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納期超過の一覧の作り方——拾う条件と、遅れの原因の分け方

この記事のポイント(結論先出し)
納期超過の一覧は、「いま有効な納期が今日より前で、まだ受け取っていない数量が残っている明細」を拾うものとして作る。エクセルで作ると、日付が文字として入っている行、分納の残り、納期が空欄の行、変更後の納期がメールにしか無い行、取り消したのに残っている行が漏れたり混ざったりする。一覧には遅れの日数だけでなく遅れの原因が自社側か相手側かを分けて持つ。支給材の遅れや一方的に決めた納期への遅れは、受け取りを拒む理由にならないからである。毎日見る人と時刻を決め、該当が 0 件の日も確認する。0 件の日に見ないと、抽出の条件が壊れて 0 件になっていることに気づけない。
目次
納期超過の一覧が拾うもの
「納期を過ぎた発注を毎朝確認する」と決めても、何を「納期を過ぎた」と数えるかが曖昧だと、一覧は人によって違うものになる。最初に決めるのは次の 3 点である。
どの単位で拾うか。発注単位ではなく明細単位で拾う。1 つの発注に品目が 3 行あり、2 行は届いて 1 行だけ遅れているとき、発注単位だと「一部遅れ」としか書けない。
どの納期と比べるか。注文書で示した当初の納期、取引先が返してきた回答の納期、途中で合意して変えた納期と、納期は 1 つの明細に複数付きうる。超過の一覧で比べるのはいま有効な、合意した納期にする。当初の納期と回答の納期を並べて持ち、ずれを追う方法は発注残の数え方と追い方で扱っているので、ここでは「超過の判定に使う納期は 1 つ」と決めることだけを押さえる。
何をもって「届いた」とするか。受け取った数量で判定する。出荷の連絡が来た、検査が終わった、ではなく、受け取ったかどうかである。取適法(中小受託取引適正化法)の解説は、本法上は納品させた時点で受領したことになるとしている[1]。
まとめると、抽出の条件は「いま有効な納期 < 今日」かつ「発注数量 − 受領数量 > 0」かつ「取消しでない」になる。
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エクセルで作ると、どの行が漏れるか
この条件をエクセルのフィルタや関数で書くと、条件そのものは正しくても、データの側の事情で行が漏れたり、余計な行が混ざったりする。よく起きるものを並べる。
| 起きること | 一覧への影響 | エクセルでの手当て |
|---|---|---|
| 納期が「10/15」「10月中旬」のように文字で入っている | 日付の比較から外れて漏れる | 納期の列に入力規則を付け、日付以外を入れられないようにする |
| 分納で半分だけ届いた | 「入荷」に直されて残りが消える | 受領数量の列を持ち、状態ではなく数量の差で判定する |
| 納期が空欄(仕様が決まらず未定) | 比較できず、ずっと拾われない | 空欄の行を別の抽出で毎週出し、定める予定の日を入れる |
| 変更後の納期がメールにしか無い | 古い納期で「超過」と出る、または逆に見落とす | 合意したらその日に納期の列を直し、変更の記録を別に残す |
| 取り消した発注が行として残っている | 毎日「超過」に出続ける | 取消日の列を持ち、抽出から外す(行は消さない) |
| 届いているのに受領の入力がまだ | 遅れていない発注が「超過」に出る | 受け取った人が当日に受領数量を入れる手順にする |
表の 3 行目、納期が空欄の発注は注意が要る。取適法では、正当な理由があって定められない事項は、定められない理由と、内容を定める予定期日を明示して発注することになっている[1]。納期が空欄のまま長く置かれている発注は、その予定期日を過ぎていないかを別の抽出で見る対象になる。
4 行目の、納期を変えたのに一覧が古いままの問題は、一覧の作りではなく変更の扱いの問題である。発注後に給付の内容などを変更したら、その内容を相手に明示し、記録の一部として残す必要がある[1]。変更をメールに埋もれさせずに残す方法は発注後の変更を記録に残す方法で扱う。
遅れの原因を、自社側と相手側に分けて持つ
超過の一覧に遅れの日数しか載せていないと、遅れの原因が相手側なのか自社側なのかが分からないまま、取引先ごとに「遅れの多い仕入先」として数えてしまう。原因は少なくとも次の区分で持っておく。
相手側の原因。生産の遅れ、材料の手配の遅れ、品質の不具合によるやり直しなど。
