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投稿日:2025年9月10日

製造業のCO2削減におけるカーボンプライシングの活用事例

はじめに

製造業の現場で長年経験を積んできた立場から、近年大変注目されている「CO2削減」と「カーボンプライシング」について、具体的な活用事例と共に、実務的な観点で掘り下げてご紹介します。

カーボンプライシングとは、CO2(二酸化炭素)など温室効果ガスの排出量に価格をつけ、市場原理を通じて排出削減を促す仕組みです。
持続可能な社会の実現や脱炭素経営に向けて、日本の製造業でも本格導入が始まっています。

現場で役立つ知見や、アナログ文化が根強く残る昭和型の工場でも導入しやすいポイントなども交えながら、深掘りしていきます。

カーボンプライシングの概要と日本の製造業への影響

カーボンプライシングとは何か

カーボンプライシングは、国や自治体がCO2排出に「価格」を設定し、排出者にそのコストを負担させる政策です。

具体的には「炭素税」や「排出量取引制度(キャップ&トレード)」が代表的です。
炭素税はCO2を排出する燃料や製品に税金をかけ、排出を抑制。
排出量取引制度は、企業ごとに排出枠を割り当て、余った排出枠や不足分を売買できます。

日本のカーボンプライシングと製造業の現状

日本では2012年に「地球温暖化対策税(炭素税)」が導入され、さらに2023年から「GXリーグ」など排出量取引の試験的取り組みも始まっています。

国際的に見ると、EUでは排出量取引が活発で、製造業へのインパクトも大きくなっています。
日本の製造業も、取引先のグローバル化や工場のサプライチェーン全体でCO2情報の開示が求められるなど、カーボンプライシングへの対応が不可避となっています。

製造業におけるカーボンプライシング活用の具体的事例

自動車部品メーカーでのカーボンプライシング活用

ある自動車部品メーカーでは、カーボンプライシング導入をきっかけに、自社工場のCO2原単位(生産あたり排出量)の見直しを行いました。
生産ラインの稼働を見える化し、省エネ性能の高い工作機械への更新を推進。
さらに、電気使用量の多い設備を把握し、稼働スケジュールの最適化による無駄な待機電力カットも徹底しました。

これにより、生産コストのなかで従来意識が低かった「炭素コスト」も明確になり、実質的な製品単価への上乗せが求められる国際取引にも対応できる体制となっています。

電子部品工場における再生可能エネルギーの活用

電子部品製造企業の事例では、カーボンプライシングの影響を受ける前から、再生可能エネルギーによる電力調達へと大きく舵を切りました。
工場屋根に大型太陽光パネルを設置し、ピーク時の消費電力の20%を自給自足。

温暖化対策税によるコスト増を抑えると共に、グリーン電力証書の発行で追加収益も確保。
顧客へのエビデンス提出でも「炭素コストゼロ」の説明がしやすくなっています。

化学メーカーにおける社内カーボンプライスの導入

大手化学メーカーでは、経営判断の指標として「社内カーボンプライス」を採用しました。
各工場や部門が製品のライフサイクル全体のCO2排出量を試算し、経済的な損益計算書に「カーボンコスト」を加算。
省エネ投資の妥当性や、原材料選定時の意思決定にリアルな炭素価格を組み込み、工場長や購買担当も納得感のある「見える化経営」へと転換しています。

このような内部価格の導入は、外部価格変動リスクのシミュレーションにも活かされ、国内外の環境規制強化にも柔軟に対応できるとの声が上がっています。

カーボンプライシングで変わる調達・購買部門の役割

“炭素バイヤー”としての進化

従来、購買部門は「価格」や「納期」「品質」を重視してきました。
しかし今や取引先を選定する際に「CO2排出量」や「炭素コスト」も新たな評価軸となっています。

カーボンプライシングのもとでは、低炭素・ゼロカーボン認証を持つサプライヤーを選択しやすくなり、取引先にも排出削減を働きかける「カーボンバイヤー」の役割が重要です。

現に、一部のグローバル企業では「カーボンフットプリント」のデータ提出を取引条件にする動きも広がっています。
これに応えるため、調達先の選定基準や契約条項も抜本的な見直しが進められています。

サプライヤー側から見たバイヤーの期待

サプライヤーの立場からすれば、バイヤーが何を重視しているのかを的確に把握し、CO2データの迅速な開示や、炭素コストを下げるための工程改善・提案力が差別化の鍵です。

昭和の名残が強い工場でも、現場の手書き記録やエクセル集計から脱却し、IoT機器やエネルギー管理システムの導入で、リアルタイムな排出量管理への転換が求められます。

結局、カーボンプライシングは「安定供給+炭素コスト」という新しい二軸の競争をもたらし、そこに現場主導の知恵が活きる土壌があります。

昭和型アナログ工場でも進められるカーボンプライシング対応

小さな一歩から始めるCO2見える化

アナログ文化の色濃い工場でも、いきなり最先端のデジタル化を目指すのは難しいでしょう。
まずはエネルギーコストの現状把握から始め、設備・工程別に大まかなCO2排出量を電力や燃料使用量のデータから算定することが第一歩です。

例えば、主要生産設備に簡易的な電力計などを仮設し、月次の電力使用量を記録していく。
「どの製品」「どの工程」「どの設備」がCO2排出の“ホットスポット”なのかを直感的に掴んで、改善活動の狙い所を決めます。

改善活動と現場巻き込みのコツ

改善策として、照明・空調・圧縮空気設備の効率化、不要な待機運転の削減といった定番の省エネ対策も引き続き有効です。

また、現場作業者への勉強会を開催し「自分たちの手でCO2削減=利益貢献できる」意義を伝えていくことが大切です。
「カーボンプライシングで会社の売上や給与にも関わる」と実感してもらうことで、現場発の改善アイデアが生まれやすくなります。

大きな投資をせずとも、小さな“現場力”の積み重ねがCO2削減と炭素コスト低減に直結する。
これがアナログ工場には向いています。

今後の展望とバイヤー・サプライヤーへのメッセージ

サステナビリティ経営が新たな標準に

今後、日本の製造業は、国内外に関わらずさらに厳しい炭素規制や、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出管理が求められるでしょう。

カーボンプライシングは一時的なコスト増ではなく、新たな競争力構築のチャンスと捉える必要があります。
単なる「お上からの押し付け」ではなく、現場から全社横断で取り組むことで、サステナビリティ経営が“標準仕様”となっていきます。

製造業現場の知見・改善力が価値になる

筆者自身の経験からも、現場の知恵や改善力こそが、日本の製造業を今後もリードしていくと確信しています。

調達・購買・生産・品質・現場改善の各分野が連携し、「炭素コスト」を軸に新たな価値創造を目指しましょう。
バイヤーはサプライヤーに、サプライヤーはバイヤーに歩み寄り、相互理解と共創を深めることが大切です。

日本のものづくりが世界と堂々と肩を並べるために、今こそ“カーボンプライシング”を前向きに活用していきましょう。

まとめ

製造業のCO2削減にカーボンプライシングを活用することで、単なる排出削減にとどまらず、工場経営・調達購買・生産現場のあり方自体が変わり始めています。

アナログ工場でも小さな改善から、バイヤー・サプライヤー間の共創によるイノベーションまで、多様なアプローチが可能です。

今後も変化のスピードは加速しますが、現場から「カーボン競争力」の輪を広げていくことが、日本の産業の未来に直結します。

皆さまの現場でも、ぜひ“自分ごと”としてカーボンプライシングを実践し、持続可能な製造業への道を切り拓いていきましょう。

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