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飲食店がオリジナル商品を出すときに考えるべきブランドポジショニング

目次
はじめに:飲食店がオリジナル商品を出す意義と時代背景
飲食業界はコロナ禍を経て急激な転換点を迎えています。
単なる「場所」を提供するビジネスから、「体験」や「価値」をいかに継続提供できるかが問われるようになりました。
そうした中で、数多くの飲食店がオリジナル商品――例えばオリジナルソース、スイーツ、レトルト食品や冷凍食品など――を開発し、販売する動きが加速しています。
この背景には、客単価の向上やリピーター獲得、そして新たな収益源の確保など、様々な動機があります。
しかし「作れば売れる」時代はとうに終わっており、安易な開発は在庫リスクやブランド毀損のリスクも孕みます。
肝となるのは、消費者の心に残るブランドポジショニングです。
本記事では、製造業の現場で培った実践的な知見や業界動向を踏まえ、飲食店がオリジナル商品を展開する際に考慮すべきブランドポジショニングのポイントを詳しく解説します。
オリジナル商品のブランドポジショニングとは?
ブランドポジショニングの定義
ブランドポジショニングとは、市場の中で自社ブランドが消費者の頭の中でどのような立ち位置(イメージ・役割・価値など)を持つかを明確にする戦略のことです。
簡単に言えば、「この商品を思い浮かべた時にどんな特徴で消費者に覚えてもらいたいか」という設計図です。
飲食店の場合、例えば「自家製ベーコン=無添加・朝食の逸品」「手作りドレッシング=野菜本来の味を引き立てる」など、明快な価値訴求ポイントが重要になります。
これは単に“美味しい”だけでは差別化できず、消費者の購買動機の深層を掘り下げる視点が不可欠です。
なぜブランドポジショニングが重要なのか
商品の品質や味が優れているのは最低条件で、競合も同じように高品質を追求します。
しかし市場で選ばれる理由は、価格競争力だけではありません。
強いブランドポジショニングを打ち出せば、「この商品しかダメ」「あの店の味でなければ満足できない」といった強いファンを生み、繰り返しの購入やSNSによる拡散が狙えます。
特に現代は、「もの」だけでなく「共感」や「ストーリー」といった無形の価値を消費者が重視する傾向も強まっており、ブランドポジショニングの巧拙が成功の明暗を分ける時代です。
オリジナル商品開発時に考えるべき5つのブランドポジショニング視点
1. ターゲット顧客のニーズを深掘りする
昭和型の「万人に受ける味」「どこでも置ける商品」では、今の時代選ばれません。
まず行うべきは、自店の主なお客様がどのような価値観やライフスタイルを持ち、どんな隠れた課題や満たされない要求(インサイト)を抱えているのかを洗い出すことです。
たとえば、
・健康志向の高い30-50代女性向けに、無添加・低カロリーだけどしっかり味わえるスープ
・仕事帰りのビジネスマン向けに、元気をチャージできるピリ辛惣菜
など、具体的な顧客像と商品価値を結び付けることが肝心です。
アンケート調査やSNSの口コミ分析、レジでのお客様との日常会話にも、ヒントが隠れています。
自分目線ではなく、消費者になりきって思考するサンプルを多く持ちましょう。
2. 商材のユニークネス(舌だけでなく、記憶に残る個性)
オリジナル商品で勝負するうえで、「どこにでもありそうな味」や「ありきたりなパッケージ」では埋没してしまいます。
ここでのポイントは、五感や経験、ストーリーで消費者の記憶に残せるかどうかです。
たとえば、
・実店舗で提供している料理と同じ素材、レシピを使う
・地域の伝統野菜や地元企業とのコラボレーション
・家族経営のストーリーや産地訪問の裏話
など、業界ならではの“作り手の顔”や“現場ならではのこだわり”を最大限活用します。
味・香り・見た目に加え、購入後の料理体験や食卓での会話のきっかけまでも視野に入れることで、他と比較できない独自の価値を持てます。
3. 価格ではなく、体験価値で勝負する
製造業の現場目線で言えば、価格競争は資本力がある企業や大量生産に長けたサプライヤーが有利です。
飲食店の少量生産のオリジナル商品は、どうしてもスケールメリットで負けてしまいます。
そこで重要なのが「なぜこの価格なのか」を納得してもらえるだけの体験価値です。
