投稿日:2025年9月7日

OEM消耗品の開発におけるブランドオーナーと工場の役割分担

はじめに―OEM消耗品開発の現状と重要性

製造業におけるOEM消耗品の開発は、近年ますますその存在感を増しています。

OEM(Original Equipment Manufacturer)は、自社ブランド製品の開発や販売を行いたいブランドオーナーが、実際の設計や製造を外部の工場に委託するビジネスモデルです。

特に消耗品の分野では、品質・コスト・納期という3つの拠点だけでなく、継続的な改良やマーケットインの視点も求められます。

昭和の時代から続く伝統的な製造現場の手法だけでは、この激動の時代を勝ち抜くことは難しくなってきています。

この記事では、長年製造現場に携わってきた立場から、OEM消耗品の開発におけるブランドオーナーと工場の理想的な役割分担、そして成功のための現場的ベストプラクティスと今後の課題を、業界のリアルな動向を交えて解説します。

OEM消耗品開発の全体像―現場で起きていること

OEM消耗品とは何か

消耗品という言葉は、多くの製造業で日常的に使われる用語です。

インクやトナー、フィルター、ローラー、パッキン、カートリッジなど、機械の稼働やサービスとともに必然的に摩耗・劣化し継続的な交換が必要なものが該当します。

実は、単なる「モノの供給」ではなく、消耗品の改良・差別化・カスタマイズこそが競合他社との差別ポイントとなります。

このため、販売戦略やブランドイメージの一角を構成する重要な要素といえるのです。

誰が何を担うべきか―二者の役割分担の基本

OEM構造では、ブランドオーナー(発注側)と工場(受託側)という二者が存在します。

現場では、次のような役割分担が理想とされています。

ブランドオーナー
– 製品コンセプト・仕様要求の明確化
– ターゲット市場の分析と展開戦略の立案
– 品質基準や試験項目の提示
– 販売や顧客サービス部門から得たフィードバックの集約

工場
– 製品設計・技術検証と最適化
– 原材料および部材選定、コストシミュレーション
– 生産可否および量産立ち上げプランの策定
– 品質管理プロセスとトレーサビリティの担保

この基本構造を土台に、いかに両者が補完し合いながら課題を解決していくかが、OEM消耗品開発の真髄です。

昭和から続く製造現場の課題―なぜロスが発生するのか

アナログ的慣習と情報伝達の壁

日本の製造現場は、高度経済成長期からの標準作業や帳票・図面運用などアナログ的慣習が今でも根強く残っています。

特にOEM消耗品の開発となると、仕様変更や追加機能への対応が多発するため、情報伝達の遅れや勘・経験・度胸(KKD)に頼る意思決定がトラブルを引き起こしがちです。

文書化されていない「現場の暗黙知」がブラックボックス化し、後続部門や外部サプライヤーが追随できない事態にも陥ります。

責任範囲の曖昧さがロスやモレの温床に

OEM開発では「どちらが、どこまで関与するか」が曖昧になりやすく、責任の押し付け合いや段取り不備が起こりやすいです。

たとえば、「品質基準を誰が最終決定するのか」「試作の妥当性承認は誰が判定するのか」の線引きがルーズなままだと、手戻りが増え、コスト増や納期遅延・クレーム多発といった現場リスクにつながってしまいます。

バイヤーは何を求めているのか―現場のリアル

「買いたい」ではなく「解決したい」

消耗品バイヤーの多くが求めているのは、単純な仕入価格の安さや切り替えの容易さではありません。

自社顧客にとって価値ある特長や、一歩先を行く新機能・耐久性・信頼性こそ、実際の購買理由になっています。

そのため、サプライヤー側が金額中心だけの提案や、市場トレンドを無視した“従来品ベース”のアプローチでは見向きもされません。

バイヤーが判断材料とするのは、現場での実装可能性、調達リスクの有無、品質保証スキームなど多岐にわたります。

バイヤーが重視する「見える化」

DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる今、バイヤーは「工程や情報の見える化」に大きな関心を寄せています。

