投稿日:2025年8月12日

訪日観光客向けモバイルサービスの事業連携と新規事業共創

はじめに:訪日観光客モバイルサービスにおける事業連携の重要性

訪日観光客の数はコロナ禍を経て再び増加し、そのニーズも多様化しています。
特にモバイルサービスの利便性向上は、観光体験の質を大きく左右する要素となっています。
しかし業界側から見ると、まだまだアナログな手法や昔ながらの慣習が根強く残っているのが現状です。

本記事は、20年以上製造業の現場を経験した筆者が、製造現場の視点と前職時代に培ったアナログならではの現場力、そしてこれからの時代の共創スタイルを融合させ、訪日観光客向けモバイルサービスの事業連携と新規事業共創の可能性を徹底解説します。

昭和の価値観が色濃く残る業界でなぜ共創が進みづらいのか

縦割り思考とサイロ化の現実

いまだに“俺の領域”や“他所には任せられない”という考え方が蔓延している日本のアナログ業界。
部門間の連携が弱く、情報がサイロ化することで、スムーズな事業連携が困難になっています。

現場目線で言えば、各工程のリーダーが自分の工程だけを最適化し、全体最適が後回しになる、といったケースがよくあります。
これと同じ現象がモバイルサービスの開発でも起こりえます。
販売窓口、通信インフラ、コンテンツ提供、決済サービスなど、役割ごとに壁があり、顧客体験全体で最適な連携ができていないのです。

“昭和的な現場力”の強みと弱み

一方で、現場で鍛えられた昭和流の“やりきる力”や、“何が何でも最後まで対応しきる執念”は、バラバラになりがちなモバイルサービスでも非常に大切です。
ただし、変化を恐れる気質がイノベーションの妨げにもなっています。

これを打ち破るには、いかに価値観の転換を起こせるかがカギとなります。
そのためには現場と上層部がお互いを理解し、共通目標をもつことが欠かせません。

訪日観光客の本音と業界ニーズのギャップ

観光客が期待する“あたりまえ”とは

訪日観光客は、母国と同じ水準の通信インフラやモバイルサービスを「あたりまえ」に求めています。
例えば言語切り替えがスムーズで、Wi-Fiがすぐ使え、決済も簡単。
何か困ったら24時間サポートにつながる、といったことです。

しかし裏側では、複雑なサービス設計、現場スタッフの営業力頼み、人手不足によるサポート体制の限界など、旧態依然としたやり方が障壁となっています。

実情:現場の疲弊とバイヤーの板挟み

販売現場では、
「シムカードの説明が通じない」「多言語対応できる人材がいない」「割当在庫の調整でパンクする」など実務負荷が非常に高いです。

購買(バイヤー)は「どうやればサービスメニューを簡素化できるか」「コストを抑えつつベンダー連携を強化したい」などの悩みを常に抱えています。
サプライヤーは、求められるスピードや柔軟な対応に後手に回ることが多いのが実情です。

モバイルサービスの事業連携:成功の鍵

バイヤーが求める視点

まずはバイヤー(購買担当者)が何を重視しているかを明確に理解することが肝心です。
現代のバイヤーは、単なる“価格”以上に“スピード” “柔軟性” “提案力”を重視しはじめています。

「どのサプライヤーと組めば自社サービスの付加価値が上がるか」「顧客満足度を最も高められる提案はどこか」といった、現場起点の発想が重要視されています。

サプライヤー側の立ち回り方

サプライヤーは単なる“下請け”ではなく、積極的に現場課題を可視化し、解決策をパートナーとして提示することが求められます。
バイヤーが抱える悩みや現場が本当に困っている場面を理解し、共に新しい価値を生み出すパートナーシップが不可欠です。

また、特にインバウンドの分野では、リアルタイムでの障害対応力や柔軟なWebコンテンツ追加、データ提供力などが他社との差別化ポイントになります。

新規事業共創の現場的アプローチ

現場の知恵・暗黙知を活かす

事業構想やサービス設計はトップダウンで決まることが多いですが、現場発の“小さな気づき”や“お客さまの本音”を拾い上げることが新規事業のヒントになります。

– 店舗スタッフが「この手順もっと短縮できないか」と考えたアイディア
– 技術担当が「他社機種でも動くこの設定画面なら…」と思いつく工夫
– 直接顧客対応したヒアリングシートから見えるインサイト

こうした現場の知見を吸い上げ、仮説検証サイクルをスピーディに回す「ラテラルシンキング」的設計が、現代の新規事業共創の現場にも強く求められています。

“現場の壁”を越えるには

情報の壁を越えるためには、
– ITとアナログ現場の橋渡し役をつくる
– 現場スタッフも初期検討段階からプロジェクトに巻き込む
– 他業界のノウハウや異分野の成功事例を積極的に取り込む

といった施策が有効です。
特に「現場からの異議申立てや掟破りを歓迎する文化」をつくることが、新しい顧客価値を創り出す源泉となります。

製造業で培ったノウハウをモバイルサービス事業連携に活かす

現場のプロセス最適化技術

製造現場では工程間調整や、プロセスのボトルネック管理が日常的に重要です。
モバイルサービスにおいても、サービス提供の流れ(契約・在庫確認・通信キャリア連携・アフターサポート等)を一つの「生産ライン」ととらえ、どこに無駄や待ちがあるか現場視点で分析し、PDCAサイクルを高速で回していくことが効果的です。

自動化・デジタル活用の推進

– 受付、契約、通訳対応のペーパーレス化
– FAQやサポート対応のチャットボット導入
– 在庫・稼働データのリアルタイム管理

など、製造現場で有効だった自動化技術や現場管理ツールを転用することが、サービス全体の品質向上と効率改善に繋がります。

現場主義だからこそ、デジタル化の導入・展開に腰が重い企業も多いですが、まずは小さく導入&現場フィードバックをもとに緻密に改善するやり方が、製造業出身者には非常にフィットします。

事業連携・共創の成功事例に学ぶ

異業種連携によるバリューチェーンの拡張

大手通信キャリアと流通小売、インバウンド対応のホテル業者が連携し、
– 専用SIMの即時発行
– 滞在先でのかんたん受取・返却
– 宿泊&通信セットのパッケージ提供
など付加価値サービスを共創した事例は、市場で大きなシェアを獲得しました。

現場主体の“逆転発想”がブレイクスルーに

「空港でしかSIMカードを入手できないのは本当に正しいか?」という現場スタッフの疑問から、
コンビニや観光案内所での自販機型SIM販売を導入。
有人対応が不要となり、低コスト・高利便性を両立しました。

こうした現場課題の裏に隠れた“価値の再設計”こそ、新規事業共創で最も重要な視点です。

まとめ:バイヤー・サプライヤーそれぞれが“共創”で目指すべき未来

訪日観光客向けモバイルサービスの現場には、昭和的アナログな良さと、デジタル時代ならではの課題が混在しています。
繰り返しになりますが、バイヤーは現場目線で課題を捉え、サプライヤーは“提案のできるパートナー”として価値提供する姿勢が不可欠です。

ラテラルシンキングを駆使した現場発のアイディアと、業界をまたぐ先進事例の学びを絶えず循環させることで、これまで想像もつかなかった新たなモバイルサービス価値が生まれます。

昭和的な現場主義を活かしつつ、変化を恐れず、現場・バイヤー・サプライヤーが一体となった事業連携・新規事業共創に、ぜひ挑戦してみてください。

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