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ISO 45001で労災は防げるのか|安全衛生マネジメントの実践ポイント

目次
はじめに|製造現場における「安全」の本当の価値とは
製造業において「安全」は最重要課題のひとつです。
いまだ多くの現場で「ゼロ災」「無事故継続〇〇日」といったスローガンが掲げられていますが、実態はどうでしょうか。
ヒヤリ・ハットは日常的に発生し、時には「慣れ」や「思い込み」が大きな事故につながることもあります。
昭和時代から続く”現場頼み”、属人的な指示やルール、形式的なKY(危険予知)活動。
こうしたアナログな慣習から抜け出し、本質的な「安全衛生」を実現するためには、グローバル基準であるISO 45001の考え方とその実践が不可欠です。
この記事では、ISO 45001が本当に労災防止に効果的なのか、そして現場で成功させるためのポイントを、実務経験を交えながら解説します。
そもそもISO 45001とは何か?
ISO 45001は、労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)の国際規格です。
2018年に発行され、OHSAS 18001の後継として、よりリスクベースで組織的な安全衛生活動を求めています。
最大の特徴は、単なる法令順守・事故防止策ではなく「経営」に安全衛生を深く根付かせ、リーダー自らがリスクに向き合い、PDCAサイクルを回すことを要求する点です。
海外拠点や多国籍サプライヤーとやり取りする機会が増えた現代では、グローバル共通言語として、このISO 45001の運用力そのものが企業価値を左右する時代になっています。
現場目線で見るISO 45001の効果|従来型との違い
1. 「人頼み」から「仕組み化」へ
日本の多くの工場は、ベテラン作業者の「暗黙知」「習慣」に依存しがちです。
ヒヤリ・ハットが起きたとき、ベテランの「気をつけろよ」の一言で済まされ、再発防止策がうやむやになることもしばしば。
ISO 45001では、リスクアセスメントをベースに、誰がやっても「安全」に到達できる標準業務手順(SOP)の整備と、定期的な見直しを徹底します。
属人化した「安全」が業務プロセスに織り込まれ、ルールの形骸化を防ぐことが可能です。
2. 「発生後対応」から「未然防止」への転換
これまでの安全対策は「事故が起きたら対処」「法令違反が見つかったら是正」でした。
ISO 45001は「予防」が主役です。
設備や作業手順に潜むリスクを、発生前から洗い出して低減措置を取る。
データや統計に基づく現場パトロールだけでなく、現場作業者本人の体調や心理状態もリスクとして捉えることが求められます。
3. 「現場任せ」から「全社一丸」へ
安全衛生は現場の担当者だけの仕事――そのような考え方が根強い企業も少なくありません。
ISO 45001では、トップマネジメントの責任、現場~間接部門まで含めた全員参加、さらにはサプライヤーや下請けにも安全衛生の要求が及びます。
「安全に強い会社」のブランドを作るため、全社横断の安全文化醸成が求められます。
ISO 45001を取り巻く業界動向|昭和からの脱却は可能か
現場に根付く「安全はコスト」という誤解
コスト削減・生産効率の優先が叫ばれるなか、多くの企業で「安全投資は余裕があればやるもの」と考えられています。
ですが、実際には労災発生による直接損失(休業補償、訴訟費用、社会的信用の失墜)や、失われた経験者の再育成コストは膨大です。
グローバル調達の現場では、「安全衛生マネジメントが弱いサプライヤーはリスクである」とバイヤーから取引先選定の対象外となることも珍しくありません。
安全衛生の強化が、企業の競争力(サプライチェーンの持続可能性)を左右する時代です。
安全衛生デジタル化の潮流と日本企業の課題
海外先進メーカーでは、IoTやAIを駆使した作業者の生体モニタリングや、リアルタイム異常検知システムの導入が加速しています。
一方、日本では紙ベースの点検表や、都度電話・口頭での報告が今も主流。
現場力の高さは誇るべき点ですが、「情報の見える化」「データ活用」への投資が進まなければ、グローバル調達網から取り残されてしまいます。
ISO 45001の運用には、IT化への意識改革と、現場と本部の「壁」を乗り越える横断的コミュニケーションが不可欠です。