– 不良率や納期遅延率の定量管理
– 工場監査の対応力
– 環境対応やサステナブル調達への備え

こうした取り組みは単なる流行ではなく、サプライヤーの選定基準として厳格に運用され始めています。

「なぜ今回は不良が出たのか」「出荷した消耗品はどの原材料ロットだったか」などの説明責任を果たせない会社は、次第に選ばれなくなってきています。

ブランドオーナーが担うべき役割の進化

「伝える」から「共創する」への発想転換

従来は、ブランドオーナーが仕様書や図面だけを送りつけ、工場に「後はよろしく」というパターンが横行していました。

しかし市場の多様化・スピード化が進む中、オーナーが工場の技術や現場ノウハウを「共創のリソース」として活用する視点が重要になっています。

たとえば既存生産ラインの制約や現場事情を理解し、課題や制限を工場と一緒に洗い出す。

最新素材や加工法、IoT活用など、工場側からの技術提案に正面から耳を傾ける姿勢が潜在的な競争力向上をもたらします。

「運用現場まで見据えた品質管理」へ

消耗品は、顧客の現場運用で使われてこそ意味があります。

オーナーは単に図面通りの完成品を求めるのではなく、「どんな不具合が発生しうるのか」「実装現場ではどのようなストレスが掛かるのか」を生産現場・品質管理部門・サービス部門と一体で検証する必要があります。

この一歩踏み込んだ対応が最終的なエンドユーザーの満足やブランド信頼につながります。

工場側に求められる新しい価値創出

量産設計だけでない「上流」への関与

「言われたものを作る」から「設計段階から巻き込む」への変化を目指したい時代です。

現場ノウハウを活かした製造容易化(DFM)や、原材料のバリエーション提案、加工コストと納期の見積もり力など、上流からプロジェクトに能動的に参画することが大きな付加価値となります。

また、近年増加している少量・多品種対応においても、柔軟な生産スケジューリング能力や自動化・標準化ノウハウが工場競争力の源泉になります。

品質・コスト・納期(QCD)以外の「プラスα」

「カイゼン」「ロス削減」「トレーサビリティ対応」などの現場改善活動は一定水準まで浸透していますが、さらに求められるのは「環境負荷を抑えた工場運営」「第三者機関との連携による安全保証」「BCP(事業継続計画)の強化」などの新たなテーマです。

たとえば環境規制が厳しくなっている現代では、工場サイドからリサイクル材料の活用、脱炭素への積極的取組みを提案できれば、価格以外でも顧客企業から選ばれる決め手になります。

両者の協働を活性化する実践ポイント

プロジェクト初期の「合意形成」と「責任分担」明確化

OEM消耗品の新規開発プロジェクトは、企画立案から量産立ち上げまでに半年~1年以上かかることも珍しくありません。

この長期戦を乗り越えるためには、スタート時点での“プロジェクト憲章”の作成、ガントチャートや責任者リストによる見える化が不可欠です。

「仕様書の最新版はどれか」「技術的なナレッジはどうやって両社で蓄積・更新するか」「不具合発生時の責任所在と対策合意」などを事前に明文化しておくことで、トラブル時に迅速な意思決定ができます。

ボトルネックの可視化とKPI管理

OEM消耗品開発では、サンプルのやり取り、認定テストや工程移行、量産品の品質安定性などで数多くの「ボトルネック」が発生します。

“どこで” “何が” “なぜ”停滞しているのか、それをデジタルツールやプロジェクト会議を用いて定量的に「見える化」する仕組みをつくることが肝要です。

在庫回転率、不良率、納期順守率など主要なKPI(重要業績評価指標)をサプライヤーと共有化することで、常に目線を揃えて改善活動を継続できます。

今後の展望とまとめ―ラテラルシンキングで新たな価値を

OEM消耗品の開発は、従来の“作り手”と“売り手”の関係ではなく、「共創」と「新価値創出」を目指す方向に進化しています。

昭和から根強く残る慣習や属人性も、デジタル化や組織間連携によって着実に変革の波が訪れつつあります。

バイヤー、サプライヤー、現場エンジニア、それぞれの立場を越え「顧客目線」「現場目線」「持続可能性」という3つの視点で知恵や情熱を掛け合わせること。

これがこれからの日本の製造業の競争力強化、グローバルでの勝ち残りへの第一歩になると断言できます。

OEM消耗品の開発は昨日や今日で終わるプロジェクトではなく、日々の現場改善、知識の共有とアップデート、そして新たな発想(ラテラルシンキング)を駆使した進化の連続です。

ぜひ、現場で現実に悩み・苦しむ全ての仲間たちが、今回の記事を新たな成長のヒントとし、製造業の未来を切り拓いていくことを願っています。

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