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顧客指定の梱包材が調達困難で現場が混乱する実例

目次
はじめに:梱包材調達の混乱が生む現場のリアル
最近の製造業界では、顧客指定の梱包材が急に調達困難になるケースが頻発しています。
特に、グローバルサプライチェーンの混乱や原材料高騰、環境規制強化などの要因が重なり、現場では予想外の混乱が発生しています。
本記事では、実際の現場で起きている混乱の実例をもとに、課題の本質や対策、そして次代のバイヤーが意識すべき視点を深掘りしていきます。
なぜ顧客指定の梱包材が調達困難になるのか
サプライチェーンの脆弱性が顕在化
コロナ禍や地政学リスク、コンテナ不足などの影響により、仕入れが慢性的に不安定になっています。
国内外の紙パルプ・プラスチック原料サプライヤーは、供給制限や価格転嫁に踏み切る場面も増えています。
こうした波は、顧客から細かく仕様を指定されているOEMメーカーや下請けトierにも容赦なく及びます。
「型番A1234番の白段ボールでなければ出荷不可」といった厳格指定があればあるほど、調達窓口は一気に狭まります。
環境対応仕様の“ブーム”も混乱を誘発
ESG経営に舵を切る大手顧客ほど、エコ包装やリサイクル素材の利用を突然厳しく指定する傾向があります。
これまで当たり前に通用していた石油由来フィルムや発泡スチロールなどが、ある日を境に「使用禁止」となり、実質的な現場改革を余儀なくされるのです。
仕様“だけ”厳守、「現場任せ」の脱昭和スタイルが壁に
日本の製造業では、昭和的な「見た目が全部統一されていればOK」という形式主義が根強く残っています。
仕様書だけでは間に合わず、暗黙の了解や長年のローカルコミュニケーションで乗り越えてきた部分が、調達困難になった途端に機能せず現場が混乱します。
ITによる情報共有や、標準化の遅れも大きな混乱要因です。
現場で起きた“実例”と教訓
事例1:段ボールのグレード指定が命取りに
ある精密機器メーカーでは、大手顧客から「二層構造の特定強度」「白色印刷指定」「角部分は緩衝材指定」などかなり細かい梱包材要求が出されていました。
しかし2023年春、原材料高騰のあおりで指定の段ボールを一手に担っていた業者が減産。
納期遅延が生じ、生産ラインに完成品の山が積まれ、「梱包材難民」と呼ばれる事態に。
現場は、代替可能な他の段ボール調達を上申しましたが、「顧客指定に従え」の一点張りで判断がつかず出荷停止に。
「過去から変えない」ことのリスクを突き付けられる事例となりました。
事例2:環境対応の急転換で現場が疲弊
梱包材の環境対応を業務上「当然」と捉えていなかった食品加工工場では、海外顧客の要望で急きょ「生分解性フィルム」へ切り替え命令。
これまで取引のなかった新素材商社との価格や納期調整、本業の生産計画と並行した仕様テストで現場は大混乱。
歩留まりダウン・効率低下が半年続き、ようやく安定供給の道が拓けました。
「周囲の空気を読んでやりくりする」昭和スタイルでは対応しきれなくなっている典型例です。
事例3:アナログ管理の落とし穴
多くの日本メーカーでは、梱包材の在庫量や発注履歴が今もなおエクセルや紙ベースで管理されています。
「今月はいつもより受注数が多いから、大丈夫だろう」と現場感覚を頼りに在庫を回していたものの、2022年の物流停滞で一気に納品遅れが判明。
バイヤーも現場も、情報共有と予測精度の低さに呆然としました。
いっそ「在庫ゼロ運用(ジャストインタイム)」に振り切るチャンスであるとの教訓が得られました。
解決のヒント:バイヤーと現場が今こそ持つべき視点
1. 代替可能性を“当たり前”に議論する習慣
指定どおりのモノが必ず手に入る時代は終焉を迎えています。
「同等品でも性能・見栄え・コストともOKであれば“例外運用”する」という柔軟性をルール化しましょう。
バイヤーは顧客と直に交渉し、「本当にその仕様でなければならない理由」を見極めます。
現場側も「自ら代案を積極提案する」姿勢に切り替えが必要です。
2. “情報の壁”を壊す仕組みを構築
特定の担当者しか仕様書や在庫進捗を把握できないような属人化体制は、急変時に大きな弱点となります。
クラウドを活用し、生産・調達・在庫共有プラットフォームの導入で「見える化」を進めましょう。
システム投資が難しければ、まずはExcelやGoogleスプレッドシートによる情報の一元管理から始めるだけでも劇的に違います。
3. “突発”に強いサプライヤーネットワークの構築
「なじみの下請け一社だけ」「○○商社の言いなり」の時代は越えなければなりません。
地場の中小サプライヤーやスタートアップ企業など、複線化・多様化を意識したネットワーク構築がポイントです。
普段から“もしも”の時の調達先候補を探索・関係構築しておくことで、いざ危機となった際でもいち早いリカバリーが可能になります。
アナログ業界だからこそ進めるべき“レガシー脱却”
「現場×バイヤー×営業」三位一体が鍵
梱包材調達の混乱は、単なる調達部門の問題ではありません。
生産現場の現実をベースに営業が顧客と向き合い、バイヤーはその橋渡し役として動く。
三者がフラットに情報を出し合い、しがらみを超えて仕様変更や運用ルールを見直していくことが、危機に強い組織づくりの本質です。
フットワークとイノベーションのバランス
失敗を恐れて代替提案ができない、現状維持バイアスが強すぎる…そんな“昭和マインド”のままでは海外勢との競争に後れをとります。
むしろ製造業現場にこそ、ラテラルな発想=現場からボトムアップで新ルール・新調達モデルを生み出す風土こそが求められます。
まとめ:バイヤー、サプライヤー、現場が一体となった進化を
梱包材調達の混乱は、厳しいグローバル環境とアナログな業界風土の狭間で浮き彫りになっています。
本質的な問題は、「指定されたものをそのまま再現」すること自体を目的化してしまう組織体質や、現場とバイヤーの情報・視点の断絶にあります。
これからの製造業バイヤーに求められるのは、「枠にとらわれない自由な発想」「現場・他部門との粘り強い共創」「危機時の臨機応変な調整能力」です。
サプライヤーの立場からも、顧客要求の“裏”を読み取り能動的に代替案を提示する姿勢が必須です。
日本のものづくりが新たな地平線を切り開くためには、現場の経験知を活かしつつ、“昭和”から一歩抜け出した仕組みづくりが不可欠です。
きたる危機をチャンスに変えるべく、今こそ一体となった進化を目指しましょう。
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