投稿日:2025年12月28日

製造設備のボイラーで使うケーブルグランド部材のねじ加工と密閉不良

はじめに

製造業の現場でボイラーは重要な役割を担っています。
その中でも、各種計装機器や電気部品を安全かつ効率的に運用するためには、ケーブルの引き込み口となる「ケーブルグランド(ケーブルグランド部材)」が欠かせません。
この部材は、外部からの水や油、粉塵の侵入を防ぐための密閉を実現するものであり、現場の安全・設備の長寿命化・メンテナンス性・トータルコストに大きな影響を与えます。

一方でボイラーのような高温・高湿・多湿な過酷環境下では、ケーブルグランド部材のねじ加工や密閉性不良がしばしば課題となります。
この記事では、昭和から続くアナログ現場の課題と、最新の業界動向を交えながら、実践的な改善アプローチを解説します。

ボイラー設備におけるケーブルグランドの役割

なぜ密閉が重要なのか

ボイラーや加熱炉などの製造設備では、電気計装用のケーブルが装置に引き込まれます。
もし、ケーブルの引き込み口が的確に密閉されていなければ、水や油、粉塵の浸入により、短絡や火災、誤作動、腐食などの重大なリスクが生じます。
さらに、日本の工場では高湿度、高温、蒸気系の環境も重なり、ケーブルグランド部の密閉性が防爆安全にも直結します。

そのため、ボイラーの電気配線では、規格化されたケーブルグランド部材の適切な選定と正確なねじ加工が求められます。

規格と部材の基礎知識

ケーブルグランドには、JIS(日本工業規格)、IEC(国際電気標準会議)、NEMAやIP等級(防水防塵)、そして防爆規格(Ex d、Ex eなど)など多様な規格が存在します。
部材は主に真鍮、ステンレス、ナイロン樹脂製が多く、現場の条件とリスクアセスメントによって選ぶ必要があります。

また、可搬式のもの、固定設置型のものなど用途もさまざまで、ねじの種類(メートルねじ、PF、Gねじ、NPT等)、フードの形状やワッシャー・Oリングの素材選択もポイントです。

ねじ加工の現場課題と密閉不良の真因

アナログ現場に根付く“手作業”の実態

多くの製造現場では、ケーブルグランド部材の取付において、穴あけもねじ切り作業も現場作業員による手作業が色濃く残っています。
ボイラー本体やカバー部などへの現物合わせによる穴あけ、ソケット型タップやねじ山プレートでのタッピングが今も主流です。
つまり「機械加工精度」と「現場作業者の経験値」に大きく依存しているのが現実です。

ねじ加工の品質バラツキ要因

近年はCNC加工機の導入も増えましたが、「汎用ボール盤+タップ」での手加工事例は少なくありません。
量産前の設備増設や補修では現物合わせの一発勝負も多く、下記のようなバラツキ要因が発生します。

・タッピング時の垂直度・深さ・ねじ山仕上がりの不均一
・下穴径の選定ミス(ケーブルグランドの呼びサイズごとに要注意)
・ボイラー側母材の変形や厚みムラ、腐食によるねじ精度の低下
・割れやカジリ(固着)によるねじ山破損
・ねじ山潤滑不良や切粉の残留による締結トルク不足

このようなバラツキ・不良が、後工程での密閉性の不良(漏れや緩み・ガタ)を引き起こしやすくなります。

密閉性不良と“ヒューマンエラー”の本質

密閉不良の現象としては、Oリングの圧縮不足や、ケーブルグランド部材本体とカバーの密着不足が多く報告されています。
その多くは「ねじ加工時の精度不良」や「パッキン・Oリングの選定ミス」、さらには「締付けトルク管理の不徹底」といったヒューマンエラーの複合的な連鎖です。

また、現場では下記のような“昭和的な現場慣習”が、長年根強く残っています。

・Oリングの潤滑不足や“再利用”
・シールテープや液状ガスケットの過量・過少塗布
・取付後の増し締め手順やチェック表の未整備
・「みんな大丈夫だったから問題ないだろう」という油断

これらが密閉不良率を高め、重大設備トラブルや製品不良の根源となっています。

密閉不良のリスクと現場トラブル事例

密閉不良が引き起こす設備トラブル

製造設備での密閉不良は、以下のようなリスクと直結します。

・ケーブル内部への水分や油分侵入による絶縁劣化、火災事故
・ダスト・粉塵侵入による計装機器誤作動や腐食
・防爆エリアでのガス流入や圧力保持不良による爆発リスク
・シール材の経年劣化加速による早期破損

