投稿日:2025年12月19日

ロールフォーミングが最も力を発揮する形状と苦手な形状の境界線

ロールフォーミングとは何か

ロールフォーミングは、板状の金属を連続的に曲げて、さまざまな断面形状に成形する塑性加工法の一つです。

コイル材などの長尺材料を、複数のロールで順次形を変形していき、複雑な断面形状を量産する際に強い力を発揮します。

そのため建材の軽量形鋼、家電・自動車のフレーム部品など、多くの分野で利用されています。

昭和から現代に至るまで、日本の製造業現場では「大量生産」「高剛性」「均一品質」といった現場ニーズを満たすロールフォーミングは不可欠な存在であり、今なお進化し続けています。

しかし、ロールフォーミングには「何でも任せれば万能」というわけではなく、得意・不得意な形状が確かに存在します。

本稿では、現場目線を交えてロールフォーミングの強みと限界、その境界線について掘り下げていきます。

ロールフォーミングの仕組みと特徴

プロセスの特徴

ロールフォーミングでは、送り出される帯状金属を一方向に連続的に移動させながら、複数のスタンドにセットされたロールによって順次成形していきます。

1つのロールで一気に形を作るのではなく、10〜30工程ほどのロールで徐々に曲げ込んでいくのが特徴です。

金型(プレス型)と比較しても、ロール付きの成形点が移動しながら徐々に材料に負荷が分散されるため、ひずみや割れが生じにくい利点があります。

また、連続生産に適しており、量産性とコストメリットが魅力です。

主な適用分野

– 建築資材:Cチャンネル・Z・ハット型鋼
– 自動車:バンパービーム、ホイールハウス、ドア補強部材
– 家電:冷蔵庫のボディフレーム、ラック構造部

上記のように「長尺」「同一断面」「複雑断面」のニーズがある大量生産品に特にマッチします。

ロールフォーミングが最も力を発揮する形状

シンプル×繰り返し × 複雑断面

ロールフォーミングの真骨頂は、「一定断面を長尺にわたり、抜群の再現性とスピードで作れる」ことです。

ロールの組み合わせおよび加工順序の最適化により、部材断面ごとの個別設計が容易であり、「プレスでは金型コストが膨大になる」「曲げ精度が出にくい」といった形状で真価を発揮します。

構造強度が必要となるC型・Z型・U型・ハット型・複雑な多段リブの入ったフレームなど、断面のカスタマイズ性が高いです。

しかも1分間に10〜100メートルといった高速で巻き取ることができ、リードタイム短縮でもメリットがあります。

材料負荷の分散効果

プレス加工では一回で大きな変形を与えるため、亀裂や反り・残留応力の問題が発生しやすいですが、ロールフォーミングでは段階的な加工のため、高張力鋼板やアルミなど難加工材にも向き合いやすい特徴があります。

近年需要が高まる「軽量×高強度」部材への応用は今後の成長分野です。

歩留まり・安定品質の良さ

切り出しスタイルではなく、コイルのまま加工⇒定尺カットを行うため、材料歩留まりが高く、スクラップも少なくできます。

また、各ロール成形部にて厳密な精度管理が可能なため、断面寸法・厚みのバラつきを最大限抑えた均一品質を担保します。

大量生産で重要な「安定供給」「ばらつき最小化」といった品質管理にも強いのが現場で定評の理由です。

ロールフォーミングが苦手とする形状とは

非連続・変断面形状

ロールフォーミングの最大の弱点は「断面が途中で変わる形状」「連続生産に適さない形状」です。

途中で太さが変化する、断面がねじれている、側面だけ部分的に盛り上がっている、といった複雑な三次元変化には対応できません。

たとえば自動車のドアインナーパネルや外装品のプレス部品など“面変化が大きいもの”は専用金型によるプレス加工に軍配が上がります。

穴あけ・部分加工への対応

ロールフォーマー内で穴開けや切り欠きなど部分加工を施すことは可能ですが、その場合速度低下や後加工の手間が増え、ロールフォーミング本来の連続生産メリットが失われます。

角穴やスリットなど、長尺パーツの所々にピンポイントで加工が必要な場合は、打抜きプレスやレーザー・タレパン等の他工法との組み合わせ(分業)が求められます。

曲げRが小さい(急峻曲げ)

板厚に対し曲げ半径(R)が極端に小さい形状は、ロールによる漸進的な成形では板割れ(クラック)や材料破断を招きやすく、むしろ1工程で大きく変形させるプレスや曲げ加工が適しています。

現場では「急激な曲げはプレス」「なだらかな連続曲げはロールフォーミング」と使い分けるケースが一般的です。

ロールフォーミングと他工法の境界線〜現場目線での意思決定

量産性と初期投資のジレンマ

ロールフォーミングは、長尺で一定断面、数万~数十万メートル単位の生産ニーズでその恩恵が大きくなります。

一方、製品バリエーションが多い、月産数百〜数千本程度ならば、初期投資に見合わず、汎用ベンダーや多品種対応のプレス加工のほうが適している場合が多いです。

現場判断としては「コスト試算」「加工サイクル」「品質の安定性」などを多角的に見極め、最適工法を選定する必要があります。

設計で変わるモノづくり戦略

昨今は設計部門が「どの工法に最適化した形状を描くのか」が極めて大切になっています。

バイヤー視点では、サプライヤーの設備・技術力を見極めつつ、工法選択の幅とリスクも加味して発注先を選ぶことが求められます。

サプライヤー側も「この形状ならロールフォーミングで、高コストパフォーマンスが発揮できる」とアピールし、積極的に提案していくことが今後の製造業における競争力強化に直結します。

現場で見逃されがちな最適化のヒント

アナログからの脱却と最新技術の融合

昭和時代から続く製造現場では、「ずっとこのやり方でやってきた」という思い込みが根強く残っています。

しかしIoT化・生産DX・AI設計支援など、現場の知恵に最新技術を取り入れることで、ロールフォーミングの“強み”を活かせるシーンは飛躍的に増えています。

CAD/CAM連携による設計検証や、IoTセンサーでの品質モニタリング、3Dローラー設計自動化など、現場の改善提案・気付きが経営に直結する時代です。

バイヤー・サプライヤーの真のパートナーシップ

量産仕様の早期決定、改善余地のフィードバック、歩留まり・標準化の知見共有——。

これらは全てバイヤーだけ、サプライヤーだけでは完結しません。

設計・製造・調達・現場の専門家が横断的かつ早期から連携し、「最終形よりも“現場で無理なく作れる形状”」を徹底的に突き詰めていくべきです。

このようなアプローチが、現代製造業の新たな強みとなるのです。

まとめ~ロールフォーミングの攻め所・引き際の最適解

ロールフォーミングは、“同一断面”“連続生産”“複雑な形状”の大量生産で圧倒的な力を見せる反面、「非連続・三次元変化」「小ロット多品種」のような難所は不得意としています。

境目を見極め、最適な工法・設計へつなぎ、現場の知恵と新技術を掛け合わせることで、大手メーカーも中小現場もさらなる生産性・利益向上を目指せます。

バイヤー志望の方もサプライヤーも、「ロールフォーミングの領域と限界」を深く理解し、モノづくりの新たなイノベーションにつなげていきましょう。

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