自社側の原因。支給材の引渡しの遅れ、図面や仕様の確定の遅れ、自社からの変更、取引先の事情を聞かずに決めた短い納期など。
この区分が要るのは、扱いが法律の上で分かれるからである。取適法の解説は、納期遅れを理由に受け取りを拒めるのは、4 条明示された納期までに給付が行われなかったためにそのものが不要になった場合に限られるとしたうえで、次の場合は納期遅れを理由に受け取りを拒むことは認められないとしている[1]。
| 納期遅れを理由に受け取りを拒めない場合 | 一覧で持っておく原因の区分 |
|---|---|
| 1. 納期が 4 条明示されていない等のため、納期遅れであることが明らかでない場合 | 納期の明示なし・未定のまま |
| 2. 発注側が原材料等を支給する取引で、支給が発注時に取り決めた引渡日より遅れた場合 | 支給材の遅れ(自社側) |
| 3. 納期が相手の事情を考慮しないで一方的に決定されたものである場合 | 一方的に決めた納期(自社側) |
解説には、発注日の 1 週間後としていた納期を急に 2 日後に短縮し、相手が従業員の都合で断ったのに一方的に指示し、間に合わなかったことを理由に受け取りを拒んだ事例が、違反行為の例として挙げられている[1]。取適法の対象にならない取引でも、取引上の地位が相手に優越している場合には、独占禁止法の優越的地位の濫用の考え方が及ぶ。その考え方は、発注した後になって合意していた納期を相手の事情を考慮せず一方的に短く変更し、間に合わなかったとして受け取りを拒むことを、問題となる例に挙げている[2]。自己の都合による設計変更や図面提供の遅れがあったのに納期の延長を認めず、納期遅れのペナルティの額を差し引いた対価しか支払わないことも、同じ考え方で問題となる例である[2]。
つまり、超過の一覧で「遅れ」と出ていても、原因が自社側にある行は、取引先の遅れとして扱えない。一覧に原因の列を持っておけば、仕入先の評価に数えるときに取り違えずに済む。ただし原因が相手側にあっても、受け取りを拒めるか、代金から差し引けるかには別の条件があり、原因の区分だけでは決まらない(よくある質問で扱う)。納期遅延が起きたときに法律上できることの全体は納期遅延をどう防ぎ、起きたらどうするかで扱っている。
毎日どう見るか
一覧を作っても、見られなければ意味がない。見る運用は次の 4 つを決めておく。
誰が、何時に見るか。発注の担当者が朝いちばんに見る、と決める。担当者が休みの日に誰が見るかも決めておく。担当者しか発注の状況を知らない状態は発注の状況を担当者しか知らない状態をどう無くすかで扱う。
0 件の日も見る。抽出の列がずれた、日付の列に文字が入った、といった理由で条件が壊れると、一覧は黙って 0 件を返す。0 件の日に「本当に 0 件か」を発注残の件数と照らす習慣がないと、壊れたまま何週間も気づかない。
上に上げる条件を決める。作業が期限までに終わらないときに上司へ知らせる機能は、仕組みに組み込める情報伝達の例として、上場会社向けの内部統制の実施基準にも挙がっている[4]。手で作った一覧は自分から知らせてくれないので、「超過が何日を超えたら上長に報告する」「同じ取引先で何件を超えたら購買の責任者が連絡する」といった基準を文書で決めて補う。超過の日数をどう区切って頻度を変えるかは発注残の数え方と追い方にまとめてある。
取引先への確認を記録する。超過している明細について取引先に問い合わせたら、問い合わせた日、相手の回答、新しく示された納期を一覧の横に残す。新しい納期に合意したなら、それは納期の変更なので、前の節で触れたとおり変更として扱う。電話で確認した内容が担当者の手帳にしか無いと、次の日に別の人が同じ問い合わせをすることになる。
一覧の数字を、どこまで信用してよいか
超過の一覧は、受領の入力が遅れると、遅れていない発注まで「超過」に出す。反対に、受領の入力を急ぐあまり、まだ受け取っていないものを先に入れると、支払の起点となる受領日が実際とずれる。支払期日は、検査をするかどうかを問わず、受領した日から起算して 60 日以内のできる限り短い期間内で定めることになっている[5]。月末締め・翌月末払いで大の月をまたぎ、受領から 61〜62 日目の支払になる場合は、「受領後 2 か月以内」として運用されているので、そのことだけで遅延とはされない[1]。起点になるのは入力した日ではなく受け取った日なので、一覧のための入力の都合で受領日を動かさない。