実際、多くの現場で、梅雨や台風などの時期に「漏電」「ショート」による設備停止事故が散発しています。
また、定期点検時に「グランド部からケーブルが抜けかけていた」「グランド内部に水滴が溜まっていた」などの不具合も多いです。

現場生産性や保全コストへの波及

密閉性確保の失敗は、不良品の発生や歩留まり低下、ライン停止、メンテナンスコスト増加といった形で生産性・収益性にも重大な影響を与えます。
とくに、ボイラー設備のように休止やライン停止コストの大きい現場ほど、たった一つのグランド部の不良が“設備停止”“復旧待ち”という重大トラブルに直結する点を、現場担当者や管理職は痛感しています。

現場・管理職がとるべき密閉不良の対策

設計段階からのリスクアセスメント

まず肝心なのは、設計段階で「使用環境・湿気・温度」「爆発リスク」に合わせたケーブルグランドの部材・規格選定を行うことです。
また、設計図面には「取付穴径(呼びサイズごと)」「ねじ規格」「パッキン材質」「推奨トルク」など詳細な記載が必須です。
これにより、現場合わせによる判断ミスを未然に防げます。

集中加工と標準化の推進

可能な限り、ケーブルグランド部の穴あけ・ねじ切りは工場(機械加工工程)で集中加工することが理想です。
現場組付けではなく、CNCマシニングセンタなどで高精度のねじ山を統一品質で加工し、後工程の人依存を減らしましょう。

現場組立時の具体的な管理手順

・ねじ山検査: ねじゲージや目視でねじ山の仕上がりを100%検査
・Oリング/パッキンの交換ルール化・潤滑剤塗布の規定化
・締付けトルクレンチを用いた規定トルク管理(目視頼りを廃止)
・作業記録の電子化・ダブルチェック実施
・シール材の認定リスト・粘度や補修タイミングの見える化

こうした標準作業書の整備と、現場教育によるヒューマンエラー(慣れ・思い込み)撲滅が成果につながります。

保全・点検段階の管理ポイント

・定期的な増し締めと外観点検(加締め不足の早期発見)
・パッキンやOリングの耐用年数把握と計画的交換
・工程内カメラや点検記録アプリの活用による異常履歴の蓄積
・不具合発生箇所の徹底原因分析・水平展開

ライン全体での“再発防止型”保全へシフトしていくことが重要です。

デジタル化・自動化による品質向上の可能性

ねじ加工の自動品質保証

CNCマシニングによるねじ加工自動化や、ねじ山自動測定装置の導入が進みつつあります。
また、ねじ締付けトルクの数値管理(トルクドライバーのデジタル管理)によって、経験や勘によるバラツキを排除できます。

さらに最近では、AI画像検査やIoTデバイスでケーブルグランド部の状態監視(リークセンサーや締付けアラーム)が開発され、現場作業負担の低減と誤作動リスク削減にも寄与し始めています。

“昭和の現場”から脱却するために

依然として多くの製造現場では「前例踏襲」で人に依存した作業が目立ちます。しかし、設備トラブルの“真因”は人的バラツキと組織的な管理不全です。

今こそ、アナログの“現場力”は保ちながらも、デジタル技術でミスを確実に潰し、真の品質・安全・効率を高める仕組みへと進化させる時代です。

サプライヤー・バイヤーとしての視点

サプライヤーが知るべき“バイヤーの本音”

バイヤーは単なる価格や納期だけでなく、「現場トラブルの再発コスト」「不具合時のサポート体制」「仕様外れリスクの最小化」を強く重視しています。

ケーブルグランドや加工済ユニット納入時には、「現場作業での施工性」「標準書の分かりやすさ」「説明責任の明確さ」まで求められます。
中長期サポートやトラブル即応力まで含めて“信頼”を構築することが、選ばれるサプライヤーの必須条件です。

バイヤーを目指す人へのアドバイス

ケーブルグランド一つにしても、“現場の課題” “加工プロセス” “リスク管理”という大局観が必要です。
単なるスペック確認やカタログ比較だけで終わらず、現場の生産技術・保全担当者へのヒアリング、メーカーとの密なコミュニケーションを徹底しましょう。
現場の“不”の声を汲み取って、最適な仕様書と購買戦略を築くことがバイヤーとしての腕の見せ所です。

まとめ

製造設備におけるケーブルグランド部材のねじ加工と密閉性確保は、一見地味なテーマに見えますが、現場生産と安全、経営コストに直結する最重要課題です。
昭和的な現場力と、これからますます進むデジタル・自動化技術の融合こそが、今後の日本製造業の新しい地平線を切り開く鍵となるはずです。
現場・バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場から、“現地現物・実践知”と“最新技術”の両面を磨き、より強く安全で、再発しないモノづくりの現場を共に目指しましょう。

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