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BGA CSP実装基板の故障診断と実装不良の改善策

目次
BGA・CSP実装基板の故障診断と実装不良の改善策
BGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Scale Package)は、近年の電子機器の高密度実装化に欠かせないパッケージング技術です。
その一方で、実装基板における故障や不良が発生すると、判別や対策が難しく、生産現場では多くの課題が発生しています。
特に、昭和的な感覚や現場作業が色濃く残るアナログな環境下では、トラブル発生時の一次対応・真因特定・抜本的な改善までのプロセスがブラックボックス化しやすい傾向があります。
この記事では、BGA・CSP実装基板のよくある故障・不良現象、その実践的な診断方法、改善策を現場目線で解説します。
また、バイヤーとサプライヤーそれぞれの立ち位置を意識し、取引先との連携やサプライチェーンに与える影響についても触れていきます。
BGA・CSP実装基板における代表的な故障・不良とは
はんだ接続不良:オープン、ショート、クラック
BGAやCSPはんだボールによる実装は、従来型リード部品と異なり、実装基板とチップの間が見えません。
そのため、はんだ付け部の物理的な接続不良が発生すると、目視確認だけでは判別できません。
主な不良としては、オープン(断線)、ショート(短絡)、クラック(ひび割れ)が挙げられます。
これらの症状は、基板の加熱・冷却による熱膨張差、実装工程のボイド(空洞)やはんだ量不良、マウンタやリフロー装置の設定ミスが主な原因となります。
パッドリフト・剥離
アンダーフィルなしでの強い外力や基板ストレス、不適切なリワーク作業により、基板側のパッドが剥がれる「パッドリフト」も発生します。
これは、修理対応やリワーク時にもっとも注意が必要な現象です。
ボイド(空洞)や内在異物混入
はんだ部内部に生じるボイドやフラックス残渣などの異物混入は、長期信頼性を損ないます。
目に見えにくいがために、X線検査や非破壊検査の徹底が必要です。
BGA・CSP基板故障の診断方法と現場でのポイント
X線検査による非破壊確認
BGAやCSP実装基板の検査では、X線透過装置による内部観察が主流です。
・はんだボールの形状・位置ずれ
・ボイドの有無や大きさ
・オープン/ショート箇所の推定
などがX線装置により非破壊で評価できます。
ただし熟練の検査員でも判断基準がぶれる場合があるため、AIによる画像解析の活用や、明確な判定基準作りが現場改善の要です。
電気特性検査
ファンクションテスターやインサーキットテスターで、BGA回路の導通、絶縁状態をチェックします。
実装後すぐの検査は見逃しが防げますが、組立後の加熱・冷却ストレスを受けた後(=実際の使用環境でのストレス)で不良が発覚することも多いため、熱サイクル後の再チェックも重要です。
リワーク・デカップリングによる破壊解析
最終手段として、基板からBGA・CSPを取り外し、現物解析(断面観察・はんだウェット性評価など)を行います。
この際、現場作業者とのコミュニケーションや、取り外し工程の手順書整備が肝要です。
誤ったリワーク工程は、パッドリフトやさらなるダメージをもたらすためです。
現場目線による実装不良の具体的な改善策
リフロー温度プロファイルの最適化
BGAやCSPはんだ付けの品質は、リフロー工程の温度プロファイルに大きく依存します。
部品点数の多い基板は、温度ムラや熱容量の違いにより、うまくはんだが濡れないことが多発します。
最適なプロファイル設計にあたり、「実装現場でのサーモカップルによる多点温度計測」「基板試作品による実測テスト」を重ねることが効果的です。
また、面倒で敬遠されがちな温度プロファイルの定期的見直しも、“昭和的現場”から一歩抜け出すための近道です。
はんだペースト管理・印刷精度向上
はんだペーストの粘度・保存状態・印刷量精度も不良削減の肝です。
特にBGAなどの高密度パッドでは、微小な印刷ズレが致命的になります。
生産計画にゆとりを持たせ、ペーストの攪拌・印刷版の洗浄頻度・定量的な印刷厚みの管理といった基本動作の再徹底が不可欠です。
リワーク技術者の育成と作業標準化
リワーク時にパッドリフトなどの二次不良が頻発する現場では、「リワーク専任のベテラン技術者」を育てること。
具体的な標準作業手順書の整備と属人化回避。
動画を含むトレーニングや定期評価制度導入も、新旧融合型の現場改善として有効です。
バイヤー・サプライヤー両者に必要な視点
設計段階からの品質作り込み
バイヤー(購買担当者)は、サプライヤー任せにせず「部品・基板設計時点から実装性・評価性(検査のしやすさ)」を意識することが重要です。
例えば、BGAのピッチやボール径選定、パッド設計、公差に関しても、お互いがしっかり意見を出せる体制が不良ゼロ化に直結します。
サプライヤー側も「使いやすい部品・実装性の高い部品開発」を意識し、量産現場の声・バイヤーの課題を積極的に吸い上げることが信頼につながります。
現場トラブルのオープンな情報共有
昭和の時代はいわゆる“隠ぺい体質”や“現場でなんとかしてしまう”文化が支配していました。
しかし、高密度実装・高機能化が進む中、現場起点のプロセス情報・不具合情報をリアルタイムでサプライチェーン全体で共有することが重要です。
MESや品質管理システムの活用、“見える化”による要因特定・早期対策は、これからの時代の必須条件となります。
SupplierとBuyerで責任領域を明確に
トラブル発生時、「どこからがSupplierの責任で、どこからがBuyerの責任か」で揉めることがよくあります。
故障診断・解析の初期情報は誰が主導するか、現場での一次切り分けはどちらが担うか、契約・パートナーシップ段階から明示することで、後工程含めたロスを大きく減らせます。
不良発生時には「責任追及」よりも「なぜ起きたか」に全力を注ぐ文化作りも、双方の生産性向上に有効です。
昭和的現場をアップデートするためのラテラルシンキング
現場に染みついた昭和的慣習——「勘と経験」は大事ですが、今のBGA・CSPなどの高密度実装に通用しない場面が増えています。
現代の製造業に求められるのは、デジタルとアナログの融合による“ラテラルシンキング”、つまり横断的・創造的な課題解決です。
たとえば、
・AIと連携した外観・X線検査判定の標準化
・“現場の勘”をナレッジ化しシステム共有するしくみ
・設計段階に現場技術者が関与する体制
・SupplierとBuyer双方の現場体験型ワークショップ
・即時トラブルシュートと一次切り分け手法の標準化
これらは、単に最新技術を導入するだけでなく、「ヒトの暗黙知」×「デジタルデータ化」により、生産現場の“現状維持バイアス”から脱却するきっかけとなります。
まとめ:BGA・CSP基板故障診断と不良ゼロへ向けた実践
BGAやCSPの基板実装で発生する故障や不良は、見えない場所で起きているがゆえに根深い問題です。
しかし、「現場で起きていることを掘り下げて可視化する」「アナログとデジタルを融合し自己流からの脱却を図る」「バイヤー・サプライヤー双方が視座を高く持つ」ことが、実装不良ゼロを実現する最大のカギとなります。
現場力と発想力、オープンな情報共有をフル活用して、令和のものづくりの課題を着実にクリアしていきましょう。
本記事が、製造現場の皆様や、バイヤー/サプライヤーとして品質・コスト・納期に挑む方々の課題解決のヒントとなれば幸いです。
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