産業上の重要課題にフィットしています。
・従来工法では困難な“異種金属接合”市場の拡大
・生産性と高信頼性が要求されるEV、バッテリー分野での量産化
・従来工法でネックだった“熱変形・熱影響部(HAZ)”低減ニーズへの対応
・ミニマルファブ(セル生産・分散型生産)志向による小型省力型溶着ライン構築
実際、EVバッテリー、アルミハーネス、医療用小型センサー、樹脂と金属の複合加工など、5年前までは考えられなかったような「新しいものづくり」の現場で加速度的に導入が進んでいます。
アナログ派の現場でこそ活きる超音波接合
「設備投資に慎重、現場職人の手技が命、図面変更は難色…」
こうした保守的な昭和型アナログ工場でも、超音波溶着は「段取り簡素化・手直し低減・品質バラツキ抑制」に直結するため、実は恩恵が大きいです。
手作業でのはんだ付け・スポット溶接の代替として、1ラインだけでも試験的に導入する動きが急増しています。
超音波接合溶着機の導入・運用ノウハウ
溶着機の基本構成と選定ポイント
超音波接合システムは、主に下記の要素で構成されます。
・ジェネレーター(超音波発振器)
・ブースター&ホーン(振動を所定形状に伝える工具)
・加圧ユニット(サーボXY加圧、エアシリンダ式等)
・ワーク治具・搬送機構(ローダー、ロボットアーム併用等)
溶着機選定時の現場目線チェックポイントは以下です。
・ワーク材料・形状・サイズに合ったホーン形状か
・1サイクルあたりの溶着時間と処理能力
・長期運用時の加圧安定性、ホーン摩耗対応のしやすさ
・各種パラメータ(周波数、振幅、加圧力)がラインで自在に管理できるか
・治具・ホーン交換の容易さ(段取り替えの手間)
・現場作業者による目視点検・清掃・保守のしやすさ
盛んに謳われるIoT対応より、まずは「現場がそのまま使いこなせるか」という点こそ失敗や現場反発を防ぐための肝です。
品質管理面の勘所:可視化・トレーサビリティ
超音波接合は一見“チリひとつなく美しい仕上がり”に見えても、内部的に十分な金属塑性流動や結晶粒結合が生じていない場合があります。
現場では以下の品質チェックが求められます。
・事前治具合わせ(ホーンとワークのアライメント精度調整)
・溶着部の外観・断面観察(場合によりマイクロスコープ解析も)
・接合部の引張試験(強度検査)
・溶着パラメータ(加圧力・振幅・時間・OK/NG判定履歴)の全数記録
最新のAI検査装置搭載まではいかなくとも、「作業現場で誰でも確認できる仕組み」を仕込んでおくことが成功への第一歩です。
成功する実践プロセスと落とし穴
パイロット導入と段階的スケールアップ
優れた溶着技術・設備も、熟成現場といきなり“フルスイッチ”は失敗の元です。
既存工法(例えばカシメやはんだ)との品質比較を一段階ずつ進め、信頼値を体感してもらうプロセスが重要です。
(1) 既存工法との強度・仕上げ差、歩留まり差の評価
(2) 繰返し作業による品質のバラツキ把握(ヒューマンエラー低減の検証)
(3) 作業者の作業負荷軽減・段取り性・ラインスピード評価
(4) 万一の不具合発生時の現場対処(復旧可否、交換部品コスト)
この“現場ジャッジ”フェーズを乗り越えないと、「新規設備が荷の重い不良発生装置」としてレッテルを貼られるリスクもあります。
ホーン磨耗・メンテナンス性の落とし穴
超音波ホーンや治具は長期使用で磨耗します。
磨耗が進むと接合品質のバラツキや不良率上昇の原因になるため、
・定期的なホーン摩耗検査と予防交換
・交換後の再セッティング工程標準化
・消耗品ストックの最適化
が重要です。
さらに廃盤部品への依存(昭和工場でよくある「この型番でしか動かない!」問題)には早期から代替部品・加工先の確保策を講じる必要があります。
サプライヤー営業・バイヤーの攻めと守り
サプライヤー営業の超音波技術活用トーク術
サプライヤー営業担当として「超音波接合」の案件拡大を狙うなら、現場の課題感(歩留まり、設備老朽化、多能工志向、省力化)を会話の入口にし、
・既存工法と比較した「分かりやすい省力化・コストダウン事例」
・初期導入試験への技術サポート(治具貸出、テスト加工無料等)
・ライン現場への簡易教育サポート
を提案内容に盛り込むのが効果的です。
加えて“SDGs貢献(省エネ、廃棄物削減)”をやや大げさにアピールすることで現場の「守り」だけではなく「攻め」の理由付けもできます。
バイヤー視点:固相接合導入時のチェックポイント
バイヤーが超音波接合を新規ライン・既存リプレイスで導入する場合、
・3社以上の相見積・テスト加工実績比較
・対象ワークでの耐久試験(連続運転、加圧・外力試験)
・長期運用時の総コスト(消耗品・メンテ・サポート含む)対比
・トラブル発生時の現地対応力、部品調達スピード
・業界内での他社導入実績・ノウハウの有無
を重視します。
特に昭和型アナログ現場では「不具合発生時に誰がどう立ち会い修理に来てくれるか?」が意思決定を左右する大きな要素となっています。
まとめ:超音波接合技術の未来を拓く現場力
超音波接合は、省エネ・高信頼・高効率という現代の製造業が抱える課題解決と直結する先端技術でありながら、「操作の簡便さ」「段取り替えの柔軟さ」「現場技術者への教育負荷の小ささ」という泥臭い現場目線のメリットも持ち合わせています。
技術進化のスピードは年々加速していますが、変化に臆病なアナログ現場との“境目”にこそ新しい市場や商品開発の芽が眠っています。
現場で実際に汗をかいた経験から断言できることは一つです。
「まずは小さく始めてみること。思ったより手軽で、思った以上にメリットが大きい」――
これが、製造業の新しい競争力を芽吹かせるカギになります。
今こそ、現場の知恵と最先端技術を掛け合わせ、日本のものづくりを再興していく一員になっていきましょう。
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