・作り置きできないため少量しか販売しない
・料理人が毎朝仕込む“できたて”をそのままパッケージ
・店舗でしか味わえない“裏メニュー”の贅沢感
など、限定感・希少性・手間ひま・職人技といった演出を組み合わせることで、適正価格以上の価値を自然に伝える工夫が求められます。
4. 販路・流通チャネルの多層的設計(オンライン+オフライン+体験)
昭和の時代は、自店のカウンターや隣接の物販ブースで売るだけで良かったかもしれません。
しかし現代は、SNS、ECサイト、クラウドファンディング、地域フェアなど、多彩かつ重層的なチャネル設計が重要です。
例えば「店頭でしか買えない限定パッケージ」と「公式ECサイトだけの定期便」など、消費者の行動導線に応じてブランド体験を分散・最適化する手法が有効です。
実店舗やイベントでのリアルな試食体験と、帰宅後のネット購買を連携することで、ファン化の促進やクロスセルも期待できます。
また販路によってパッケージやメッセージを変える高度なブランド戦略も選択肢です。
“店頭での体験価値”と“家庭で楽しむセカンドブランド”の二枚看板を持つ企業も増えつつあります。
5. 信頼構築と品質保証(“アナログ現場”の強み活用)
デジタル主導の時代でも、食品の安全性や安心感、サステナブルなものづくりへのこだわりは、購買動機として極めて重要です。
現場でしっかりと「見える化」できる強みを活用しましょう。
・毎日自分の目で食材を選び、仕込みを行っている
・衛生管理とトレーサビリティをしっかり担保している
・“遠隔製造”ではできない部分手作業やプロの仕上げ技
こうした「ちょっとした現場の工夫や誇り」が、お客様に伝わることで信頼醸成につながり、ブランド力の根幹となります。
昭和世代のアナログなこだわりが、現代でも“温もり”や“正直さ”として評価される好例です。
成功事例に学ぶ! 差別化ブランドポジショニング
参考までに、実際にブランドポジショニングで独自性を発揮し、成功を収めている数例をご紹介します。
地域密着型カフェの地元コラボスムージー
地元農家の旬の果物を使い、その日の朝の収穫状況に合わせてレシピが変わる「一期一会」感覚のスムージー。
顧客参加型のSNSイベントも実施し、「私のためだけの一杯」をブランドとして確立しました。
ラーメン店の“自家製麺×無添加スープ”冷凍商品
実店舗と同じ製法・素材にこだわり、「お店と同じ本気の一杯が自宅で楽しめる」を訴求。
製造数限定・オンライン限定販売とし、プレミア感と希少性でコアなファンを獲得しました。
歴史あるとんかつ店の伝統継承ソース
時代が変わっても変わらない“秘伝ソース”の味を、昭和時代から継ぐ家族ストーリーとともに発信。
「家族で受け継ぐ旨味」という情緒的価値で、多世代顧客を取り込んでいます。
サプライヤー・バイヤー両面から押さえるべきポイント
最後に、サプライヤーやバイヤーの視点からも要点を整理します。
サプライヤーなら、飲食店が求める「小ロット多品種」「安定供給」に対応できる体制や、小規模生産でも品質維持できる技術・ノウハウが信頼のカギとなります。
また、食材・包材メーカーであれば、「ストーリーテリングしやすい素材」や「差別化パッケージ提案」など、一歩先を見据えた連携がブランド価値向上に寄与します。
バイヤー視点では、「この商品なら自分の商圏でどう訴求し、どんなチャネルに最適か」「競合に対する明確な差別化ポイントは何か」を常に意識し、現場の価値をどう最大化できるかを評価することが、リピート発注や独占契約につながります。
まとめ:競争激化時代の飲食業だからこそ、現場力×ブランド設計が未来を拓く
飲食店がオリジナル商品を企画・開発し、成功に導くためには、単純な味や価格競争に頼らないブランドポジショニング戦略が必要不可欠です。
現場で積み上げた誇りや工夫を起点に、「誰のために/何を/どのように届けるか」を明確に描き、消費者との心の距離を縮めましょう。
業界が直面しているデジタル化・多様化・高付加価値化の波は、変化を恐れず積極的にチャレンジする現場にこそ、最高の追い風となります。
時代遅れを恐れず、現場の“昭和魂”と“新しい戦略思考”の融合こそが、飲食店のオリジナル商品ブランドの真の強みとなるでしょう。
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