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自転車ヘルメットOEMで安全規格を満たしつつ軽量化する開発フロー

目次
はじめに:自転車ヘルメットOEM開発の現状と課題
自転車ヘルメットのOEM開発は、競争が激しい分野です。
この数年で自転車利用者の増加とともに、より高い安全性と快適性が求められるようになっています。
一方で、いまだに昭和時代のアナログなモノづくり文化が根強く残り、「安全規格は守るが重たい」「軽量化したが価格が高すぎる」「OEM依頼先の選び方がわからない」といった悩みを抱える業界担当者が多いのが現状です。
この記事では、調達購買・生産管理・品質保証の現場経験を踏まえ、OEMにおける自転車ヘルメットの開発フロー、現場でのリアルな課題、そして「安全規格を満たしつつ軽量化」というニーズをどう実現するか、その戦略的アプローチを解説します。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーとしてOEMを受託したい方、そして現場で苦労している皆さまへ、理論と実践の両輪で知識を提供します。
自転車ヘルメットOEMの安全規格とは何か
主な国際・国内規格
自転車ヘルメットには、世界的に複数の安全規格があります。
代表的なのは以下の3つです。
– 日本:SG規格(JIS T 8134等 )
– 欧州:CE EN1078規格
– 米国:CPSC規格
いずれも転倒時の頭部保護性能、ストラップの強度、視界を遮らない構造、容易な脱着性が求められ、出荷前に厳しい検査が行われます。
OEM開発では、どの国に販売するのかによって取得すべき認証規格が異なります。
グローバル調達担当者は、仕様書を策定する段階で必ず各国規格の細部まで調査しておきましょう。
重量の壁と規格要件のジレンマ
安全規格の試験方法は、たとえば落下衝撃試験や貫通試験といった物理的な「強さ」が求められる内容です。
しかし衝撃性能を高めるほど発泡材の厚みや外殻の強化が必要になり、どうしても重量が増してしまいます。
逆に「軽さ」を優先しすぎると、基準を満たせなくなります。
この「ジレンマ」を乗り越え、かつ市場ニーズ(軽さ・格好良さ・コスト・ブランド性など)を両立する必要があります。
OEM開発フローの全体像とポイント
1. OEM先選定と初期仕様策定
バイヤーとしてまず重要なのが、適切なOEM先(サプライヤー)の選定です。
以下の観点で選びましょう。
– 過去に各種国際安全認証を取得した実績があるか
– 材料・工程・品質保証体制が明確か
– 開発段階での技術提案力が高いか
– 小ロット〜量産対応力、納期遵守力があるか
並行して、ターゲット市場、販売価格帯、求めるデザイン・機能・重量目標・必要な安全規格等を仕様書としてまとめます。
この初期仕様の詰めが甘いと、後工程で手戻りが多くなり、コスト増や納期遅延、認証取得失敗のリスクが高まります。
2. 設計・素材選定の実践ポイント
設計段階で差がつくのが、「どこまで軽量素材・新工法を使えるか」「伝統的工程×現代技術をどうブレンドするか」です。
具体的には、
– シェル(外殻)の材料:従来のABS樹脂やポリカーボネートから、カーボン複合材、強化ポリプロピレンなどへ。
– 緩衝材:EPS単一から、発泡材料の複層構造・新規高機能発泡樹脂への置き換え。
– 内装材:吸水速乾・抗菌・通気性・軽量性全てを満たすファブリックの選定。
このときOEMサプライヤーの開発・工場技術者の「現場知見」もよく聞き出しましょう。
「昨年、欧州市場向けでこの樹脂が通った」「国産のこの材料メーカーが最近品質を上げてきている」など、バイヤーだけでは得られない現場情報こそ、品質と軽量化の両立に不可欠です。
3. 試作・検証の現場でのリアル
OEMメーカーと仕様打合せ、設計、試作に進む段階で注意したいのは「机上と現場のズレをどう埋めるか」です。
– CAD設計値通りには成型できない現場課題
– 新素材導入時の不良発生、金型改造の必要性
– OEM工場の作業者教育、日中の文化理解ギャップ
