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OEMパーカーの型崩れを防ぐ裁断と縫製技術の裏側

目次
はじめに:OEMパーカーの品質を左右する要素とは
パーカーはカジュアルにもスポーティにも着こなせるアイテムとして、幅広い層から支持されています。
とりわけアパレルOEM(相手先ブランド製造)では、ブランド独自のデザインや着心地に加え、耐久性・型崩れのしにくさが重視されます。
OEMで扱うパーカーの多くは、仕様書通りに正確に仕上げるのはもちろん、着用後もくたびれずに型崩れしないことがユーザーの満足度やブランドの信頼に直結します。
しかし、現場目線で見ると「型崩れ防止」は簡単なようで難しく、特に昭和からのアナログな技術体系やコスト優先志向が強く残る工場現場では、些細な工夫が大きな差を生みます。
この記事ではOEMパーカーにおける、裁断と縫製のテクニックと現場のリアル、そしてアナログ業界の現実を交えながら、実践的な品質向上のヒントを深掘りします。
型崩れ防止のカギを握る「裁断」の工程
1. 生地の目と方向性を見極める
パーカーの型崩れにおいて最初の分岐点は「裁断」です。
現場で長年働いてきて痛感したのは、裁断で生地の目(織りの方向性)を正確に合わせることが、後戻りできない重要ポイントになるという現実です。
特にスウェット地や裏毛、裏起毛などの伸縮性が高い生地では「地の目通し(パターン通りに生地目線で裁断する)」が狂うと、着用や洗濯ごとにヨレたり斜行したりしてしまいます。
昔の現場では大型の裁断機だけで大量に重ねて一気に裁断していましたが、伸縮生地の場合は特に、裁断台の下に滑り止めマットを敷いたり、生地を寝かしてテンションを抜いたりといった「ひと手間」が大切です。
「効率」を重視しすぎた結果、数ミリ単位のズレが後の型崩れや縫製の歪みとなって現れます。
2. 型紙(パターン)の精度が“骨格”を作る
OEMパーカーの仕様書では型紙の精度を示す寸法指示が重要視されます。
でも現場でありがちなのは、仕様を守ろうとするあまりパターン最優先で裁断し、現物の生地の特性を無視するケース。
例えば伸縮方向が異なる生地や、プリント・刺繍が施される前提のものだと、パターン通りでも実際にはツレや型崩れが起こります。
ベテランの現場スタッフは、パターンだけでなく生地の収縮率や厚みに応じて「捨てのり分」や「縮み分」を臨機応変に加減しています。
パソコンで設計した2Dの図面は理想形でも、現物は3D立体物です。
この「地の目」「生地の癖」「仕上がりの姿」をイメージして微調整する力が、OEMパーカーの品質には不可欠です。
3. ミリ単位の管理と現場力
型崩れ防止は「たった数ミリ」の誤差をいかに防ぐか、現場の「癖」をどう修正するかに集約されます。
アナログ現場でも、定規や方眼紙を使いながら、真っすぐ・正確な裁断を毎回繰り返す“習慣”が精度を支えます。
この地道な管理が積み重なり、たとえ見えない裏側の縫い目であっても違いが生まれます。
縫製現場で守るべき「3つの型崩れ防止策」
1. 糸の選定は“耐久性”のカギ
パーカーに使う縫い糸は、断ち切り部分が伸縮する箇所や、フード・ポケット周りなどストレスがかかりやすい所に耐久性を求められます。
ここで油断しがちなのが「コストダウン」の罠。
現場の実感として、低コスト糸は短期間で毛羽立ちが目立ったり、縫い負けしやすいという課題があります。
パーカーは何回も着脱・洗濯を繰り返すため、伸縮性だけでなく耐摩耗性、色落ちに強い糸や芯入り糸の選定が大切です。
2. ステッチの種類・間隔・縫い代処理がシルエットを左右
パーカーのシルエットを保つには「縫い代の割り方」「ステッチの種類」「間隔」などの微調整がカギです。
特に肩線やアームホールの縫い代を割るとき、ヘム(裾)や袖口のリブ付け部分などは、縫い代を適度な幅にカットし重なりすぎないように仕上げる必要があります。