禁止行為の違反として勧告・指導された件数(令和 7 年度・7,228 件)を類型別に見ると、受領拒否は 32 件(0.4%)と少なく、いちばん多いのは支払遅延の 3,787 件(52.4%)である[3]。比率の分母は実体規定違反の件数である[3]。受領拒否の件数は少ないが、納期を巡る扱いは、受け取りと支払の両方につながる。
エクセルのままでよい場合
発注残が数十件で、分納がほとんど無く、納期の変更も少ないなら、エクセルの一覧と毎朝の抽出で十分に回る。その場合も、納期の列の入力規則、受領数量の列、取消日の列、原因の列の 4 つは足しておくとよい。
移すことを考える目安は、超過の一覧に毎日 2 桁の行が出るようになったとき、分納や納期変更で 1 つの明細の納期が何度も動くようになったとき、そして見る人が休むと誰も見なくなるときである。
システムに移すときに先に決めること
1. 超過の判定に使う納期を 1 つに決める
当初の納期か、変更後の納期か。回答の納期を別に持てる仕組みかどうかも確かめる。持てないなら、回答の納期をどこに残すかを決める。
2. 遅れの原因の区分を持つ場所
原因の区分を入れる欄が無い仕組みなら、備考の書き方を決めるか、別の一覧で持つ。自社側の原因を取引先の遅れに数えないためである。
3. 知らせる相手と、知らせ方
超過を社内の誰に知らせるのか、取引先への問い合わせを誰がどの手段で行うのか。社内向けの通知があっても、取引先への督促は別の手段で行う仕組みは多い。
4. 受領の入力を誰が当日に行うか
受け取った人が当日に入れる手順にしないと、システムに移しても一覧は「超過」を出し続ける。受入と検査の記録の移し方は受入と検査の結果を紙から移すで扱う。
よくある質問
遅れた分の代金から、遅延の損害を差し引いてもよいですか
取適法の対象取引では、遅れの原因が相手側にあっても、差し引ける場面は限られる。認められるのは、遅れを理由に受け取りを拒んだ場合のその給付の代金まで、または遅れがある旨を相手にあらかじめ伝えたうえで受け取り、納期遅れによる商品価値の低下が明らかな場合の客観的に相当と認められる額まで、とされている[1]。遅延のペナルティを前もって取り決めていても、その額をそのまま差し引けるわけではなく、上の 2 つの範囲を超えて減ずれば違反になる[1]。取適法の対象にならない取引でも、自社の設計変更や図面の遅れがあったのに納期の延長を認めず、ペナルティを差し引いた額しか払わないことは、優越的地位の濫用として問題になる例に挙げられている[2]。
納期を過ぎた品物が、もう要らなくなりました。受け取らなくてよいですか
取適法の対象取引で、納期遅れを理由に受け取りを拒めるのは、明示した納期までに給付が行われなかったためにそのものが不要になった場合に限られ、表の 3 つの場合は認められない[1]。原因の区分が自社側なら、受け取らない判断はできないと考えておく。
取引先が「納期の回答」を出してくれません
回答が無いまま当初の納期を過ぎた明細は、超過の一覧にそのまま出る。それでよい。回答をもらう前提で一覧を作ると、回答が無い取引先の遅れがいちばん見えにくくなる。
まとめ
納期超過の一覧は、いま有効な納期が今日より前で、受け取っていない数量が残っている明細を拾う。エクセルで作ると、文字の日付・分納の残り・空欄の納期・メールにしか無い変更・取り消した行で、漏れたり混ざったりする。一覧には遅れの原因を自社側と相手側に分けて持ち、毎日見る人と時刻を決め、0 件の日も確かめる。システムに移すときは、判定に使う納期、原因の持ち方、知らせる相手、受領の入力の担当を先に決めておく。
出典・参考資料
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
- 優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(公正取引委員会/平成 22 年 11 月 30 日・令和 8 年 6 月 17 日改正)
- 令和 7 年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組(公正取引委員会/令和 8 年 6 月 10 日)
- 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(金融庁 企業会計審議会/令和 5 年 4 月 7 日改訂)
- 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(取適法リーフレット)(公正取引委員会)
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