このような昭和的とも言える“現場合理化の壁”は、図面や数値だけでは乗り越えられません。
実際にサンプルを何度も現場で被り、落とし、壊しながら「本当に壊れない最軽量仕様」を追求します。
多くのOEM先では月に1〜2度、現地工場で定期進捗会議や評価テストを行います。
この際、現場の職人や品質担当と直接コミュニケーションし、
– なぜこの箇所で破損したか
– どこまで肉厚を薄くできるか
– 工程を追加してコスト上昇しないか
など、本音レベルの議論を丁寧に重ねましょう。
ここで妥協せず「作り直し指示」を出せるのが、調達購買プロとしての最大の腕の見せ所です。
4. 安全規格・認証試験の取得ステップ
OEM製品として市場に出すためには、必ず各種安全規格の認証試験に合格しなければなりません。
– 自社または指定試験機関での試験計画立案
– 落下、貫通、あご紐強度など各種テスト
– 不具合発生時の即時フィードバックと設計修正
このサイクルでは「一発合格」はほぼありません。
3回・4回と細かな調整と再試験を根気強く繰り返します。
ここで検証プロセスを妥協すると、重大リコールや出荷停止といった経営リスクに直結しますので、購買担当も最後まで密着しましょう。
現場での軽量化施策:ラテラルシンキングのすすめ
素材の進化をどう活かすべきか
グローバルなサプライチェーンを活かし、従来品を超える軽さを実現するには、素材革命がヒントになります。
たとえばカーボンマトリクスや新開発のハイブリッド発泡体は、従来のABSやEPSより強度対重量比が大幅に向上しています。
また、欧米では「発泡コア+カーボン外層+インモールド加工」の組み合わせが主流になりつつあり、日本のOEMでも全検討すべき工法です。
アナログ現場の知見を活かすポイント
最新技術を使うだけではなく、長年の「職人の目」を戦略的に活かす発想も重要です。
たとえば
– 塗装やデカールの方法を変え、副資材の重量を徹底削減
– バンド、パッド固定具の縫製や接着剤の種類を再検討
– 現地調達品の“実測重量”を細かく記録し、全体最適化
現場を歩き、作業工程や使われている副資材をすべてリストアップし「不要なものを徹底的に削る」という地道な努力こそ、データだけでは見えない軽量化成功の鍵です。
「使い心地」を体感し分析する
最終的に「軽さ」だけにこだわるのでは不十分です。
実際に装着してみて、
– 長時間かぶっても首や肩が凝らない
– 日本人の頭型に合うフィット感
– 通気性と汗の抜けが良い内装
こうしたユーザー視点での評価を必ず現場検証・被験者モニターテストで確認しましょう。
いくら軽くても使いにくければ市場で競争力を失います。
サプライヤーとしてもバイヤーとしても、「数値」と「体感」双方のデータを取り、説得力ある根拠を企画書に落とし込むのがプロの仕事です。
品質保証体制とリスク管理
OEMの現場では設計段階の工夫だけでなく、量産後の品質保証が重要です。
– 生産初期流動管理(量産立上げ時の全数検査、X線・寸法測定など)
– ランダム抜取の恒常的実施(材料ロット管理や仕掛品監査)
– クレーム対応フロー(市場トラブル時の初動対応訓練)
近年は中国・東南アジア工場からの供給が多くなりましたが、現地スタッフの品質教育や定例会議の設計・運用もバイヤーやサプライヤーにとって大きな腕の見せ所です。
まとめ:安全と軽量化の“両立”を現場力で実現する
自転車ヘルメットOEM開発は「安全規格を満たしつつ軽量化」という一見両立しづらいゴールを実現する難しさがあります。
しかし、現場の知恵とラテラルシンキングを掛け合わせることで、新素材・設計・工程改善・品質保証まで最適解に近づけます。
バイヤー・サプライヤー双方が「現場で本当に役立つ知見」を持ち寄り、古い常識にとらわれず、新しい挑戦・工夫を続けることが、今後日本のものづくり、そしてグローバル市場での差別化に繋がっていきます。
製造業の現場で日々奮闘しているみなさまが、 OEMヘルメット分野で安全×軽量×快適性の新たなスタンダードを生み出すことを期待しています。
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