また、見た目だけでなく、縫い合わせた箇所の「ギャザー」や「シワ溜まり」が表に響かないよう、圧着テープや芯地で補強を加えるのも一手。
縫製のテンション管理が不足すると型崩れや波打ちが生じるため、「現場の縫製者の熟練度」こそ差が出るポイントです。
3. 仕上げプレス(アイロン)工程が最後のバランサー
意外と見落とされがちなのが、縫製後の「仕上げプレス」です。
裁断・縫製をいくら丁寧に行っても、最後のプレスでシルエットを整えなければ意味がありません。
特にパーカーの肩傾斜やフードの立体感は、適温・適圧のプレスを加えることで本来の風合いが出ます。
アナログ現場ならではの「職人アイロン」の妙技で、型崩れリスクをぐっと下げることが可能です。
昭和的アナログ現場と最新テクノロジーの融合
現場の“ベテラン勘”とデジタル技術の共存
昭和から続く多くのアパレル工場では、いまだに“ベテラン職人の勘”がものをいう場面が少なくありません。
特にOEM案件は数量が多く、品種も多様なため、毎回ゼロベースで型崩れ予防策を再設計することは困難です。
しかし最近は、CAD(コンピュータ設計)によるパターン自動化や、自動裁断機による精密切断、AIによる不良検知などのイノベーションも導入されつつあります。
現場として重要なのは、単に機械に頼り切るのではなく、ベテランの目視・触感・経験をデジタル管理値で“補完”し合う体制を作ること。
「最後の仕上げは人がチェック」「調整は職人の経験から生まれる工夫」—こうした現場力こそがOEMパーカーの型崩れ防止に欠かせないアナログ的知恵です。
型崩れ防止の「共有ナレッジ」化が現場を進化させる
また、型崩れを防ぐためのノウハウを属人化させず、QC工程表や作業マニュアルとして「見える化」して共有することも重要です。
問題が起きた際には「なぜ型崩れが発生したのか」「どの工程で差異が出たのか」を振り返り、フィードバックできる現場体制がOEM品質向上の礎となります。
バイヤー・サプライヤーの観点:型崩れ防止がもたらす価値
OEMビジネスで成功するには、バイヤー(発注側)もサプライヤー(工場側)も「型崩れ防止」の本質的な価値を理解している必要があります。
バイヤー視点では、商品の「風合い」、洗濯後の「型崩れしなさ」、レビューで頻繁に指摘される「膝抜け」「リブの緩み」が最終ユーザーの満足度を左右します。
価格だけでは測れないブランド価値の根本が「見えない品質」に宿っているのです。
従って、現場へのフィードバック体制を作ることで、解決すべき品質課題を明確にしてサプライヤーと“品質意識”を共有することが大切です。
一方、サプライヤーとしては数ある案件を効率よくこなす必要がある一方で、「型崩れ防止こそがブランド維持の柱」という覚悟を持ち生産にあたる必要があります。
すなわち、裁断・縫製のひと手間や、糸・芯地の選定、仕上げ工程の丁寧さは、“付加価値”として交渉材料にすることも可能です。
まとめ:型崩れ防止の本質は「現場と設計の融合」
OEMパーカーの型崩れ防止には、裁断時の丁寧な地の目合わせ、縫製現場のひと手間、糸や芯地など素材選びの「見えない努力」が集約されています。
昭和的なアナログ現場のノウハウと、最新テクノロジーをいかに融合させ、“型崩れしないパーカー”を安定供給できる仕組みを作るかが、これからのOEMサプライヤーの大きな価値です。
バイヤーとサプライヤー、どちらの立場でも、「型崩れ防止」という一手間を軽んじず現場の工夫を積極的に取り入れることで、ブランド価値を高め、生産現場全体のレベル向上も実現していきましょう。
こうした小さな積み重ねが、日本の製造業の底力となり、新たな地平線を切り拓く力になるはずです。
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