労災ゼロに本当にできるのか?|ISO 45001運用の現実と壁
ルールの「形骸化」をいかに防ぐか
どれだけ立派なマニュアルやチェックリストを整備しても、現場で守られなければ意味がありません。
「本来は禁止されているけれど、このやり方のほうが早い」「手間がかかって現場に合わない」と現場作業者がルール逸脱に走ることは、どこの工場にも見られる光景です。
これを是正するには、現場の声を反映させた手順設計と、納得感のある教育、日々の対話が重要です。
ベテランの「なぜ?」を分析し、現場本位で改善し続ける姿勢こそが、ISO 45001を生きたものにします。
経営者・管理者の「本気度」が問われる
ISO 45001の運用は、現場だけでなく経営層のコミットメントが成否のカギを握ります。
見かけ上「現場に任せる」「安全委員会を形式的に開催する」ではなく、経営者自ら現場に足を運び、「なぜ安全が大切なのか」「どこにリスクが潜んでいるのか」を肌で感じ、意思決定を行う。
また組織横断でリスク情報を共有する体制づくりも不可欠です。
この「トップダウン+ボトムアップ」のサイクルがなければ、運用は形だけになり、効果も限定的になってしまいます。
バイヤー・サプライヤーの関係性にも変革を
買い手・売り手の安全衛生リテラシー格差
グローバルバイヤーは、調達先の労働安全衛生マネジメントを重視しています。
一方で、中小企業やローカルサプライヤーは「コストダウンだけ見てほしい」と安全衛生を後回しにしがち。
バイヤー側としては、単なる帳票での形式チェックだけでなく、現場での実態確認や、デジタル監査プロセスを強化し、サプライチェーン全体のリスク低減を推進することが求められます。
サプライヤーの側にとっても「事故を起こしてから取引停止」では遅すぎます。
ISO 45001を自社と取引先に根付かせることが、結果的に新規受注や企業価値向上につながります。
契約条項・評価基準へのISO 45001の組み込み
今後は調達契約書の中に、「サプライヤーにもISO 45001の基準を適用」「定期的な監査・改善要請」を盛り込む動きが広がります。
バイヤー・サプライヤー双方が同じ目線で「安全衛生リスクをどうコントロールするか」を議論できる土壌づくりが、持続可能なパートナーシップの条件です。
現場で成果を出すための実践ポイント
1. 「安全革新」は現場の小さな気づき・提案から始める
ISO 45001の運用で最大のカギは、現場作業者が自ら「気づき」を上げやすい仕組みづくりです。
危険予知ミーティングだけでなく、匿名の意見投稿や、写真・動画による危険箇所共有アプリの活用など、小さな声をすくい上げる文化を育てましょう。
「言い出しにくい」「面倒くさい」を乗り越え、全員が安全意識を発揮できる場づくりがポイントです。
2. 「標準化」と「改善」を日常業務に落とし込む
一度作った手順書やマニュアルに満足せず、「本当に守られているか」を現場ラウンドや棚卸しで定期的に点検しましょう。
「守りやすい業務フローか」「改善余地はないか」を現場の声でPDCAし続ける。
ときには「現実離れした標準書」「現場に合わないルール」が形骸化の原因になるので、必ず現場起点での改善を繰り返すことが肝心です。
3. デジタルツールの活用——小さな一歩から取り入れる
いきなり全工程のIoT化は難しいかもしれません。
ですが、最初はスマートフォンによる現場点検結果の記録・共有、簡易センサーの装着、生体認証での出退勤管理など、小さなデジタル化から始めてみましょう。
アナログ慣習が根付いた現場でも、「ちょっと便利」「これなら手間が減る」という成功体験の積み重ねが、意識改革の第一歩となります。
まとめ|安全衛生の質が、会社の未来を決める
ISO 45001は単なる取得や対外アピールのための認証制度ではありません。
本質は、「現場目線」と「経営視点」をつなぐ安全衛生マネジメントの仕組みを現場で“生きたもの”として運用し続けることにあります。
製造業の根底を支える「安全」に最新の知見とデジタル技術、人の知恵が融合すれば、労災ゼロも夢ではありません。
今こそ組織全員で、昭和の慣れや形式から脱却し、グローバルに通用する安全・安心の現場づくりを進めていきましょう。
それが、あなたの会社、そして製造業全体の持続的発展への第一歩です。
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