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ポリエステル素材にスクリーン印刷するためのブリード対策とバリア層処理

目次
はじめに
ポリエステル素材は、耐久性や発色性に優れることから、ユニフォームやスポーツウェア、バナーやグッズなど、さまざまな製品に幅広く活用されています。
一方で、スクリーン印刷を施す際、インクの「ブリード(色滲み)」や、素材にインクが定着しにくいという難点に直面することもしばしばです。
特に昭和のアナログ全盛期から脱却できていない企業や、中小規模の現場では、こうした課題の解決策が共有されにくいという問題があります。
本記事では、現場目線・実践目線で、ポリエステル素材にスクリーン印刷を施す際のブリード対策やバリア層処理の手法、具体的な事例、そして最新の業界動向までを深く掘り下げて詳しく解説していきます。
なぜポリエステルへのスクリーン印刷で「ブリード」が起きるのか
ポリエステル素材の特徴を押さえる
ポリエステルは、化学的に安定した合成繊維で、吸水率が低いという特性があります。
このため、スクリーン印刷で多用されるインク、特に水性インクや溶剤系インクに対して「インクが繊維表面にしっかり乗らない」「顔料や染料が繊維内部へ移行しやすい」という現象が発生します。
また、ポリエステル素材自体が高温処理による昇華染色(昇華転写など)で着色されているケースが多く、これが「ブリード(滲み)」の温床となります。
ブリード現象のメカニズム
ブリードとは、印刷インクが布地に吸収されたり、逆に下地の染料がインクへ移動したりして、本来の発色やエッジが損なわれてしまう現象です。
特にポリエステルは、内部まで染料が染みこんだ「分散染料染色」が主流のため、加熱硬化時(ベーキング時)に染料分子が再び動き出し、仕上がった印刷面へ滲み出てしまうことが珍しくありません。
この現象は、特に白・淡色インクや明るいカラーを使う場合に顕著です。
現場目線で解説:よくある失敗例と従来の対策
よくある失敗例
・完成したTシャツやバナーの印刷部分が赤っぽく変色していた
・高温で硬化した後に色あせや変色が発生
・お客様から「印刷が汚れている」とクレームを受けた
これらは、大抵がブリード現象を正しく理解せず、従来のインクや工程そのままで作業を進めてしまった結果です。
従来の対策法とその限界
1980~90年代から続く定番手法として、
・高顔料濃度のインクを厚塗りする
・下処理剤(プリマ―)で前処理する
・熱硬化条件を短く・低温にする
といった方法が取られてきました。
しかし、これでは手間が増えるだけで完全なブリード防止にはつながりません。
量産現場での工数増加・不良率の上昇、再印刷コストなどのロスが積み重なり、長期的な利益圧迫要因となってしまいます。
最新トレンド:バリア層処理でブリード対策を根本解決
バリア層処理とは
バリア層処理とは、ポリエステル繊維表面に「染料の移行(ブリード)」を防ぐための特殊なインク層やコーティング層を設ける技術です。
一般的には、
・バリアインク(ブリードブロッカー)による下地印刷
・バリアコーティング剤による前処理
などが採用されています。
この「バリア層」が、ポリエステル繊維に含まれる分散染料と、上に印刷される顔料インクとの間に壁(シールド)を作り、滲み出しをシャットアウトします。
採用が広がる最新のバリアインク
近年のバリアインクは、従来のPVC系から、環境に配慮したノンPVC(ノンフタル酸)タイプへと進化しています。
化学反応によって高い遮断性を発揮し、しかも柔軟なタッチや通気性も損なわない―こうした製品がグローバルで主流となりはじめています。
製造現場でも
・下地色用のバリア層→本印刷用インクの2層工程
・白インクにバリア材を混合した1工程印刷
など、現場事情や要求品質に応じて使い分けられています。
コーティング剤による前処理も有効
アルコールや水系のバリアプライマーを布地にスプレーまたは刷毛塗りすることで、分散染料を封じ込める方法も普及しています。
コストや工程は若干追加されますが、量産現場でも比較的手軽に導入しやすい点が評価されています。
実践事例:現場でのブリード対策プロセス
現場プロセス例
1. 入荷したポリエステル生地をロール単位で簡易テスト(加熱やインクテスト)
2. ブリードリスクのある生地には、バリアインクによる下地印刷を必須化
3. 印刷条件(温度・時間・圧力)を標準化し全社で共有
4. 印刷→乾燥・熱処理工程の設備は定期校正・点検を行う
5. 完成品のロット検査時に再度ブリード有無の確認テストを徹底
ベテランの経験則だけでなく、データ取得・共有による標準化こそが、高い再現性&歩留まり向上のカギとなります。
メーカー選びもブリード対策の要
印刷インクやバリアコーティング剤の品質はピンキリです。
国内外の大手インクメーカーや、アパレル・ユニフォーム用途に強い専門メーカーの製品から選定し、営業・技術担当と継続的に協力体制を築くことが、悩みを減らす最大の近道です。
近年はインクメーカーから、専用のブリードテスター(簡易評価キット)なども提供されているので、工場・現場での品質保証活動に積極活用してください。
ラテラルシンキングで広げる:昭和型アナログ現場の「あるある」背景とこれから
なぜ「昔ながらのやり方」が変えられないのか?
・「おじさん職人」の長年の経験則に頼りがち
・マニュアルが属人化している
・設備投資や新材料への投資ハードルが高い
こうした理由から、多くの製造現場で「不良は出たらリカバリー」という事後対策が当たり前になり、根本的なブリード撲滅が進みませんでした。
これからの現場は「情報の水平化」と「工場のDX(デジタル変革)」が不可欠
現代の製造現場では
・若手スタッフとベテランの知見の融合(情報共有/可視化)
・標準化されたテスト工程の自動化
・IoTセンサーや画像検査の導入
など、「昭和の経験則」に頼らない新しい流れが加速しています。
また、営業・バイヤー・生産管理・現場作業者までが同じ品質目標を共有する「横ぐしの連携」が、サプライチェーン全体の管理精度を高めるポイントです。
サプライヤー・バイヤーも押さえておきたいポイント
サプライヤー目線でのポイント
・バイヤーからの品質要求を的確につかむ
・現場のテスト工程をバイヤー立合いで公開し、信頼性を見せる
・バリア層処理やブリード対策の最新対応例を自主的に提案する
こうした姿勢が、単なる下請け業者から「パートナー」への飛躍に直結します。
バイヤー目線でのチェックリスト
・サプライヤー現場がどんなブリード対策工程を導入しているかヒアリングする
・ロットごとのテスト実績や証明データを確認する
・バリアインクや新材料の採用によるコストVSリターンをシビアに評価する
これにより、調達リスクやブランド毀損リスクを最小化できます。
まとめ:本質的なブリード対策で「勝てる現場」を作ろう
ポリエステル素材へのスクリーン印刷におけるブリード対策・バリア層処理は、高品質製品を安定して量産するための最重要技術です。
根本解決するには
・最新のバリアインク技術の導入
・現場レベルでのテスト・評価・標準化
・サプライヤー/バイヤーの連携強化
が欠かせません。
時代の要請に応え、「昭和型アナログ」から「データと共感がベースの現場」へと進化することが、これからの製造業全体の競争力強化につながります。
これからも日々の業務改善や知見の水平展開を通じて、日本のものづくり現場を一緒に盛り上げていきましょう。
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